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2006年12月30日

(書評)ウェブ人間論

新潮新書 193
ウェブ人間論
梅田 望夫・平野 啓一郎 著
ISBN4-10-610193-9
新潮社 2006.12


 本書は、『web進化論』の著者、梅田望夫氏と芥川賞作家、平野 啓一郎氏の対談を纏めたもの。『web進化論』を読み、梅田氏のブログもちょくちょく読んでいるので、本書の内容もだいたい想像された。ただ、平野氏の小説は一度も読んだことが無く、氏のことも良く知らない。書名のとおり、インターネットが発展した昨今、あるいはこれからについて、その環境の中で人はどう生きるのかという話。

 最初の話題は、アメリカと日本の間を行き来しながら、ネットに頻繁にアクセスする梅田氏の日常から、ネットがある生活とはといったもの。『web進化論』と重なる部分も多いのだが、人と人が常時ネットを介して繋がっているとう話から「リンクされた脳」という話になる。SF的な言葉ということで、本書では「マトリックス」を上げているが、それを見ていない自分は脳からネットに直接アクセスする話が出て来る「攻殻機動隊」を思い浮かべる。今でもパソコンと脳味噌の間はわずかな空間があるだけなので、直結されているかどうかは小さな問題なのかもしれない。梅田氏が紹介している以下の話などは興味深く、頭の隅に置いておこうと思う。

 ある大学の先生に、「学力低下というけれども、昔の学生と今の学生を比べたらどうなんですか」と聞いたら、全ての情報を遮断して何が解けるかなら、二十年前の学生のほうが上だったけど、道具を自由に駆使し友達と協力してもいいから答えを出すということに関しては、今の学生の方が能力が高い(以下略、56頁)
 


 インターネット関係のニュースで良く取り上げられる匿名性の問題について、本書でも一章を割いてる。平野氏がブログを書く人について5種類に分類しているが、ネットを多くの部分で「道具」として使っている自分が納まるところが無いなと思う。匿名性という話については、10年使い続けている自分のハンドル名と、10年ヒット作の無い小説家のペンネームとの差はほとんど無く、ネット上のみを強調することには違和感の方が大きい。新聞の多くの記事が無記名であることよりも数倍ましとすら思える。

 梅田氏は、匿名性を否定的に捉えているわけでないが、より積極的な意味で実名を使うことの発展性を強調している。自分は、実名を使うことの負の面を考えるとあまり肯定はできない。ただ、ハンドル名を変えるつもりはないので、仕事以外の自分はハンドル名で認知されれば、当面は良しと考えている。


 本書の胆は4章にある。自分より年上で革新的な梅田氏と、自分より年下で相対的に保守と映る平野氏との立ち位置の違いが見えて面白い。自分の位置は二人の中間というわけではなく、二人を一辺とした三角形のもう1点という感じ。正三角形ではないが、それほど潰れた形ではないと思う。

 梅田氏は1975年以降生まれの人に注目していると言われるのだが、自分はもはや対象ではないのだと思ったりする。ネットを道具として使うことに捕われている自分などは、ひと世代上ということなのかもしれない。


 本書は対談形式の本で、読み易い反面内容は薄くなる。『web進化論』を読んだ後では、重なる話題が多く新しい情報は少ない。もう少し人とネットの関係かくあるべきやといった話になるかと思っていたが、その面も思っていたほど深いわけではない。

 ただ二人と比べて自分はどこら辺に立っているのかと考えると、これからネットとどう関わっていこうかという点で、わりと示唆的なものが多かったように思う。

 対談型であるからこそ気軽には読める。ネットライトユーザーがこの本から『web進化論』に読み進むという方が分りやすい気がするが、どうだろうか。

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