« 9月25日購入書籍 | トップページ | 9月29日の買い物 »

2006年9月28日

(書評)清朝のアムール政策と少数民族

東洋史研究叢刊之六十九
清朝のアムール政策と少数民族
松浦茂著
ISBN 4-87698-527-8
京都大学学術出版会 2006.2


 本書は、1980年代終わり頃から公開されるようになった中国東北地方についての清朝時代の行政文書について、その考察を基礎としたもので、本編12章、附篇2章よりなる論文集だ。清朝時代の東北地方といえば、清とロシアを巡る国境問題や、佐々木史郎氏の「北方から来た交易民」に描かれたようなサンタン交易の情報しか持ち合わせない自分にとっては、空白を埋める大変興味深い本である。

 著者が主に利用しているのは、清朝前期の東北地方の拠点の一つであるニングタ(現在の黒龍江省寧安県)の行政文書『寧古塔副都統衙門档案』で、主に康煕年間から乾隆年間を対象としている。ロシアとネルチンスク条約締結後にアムール川下流方向への感心が高まった清朝による政策について、同地域への地理的調査、樺太への進出の様子、統治形態、貂皮を巡る貢納や交易、民族の状況など具体的かつ広範に考証している。

 ネルチンスク条約で国境が決まったことは教科書にも載っているわけだが、国境がどう捉えられていたのか、そもそもあんな北方の山奥を把握していたのかと自分にとっては謎だった。清朝が多くの人数を調査のために派遣したことや、樺太進出に条約交渉が影響されたことなど、なかなか面白い話だ。

 また、同地域や樺太に対して清朝がどの程度の統治を行っていたのかという点について、おそらくその一面ではあるのだろうが、貂皮の貢納や身分の授与などによる間接統治の様子が具体的に考察されている。さらに、その際に起った事件に対する清朝の介入やその推移、また、間接統治下にあった人々を八旗に編入して移住させたこと、その後に起った大きな人の動き、八旗に編入されたことによって本来別の文化を持った人々が後に満族に同化していった話など、興味深い話題満載である。

 この研究はまた、探検家間宮林蔵が同地域に足を踏み入れる少し前を扱っていることになる。本書の附篇では間宮林蔵が残した文書に登場する現地役人について、清朝側の文書から考察している。比較的無理無く人物は同定されており、なかなか興味深い。

 400ページを超える大著で論文集という形態であるものの、文章自体は読み易くて分りやすい。自分にとっては近隣の空白を埋める貴重な一冊であるが、とりあえずこの時代のこのエリアには、この本を一区切りにしばらくは立ち入らない予定。ただ、新しい資料の登場とともにこれだけ面白い話が読めるというのは、今後の研究の進展には更なる成果の出現を期待したい。

|

« 9月25日購入書籍 | トップページ | 9月29日の買い物 »

その他の歴史」カテゴリの記事

書評」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/162739/12088277

この記事へのトラックバック一覧です: (書評)清朝のアムール政策と少数民族:

« 9月25日購入書籍 | トップページ | 9月29日の買い物 »