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2006年5月 9日

(書評)戦国 北条一族

戦国 北条一族
黒田基樹著
ISBN4-404-03251-X
新人物往来社 2005.9

 新人物往来社の○○一族シリーズの中でも良書、というのが率直な感想。シリーズの中にはライフワーク的な努力賞ものが散見されるが、これは一般向け研究報告という評価でいいかなと思う。北条一族の多くの人物について最小限ながら解説を加え、詳細な系図を添えているなど資料としての価値も持たせている。

本文は5章で構成され、北条五代各1章よりなっている。中でも今まで比較的情報が少なかった早雲(本書では伊勢宗瑞)と氏綱を扱った最初の2章、特に第一章が興味深い。今まで早雲といえば野心と策略によって伊豆、相模に切り込んでいった、あくまでも早雲の野心が主であって、関東の情勢は早雲に利用されたもの、というイメージが強かった。本書を読んだあととして、早雲といえども両上杉や足利将軍家、関東公方、今川、武田といった勢力とその情勢の中での存在であり、多くの部分で結果として伸張を遂げたのだといってしまうと要約しすぎか。

伊豆進出にしろ相模進出にしろ小説的な話が多かったわけだが、両上杉の対立に加勢する結果としての小田原進出。また早雲の代では今川氏の軍勢として、また扇谷上杉の同盟軍として武蔵や房総で戦っている話など、決して姦雄とか特別な英雄ではなく、戦国時代の枠組みの中の存在だったということになる。ゼロに等しいところからスタートして関東随一の勢力の基礎を築いたという、類例の少ない成功者であることには違いはないが、恐ろしく深長な謀略の果てに得た成果という訳ではなく、早雲といえども必ずしも特別な存在ではなかった。

少しイメージ的な話になったが、以上は私の感想であって本書はそういう本ではなく、歴史資料の中から語ることができる北条氏を具体的に纏めた本である。しかも一般向けで比較的読み易く纏まっている。趣味として戦国時代の物語りを読み漁っている向きにも十分楽しめる一冊ではないだとうか。

さて、私にとって北条早雲(これからは伊勢宗瑞と呼ぶべきかな)のイメージは、早乙女貢の著書『北条早雲(文芸春秋、1976年、絶版)』から始まっている。新しい伊勢宗瑞像をベースとした物語りを、誰かが書いてくれないものだろうか。

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コメント

GW中は残念でした・・・

ところでその本にはなぜ「北条」を名乗ったのか、その理由が書いてあったりしますか?
それとも既出ネタだったりするんでしょうか。

投稿: 蒸しぱん | 2006年5月14日 00時18分

蒸しぱんさんこんばんわ。
北条氏綱の章に「北条改称」という段を設けて説いておられますね。どこまでが筆者の考えで、誰かの説の継承だったりするのかは分かりませんが、くだんの段、72ページの中に以下のように書いてます。

  氏綱はその名跡を継承することによって、
  扇谷上杉氏に対抗し、また「他国の逆徒」
  論に対抗しうる、みずからの相模支配の
  正統性の確立を図った。

この他に氏綱の章には「関東管領職と足利氏御一家」とう段があったりします。なんか、北条といえど、普通に戦国大名じゃん・・・とか思ったりしますが、実際どうなんでしょ(^^;

投稿: 武藤 臼 | 2006年5月14日 02時09分

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