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2006年10月31日

(書評)漢代以前のシルクロード

ユーラシア考古学選書
漢代以前のシルクロード
〜運ばれた馬とラピスラズリ〜
川又正智著
ISBN4-639-01945-9
雄山閣 2006.10


 タイトルには「漢代以前・・・」とあるが、本文で意識されているのは、前漢の中ごろの張騫の存在だ。張騫が時の皇帝の命令によって西方に派遣された結果、中国における中央アジアの情報は桁違いに増えた。その反動として、情報のほとんど無い張騫以前にはシルクロードは無かったような印象がある。

 この本は、その情報の少ない時代についての東西交流について解説している。横書き左開きでこの類の本としては本文140ページとやや少なめ。簡潔な文章と見出し付きの細かな段落建て、参考文献と本文中でのその案内など、教科書的な作り。あとがきには、実際に大学で講議をしながら構想を練ったとある。


 全部で5章よりなるが中心は3章以降で、とくに馬を扱った4章、去勢を扱った5章が量的にも核となっている。

 3章は、私が特に読みたかった紀元前2000年、3000年といった頃のラピスラズリの交易について扱っている。当時の交易経路について、イラン高原を中心にした地図が挿入されていて、考古学の成果などをもとに具体的な地名が上げられている。紀元前2600年頃のイラン高原東部の「アラッタ」、紀元前2000年頃のペルシャ湾岸の「ディルムン」については、機会があったら少し深く掘り下げてみたい。

 4章は馬と車についての文化伝播を扱っていて、筆者の前著『ウマ駆ける古代アジア(講談社)』を要約した部分を含む。解っているようで、実はほとんど解っていない家畜馬の歴史について、やっぱりまだまだ解らないことが多いという。前著からのその後についても触れている。

 5章は去勢文化の東方への伝播を考察しているが、中心はむしろ中国における去勢文化の始まりについての部分。去勢については牛馬などの家畜のほかに人も扱っている。宦官の歴史というのは読んだことがなかった上に、家畜の去勢と対比させているところがわりと面白い。

 本書は全体を通して、解らないことにはあまり憶測を入れずにそのままとしている。刺激が少なく物足りないと言えなくもないが、むしろ評価しておきたい。


 文中に「ユーラシア考古学選書」シリーズの続刊として『ユーラシア東部における騎馬遊牧文化の成立(高濱秀著)』『スキタイ騎馬遊牧国家の歴史(雪嶋宏一著)』『フクからみる草原地帯(著者?、フクは復の行人偏の替りに金偏)』(いずれも化題)といった書名があがっいる。いずれも草原の歴史について深い話が聞けそうなので期待しておく。

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» 川又正智『漢代以前のシルクロード』 [Abita Qur]
雄山閣,2006.10. ISBN4-639-01945. さきにTBを下さった武藤さんのブログで知り得たもので,詳しく [続きを読む]

受信: 2006年11月24日 09時00分

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