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2006年12月27日

(書評)李世民

李世民
小前 亮 著
ISBN4-06-212927-2
講談社 2005.6


 久しぶりの歴史小説。正直な感想としては、わりと古典的に歴史小説というもの。わりと高い位置からの政治戦略を描くことは無く、暗部といったものもあまり表現されていない。わりと数多い登場人物が正面からぶつかりあうというストーリーで、英雄譚というほどではないが、三国志演義をよんでいるような感じがある。

 本書は李世民というか、李淵、建成、世民親子による太原挙兵から、唐が拡大していく物語りである。確かに世民が主役なのだが、最初の方は群雄がそれぞれに描かれていて、全てが世民の話として流れているわけではない。ただ、群雄といっても河北の竇建徳や涼州の李軌は登場するが、江南や四川は全く舞台にならない。最後は玄武門の変で終わるのだが、取って付けたようであり実質的には中原を統一するまでの話だ。

 李世民を巡る物語の場合、ストーリーに一番影響するのは弟の元吉を含めた親子三兄弟の性格付けと思う。本書の場合、極端に短絡して評価すると、李淵は凡庸、李建成は堅実、李世民は英雄、李元吉は暗愚とみる。全般に渡って李淵の凡庸さが目立ち、玄武門の変など李元吉が話を悪化させる役割。李建成は評価高く、良き兄、良き長男として描かれている。李淵と李元吉はやや極端だが、李建成は面白いと思う。

 複数の群雄を同時平行的に語って、多くの人を登場させても退屈せずに読めるのは、本書の古典的な表現によるのかと思う。また、歴史ものにありがちな歴史として振り返って評価を下すような表現、歴史書や研究書を引用するような部分は一切ない。屈託なく歴史物語りである。

 英雄譚的な歴史小説とみて十分に面白いと思うが、比較的歴史初心者向きと評価する。政治臭い部分や暗部の表現の少なさは物足りなさに繋がると思う。逆に群雄の竇建徳、李密、王世充あるいは李世民の家臣としての李(世)勣、劉弘基などは本書を通じてイメージが自分の中にかなり残るので、唐の歴史を探究する入り口としては悪く無いと思う。ただ三国志演義などと同様に、少数の怪物のような武将の活躍によって戦闘が左右されているような表現は、痛快ではあるが好きにはなれない。

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