« 12月24日購入書籍 | トップページ | 選挙制度改革 »

2006年12月25日

(書評)「分かりやすさ」の罠

ちくま新書 596
「分かりやすさ」の罠
---アイロニカルな批評宣言
仲正 昌樹 著
ISBN4-480-06302-1
筑摩書房 2006.5


 「分りやすさ」というのは、自分が最近感じている違和感の一つ。分りやすく説明して分かった気になり、それで全て分かったと指摘される。白と黒の間には無限にグレーがあるというのに。そういう違和感を説明してくれる本を探していた。

 本書の狙いは、前書きによると二点にあり、要約すると一つは「二項対立」を哲学的に、批評的に掘り下げること、もう一つは「批評」「評論」について再考することとのこと。西洋哲学というものを真っ当に勉強していない自分にとっては、この哲学的というのは常に曲者なのだが。

 1章で二項対立の具体例を取り上げた後、2章では二項対立について、ソクラテスからマルクスまで、西洋哲学の流れの中で説明される。簡単な哲学史という内容。もともと馴染みのない世界であり、普段使わない言葉が飛び交うとどうにも分り難い。その中に日常的な言葉を使った話を交える努力がなされていて、要所要所では腑に落ちるようにはできている。

 3章では、ドイツロマン派の流れの中から批評理論が語られ、その立ち位置として「アイロニー」という言葉が登場する。自分にとっては全くイメージの無い言葉である。哲学的な細かい部分については、そういうことなのかなあと受け流すしかないのだが、全体の流れは微妙ではあるが意外としっくりきた。

 4章ではその「アイロニー」についての話になる。筆者は本書の中で再三言葉を換えながらその意味を説明している。一番最後の説明は以下のようなものだ。

アイロニーは、「私の対象」に対する「私」のまなざしにズレを生じさせることで、「私」自身の存在を捉え直すことに主眼を置く営みである。(206頁)
 結局のところ普段自分が持っているイメージに置き換えられるかどうかに掛かっているいると思う。その点で「アイロニー」はそれほど違和感はなく、正論であろうと思える。

 西洋哲学というと、表面的に言葉遊びに見えてしまい、この本の内容にも地に足が着いていないと思ってしまう所はある。ただこの本については、それが前提条件なわけなので必ずしも評価の対象とはならない。多少ではあるが理解することが有益となると期待しておくが、自分としてはより実証的な部分でなんとかならないものかと考える。

 自分が消化し切れていないという意味で、本書についての評価はとくにせずにおいておく。代りに、筆者が序文で述べていることを転載しておく。

本書はあくまでも、(中略)私の現在の感心に沿って、現代思想における「批評=批判」の可能性について少し落ち着いてかんがえてみようというものである。「二項対立」とか「思想としての批評」とか言われて、ピンと来ない人は読まない方がいい。(20頁)
 「二項対立」はともかくとしても、「思想としての批評」のような言い回しは、自分にとっては今一つピンとこない。買ってからそう言われてもなあと思ったが、たしかにそういう本だった。

|

« 12月24日購入書籍 | トップページ | 選挙制度改革 »

書評」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/162739/13201702

この記事へのトラックバック一覧です: (書評)「分かりやすさ」の罠:

« 12月24日購入書籍 | トップページ | 選挙制度改革 »