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2006年10月 7日

(書評)項羽と劉邦の時代

選書メチエ 370
項羽と劉邦の時代
秦漢帝国興亡史
藤田勝久著
ISBN4-06-258370-4
講談社 2006.9

 項羽と劉邦というと、史記や漢書をベースにしたとしても、とかく英雄譚や人物評中心のストーリーになりがちと思う。本書は書中で著者が書いているように、『睡虎秦墓の竹簡』や『里耶秦簡』などの新しく発見された資料を引きながら、秦から漢へと移り変わる時代を見直そうというもの。新出の資料が楚の地域から出土したものが中心であることもあり、楚の社会文化の特徴を読み取り、秦との違い、秦から漢への変化の中での役割といった点を中心に考察している。

 自分が本書に期待していた部分でもあり、物語り的な部分を排して見直そうとする姿勢は評価したい。封建的な体制だった戦国時代から郡県制など中央集権を指向した秦の時代、それを破壊した項羽の時代を経て、漢が郡国制を採用しながら秦を手本とした中央集権化を進めた流れがうまく考察されている。

 もう少し、新出資料の考察を中心とした学術色の強い本と予想していたが、既存の解釈に対する批判は押え目で、読み易い一般書に仕上がっていると評価する。史記が取ってきた何故秦は滅んだのか、何故項羽は劉邦にい敗れたのかという部分における始皇帝、項羽の失政や傲慢さといった人物評を建てて説明する方法を柔らかく批判し、政治史的な流れでの見直しを行っている。もう少しそういう面を強くして史記の史観を酷評すると、自分などには面白い読み物となるとは思うのだが、一般書としてのバランスは悪く無い。その意味で物足りなさは残る物の薦めることのできる一冊と思う。

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