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2007年1月14日

(書評)馮道

中公文庫 B 6 16
馮道
---乱世の宰相
礪波 護 著
ISBN978-4-12-204282-7
中央公論新社 2003.10


 本書は10世紀、中国の五代十国時代に宰相として活躍した馮道を解説したもの。原書は1966年に人物往来社から出た「中国人物叢書」第一期12冊の一書として出版されたもので、1988年に単行本化された。

 馮道は882年、現在の河北省に生まれた。節度使の下級文官を皮切りに後唐の明宗皇帝のもとで宰相(この当時は必ずしも官僚筆頭ではない)に就いた後、後周の世宗皇帝が即位した直後に73歳で死ぬまで歴代王朝の顕職を歴任した。契丹も含めて6つの王朝が次々と交代していく混乱の時代にあって、その中の11人の君主に高官として仕えて天寿を全うした。

 本書は前史として安史の乱から説き起こし、馮道が育った河北の状況を説明している。また、馮道の生涯を眺めながら五代の歴史を併せて説いていくという内容でもある。一人の人物を通して見渡すことで複雑な流れを追い易くなっている。その点で五代史の入門書として十分な内容を持つ。

 本書を読むまで馮道という名前よりも、そういう宰相がいたようなという程度の認識しかなかった。本書によると、馮道は5朝8姓11君に仕えたと云われ(5朝には契丹を含み後梁を含まない、各王朝には養子として帝位を継いだ者が複数いることから、あえて姓を8と数える)、二君に仕えることすら不忠と言われる中で、世渡り上手な不忠者と評価されてきたという。筆者はこれに対して、乱世という状況の中でより高邁に国、つまりは民に仕え続けた有能な人物と評価している。単なる世渡り上手ではなかったという。

 馮道という人物の面白さもあり、また一人物を通しての時代史という体裁は印象に残り易い点もあり入門書として良書と思う。原書が40年前といせいなのか、伝説的と思える部分と史実的な部分との境が曖昧に見える表現にやや古さを感じる。ただ、この時代の研究の進展を知らないので専門レベルの評価は分からないものの、一般書として五代史のみを対象としたものは皆無に近いと思われ、その点でも貴重な本であることには変わりがない。

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