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2006年10月25日

(書評)戦国秦漢時代の都市と国家

アジア史選書007
戦国秦漢時代の都市と国家
考古学と文献史学からのアプローチ
江村治樹著
ISBN4-89174-753-6
白帝社 2005.9

 二冊続けての中国古代史もの。サブタイトルにあるように、この本も近年の考古学の成果を取り入れている点が特徴。時代的には春秋戦国期から前漢の武帝の時代までを扱っている。

 この本にも項羽と劉邦の時代(講談社)同様に、「雲夢秦簡」を初めとした新しく発掘された文書類を引いて、秦の郡県制の解明などに充てている。しかしこの本で利用している成果で一番興味深いのは、古代中国の都市遺跡についてのもの。本のタイトルにもあるように、この本では古代の都市の分布や構造などからの歴史の解明をひとつの柱にしている。

 本書中に述べられているが、近年の中国では300を越える数の古代都市遺跡が調査されているという。全ての遺跡で十分な発掘がなされているわけではないようで、むしろ本格的な発掘は遅れているのが現状のようである。しかしながら、これだけの数の遺跡について調査され、歴史書上にある数々の地名との比定が行われていることは、中国戦国時代を明らかにしていくことに大きな貢献をすることと思う。巻末に簡単な一覧表が掲載されている。

 その成果を利用した解説の中では、都市の分布から戦国時代の各国の違いを考察しているところが興味深い。簡単に纏めると、上に書いた都市遺跡が現在の河南、山西南部の「三晋地域」に集中していることから、戦国七雄の中でも韓、魏、趙と他の四国とのあいだに違いがあるというもの。これらのことから、文献上で語られてきた歴史についても新しい解釈を提起している。

 読後感としては、「項羽と劉邦の時代」に比べてより専門性の強い一書で、都市遺跡の詳しい解説など歴史の流れよりは個々の事例説明に割いている割り合いが高い。その割には難しい言い回しが少なくて読み易い。

 中国古代史は、考古学的な資料の増加のほかに文献の新たな解釈などもあって、その解釈に大きな修正が加えられるようになり興味をそそられる。私のように面白いというだけで古代史関係の本を読み散らかしている者にとっても、この本も新しい視点を与えてくれる。同好の士にはお勧めできる一書と思う。

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