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2006年12月17日

(書評)多賀城と古代東北

古代を考える
多賀城と古代東北
青木 和夫・岡田 茂弘 編  
ISBN4-642-02196-5
吉川弘文館 2006.9

 東北の古代史、それも藤原以前の時代を扱った本を読むのは久しぶりだ。久しぶりといっても学生時代に読んだ「蝦夷(高橋 崇 著、中公新書)」は既に忘却の彼方だが。

 本書は全26冊を数える「古代を考える」シリーズの最新、最終巻。このシリーズについては、興味を覚えたものを4、5冊ほど買ったと思う。内容は、編者二人の対談形式の第一章のほか、以下のような全9章よりなる。

 1 新しい古代東北史像を求めて---総論 青木 和夫・岡田 茂弘
 2 多賀城前史 須藤 隆
 3 城柵の設置 岡田 茂弘
 4 多賀城発掘 進藤 秋輝
 5 掘り出される文字は語る 平川 南
 6 天平産金と国分寺 桑原 滋郎
 7 東北の社会と律令制 笹山 晴生
 8 東北の動乱 伊藤 博幸
 9 俘囚長と藤原氏 新野 直吉

 体系的にテーマと著者を集めたという形ではないようなので、内容が重なるところもあるし、文章形式に統一性もない。それ自体は、このシリーズに共通のことに思えるし、とくに気にはならないので問うつもりもない。方向性という点では、考古学的な面から遺跡を詳細に紹介して周辺を解き明かすものと、文献資料を中心にして概観的に解説しているものにわかれている。

 なんといっても自分にとって知らない時代のことなので、目新しい情報が多く退屈することはなかった。とくに多賀城については、発掘の成果が詳細に述べられていて、そこから時代的な流れまで復原されていくあたりはかなり興味深い。また、宮城県北部に郡が設置されて行く過程や、岩手県が胆沢城を中心にして、徐々に中央と関係を持つようになった過程も面白かった。限られた時代、地域とはいえ、古代の東北についてひとつのイメージをつくることができたと思う。

 本シリーズはやや狭くて深いテーマについて、複数の専門家がさらに狭いテーマで解説するというもので、その狭さが興味深く気に入ったものを買ってきた。文章もそれほど難解ではないが、本一冊の中で各テーマを総括する体制はないのでばらばら感は伴う。それほど奇抜で極端なものは、自分の読んだ範囲ではなかったように記憶しているので、無難な各論の集合体ということになるだろうか。


 本書の感想を付け加えておく。内容について歴史学的、考古学的な善し悪しは検証する予定はないが、10年、20年前に執筆されてとくに加筆もされていないものが含まれているというのはどうだろうか。シリーズの最後を飾る本でもあるし、流れの早い昨今のこと、書き加えることが全くないとは思えないのだが。

 もうひとつ細かいことなのだが、ところどころに現代の地名が出て来る。栗原市や大崎市、登米市、奥州市と、随分と新しい自治体が増えたなと思う。宮城県北部から岩手県南部にかけては東北の中では、大きな市町村合併が多かった地域。この本に限っては現在の地図を添えておいて欲しかった。

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