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2006年8月12日

(書評)エゾの歴史

講談社学術文庫1750
エゾの歴史
北の人びとと「日本」
海保嶺夫著
ISBN4-06-159750-7
講談社 2006.2

 正直言って期待外れ。通史的な内容を予想させるタイトルの割に通史のではない。それはそれで構わないのだが、論文集的に特定のテーマについて掘り下げたといった体載をとりながら内容は一般向け。他研究者に対する異義を書かれているわりに自身の考証も甘く、根拠を提示せずに断定されている部分は気になる。

 エゾという言葉がいつから使われるようになったか、考証されている部分は悪くないし、エゾとは日本本土から見た他所者にたいする呼称という判断も無難と思う。ただ、全体を通しても言えるのだが、「アイヌ民族」とアイヌには常に「民族」を付けるのに、ギリヤーク族と言ったり、オホーツク人と言ったりと集団に対する呼称の使い分けと、その違い、比較に甘さがかなり見られる。この前に読んだ本が「民族」という言葉にかなり気を使っていただけに、その差がかなり気になる。

 唯一興味深かったのが、9章の江戸時代末期にエゾ地で作られたという人別帳を基にした、和人のエゾ地への移住の実体についての考察。人別帳の存在自体が興味深く、明治を待たずにエゾ地に移住し生活をしていた和人の存在は、もっと大きく取り上げてもよいのではないかと思う。同時代のアイヌ人の実体との比較ができれば、江戸時代末期の北海道の実像という話で1冊の本にさえ成ると思うがどうだろうか。

 エゾとエミシの違い、安東氏の捉え方、松前藩の特殊性、和人流入問題など個々の問題自体は面白いし、方向性にもあまり違和感がない。本のタイトルと中身のギャップや1冊の本としての纏まりのなさ、言葉遣いの甘さなど問題点の多い本と思う。

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