« 11月20日購入書籍<興亡の世界史> | トップページ | 突厥についての論文と古文書 »

2006年11月21日

(書評)カイアシ類・水平進化という戦略

NHKブックス 1069
カイアシ類・水平進化という戦略
海洋生態系を支える微小生物の世界
大塚 攻 著
ISBN4-14-091069-0
山川出版社 2006.9

 本書では、系統分類をベースにしながら、進化史や生態などを通してカイアシ類のことをを広く紹介している。カイアシ類が多様であるということが一つのテーマであり、そのことは本書のタイトルの「水平進化」という言葉に込められている。進化のことも語られているが、それはカイアシ類は何なのかということの一面にすぎない。様々に異なるスタイルを持つカイアシ類の具体例が多く取り上げられていて、いかに多様であるかがよく分かる。

 正直言って、この本を読むまでカイアシ類がなんなのか全く知らなかった。表紙のイラストから動物プランクトンらしいこと、エビやミジンコに似た甲殻類らしいことは分かる。

 そもそもなのだが、プランクトンというものが特定の生物種を指すのでないことを改めて認識した。

プランクトンを「微生物」と解釈している人が多いが、大きさは問題ではない。その遊泳能力で定義されており、遊泳能力ゼロか、ごくわずかな水中浮遊生物群の総称だ。(本書4頁より)
したがって、大型のクラゲも含まれるということになるのだそうだ。

 いかにこの生き物について無知だったことか。この点で本書は、今年自分にとって一番驚きな一書といえる。小型の甲殻類なのだからカイアシ類は全てがプランクトンなのかといえばそうではないとのこと。浮遊せずに海底で暮しているものもいるれば、動物や植物に寄生しているものも多いという。中には魚の血管に頭を突っ込んで血液を啜っているものまで。だから食べ物も植物プランクトンだけでなく、それ相応に多様なことになる。

 本書はカイアシ類についての入門書だ。専門用語の多用は避けられており、必要な用語の解説も丁寧。自分の知らない生き物の世界に踏み込んでみたいと思う向きにはお勧めしたい。

 一つ難点がある。多様である分だけ、沢山の種類がいて、それぞれに名前がついている。残念ながらその名前に馴染みがないので、それぞれの種類をイメージすることが難しい。これは全く仕方がないことなのだが。この点を気にせず流して読んでも十分に楽しめた。機会があったら、図鑑でも見ながら再読してみようと思う。

|

« 11月20日購入書籍<興亡の世界史> | トップページ | 突厥についての論文と古文書 »

書評」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/162739/12775563

この記事へのトラックバック一覧です: (書評)カイアシ類・水平進化という戦略:

« 11月20日購入書籍<興亡の世界史> | トップページ | 突厥についての論文と古文書 »