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2007年2月11日

(書評)五胡十六国の基礎的研究

五胡十六国の基礎的研究
三崎良章 著
ISBN978-4-7629-2771-3
汲古書院 2006.12

 本書は、著者の五胡十六国研究に関わる16編の論文を再構成し、新たに書き下ろした「結論」を加えたもの。序論、結論のほか5部12章よりなる。以下、目次を抜き書きしておく。

 序論 日本における「五胡十六国」研究と本書の目的
 第一部 「五胡十六国」の意味と五胡十六国時代の民族
  第一章 「五胡」と「十六国」
  第二章 前秦における民族状況
 第二部 五燕の官僚機構と民族性
  第三章 前燕の官僚機構
  第四章 後燕・南燕の官僚機構
  第五章 五胡十六国時代における遼東・遼西地方の民族構成の変化
  第六章 北燕の「鮮卑化」
 第三部 夏の年号と国家観
  第七章 夏の年号
  第八章 「大夏紀年墓誌」に見える夏の建国意識
 第四部 異民族統御官
  第九章 後漢の破鮮卑中郎将
  第十章 東夷校尉
 第五部 「十六国」諸国の国家観と民族認識
  第十一章 「十六国」諸国の異民族統御官と東晋
  第十二章 異民族統御官にあらわれた「十六国」諸国の民族認識
 結論

 2002年に発売された著者の前著「五胡十六国 中国史上の民族大移動(東方書店)」は、五胡十六国時代というかなり限定した時代を扱った唯一の一般向けの入門書。かなり詳しい内容になっていて、大変勉強になった一冊だった。本書掲載の論文16編の内、10編がこの前著に先駆けて書かれたもので、その意味で前著の基となった論文を多く含んでいることになる。

 書名にあるとおり地道な文献資料研究を基とした論集で、五胡十六国時代史研究の中でもかなり踏み込んだテーマを扱っているように見受ける。また、本書にも墓誌が資料としていくつか取り上げられていて、墓誌研究が現在の中国史研究の中で広く重要な位置にあるということだろうか。文献の引用について、漢文原文と読み下し文を必ず併記されているので勉強になる。巻末には、60頁に亘って「五胡十六国 関係文献目録」を掲載している。

 五胡十六国時代から南北朝にかけては、中国史の中でも大きな変化の時代で、今後更に多くの成果が世に出ることを待望し、著者にはさらなる解説本の出版を期待したい。


 内容について、細かい感想を書き加えておく。本書は冒頭に「五胡」とはなにかという論があり、胡は5つではなく、国の数も16ではないというのは、前著でも触れられた興味深い論である。それらの国々における民族の問題が本書の大きなテーマのひとつである。必然的に「民族」「少数民族」という言葉が沢山でてくる。先日民族についての雑感で少し触れたように、歴史、とくに近代以前の歴史の中に出てくる「民族」という言葉が、自分の中ではまだしっくり来ない。

 漢族の実体があやふやであるのに、五胡諸部族の人々が本当に少数民族であるのか。また、一つの民族に括られる人々が共通の文化を持っていてなんらかの認識を共有していたのか。異なる文化を持つ部族の連合体、たんなる政治的な集団に過ぎないのではないか、とう疑問は解消されない。もちろんこれらは本書の論旨ではないので、本書の善し悪しとは関係がない。

 ただ、代りになる適当な言葉が無いというのも事実。意味は別にしても、言葉遣いはあまり考え込まない方が良いのかもしれない。

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コメント

今ちょうど、「五つの北族の、一六のバルバロイの国(笑)」について読んでるのですが、基礎知識がないので四苦八苦してます。
参考になりそうな本ですねー。読んでみようかなー。

投稿: 雪豹 | 2007年2月11日 23時42分

雪豹さんこんばんわ
序論、2章、6章、7章、8章の後半が「五胡十六国 中国史上の民族大移動(東方書店)」より新しい論文がもとになってます。
今の自分的には第六章の北燕の「鮮卑化」とかが結構ツボに来てたりしますね。

投稿: 武藤 臼 | 2007年2月12日 22時35分

> 第五章 五胡十六国時代における遼東・遼西地方の民族構成の変化

ぬぅぅ・・・
誘っているなぁ>本

投稿: 蒸しぱん | 2007年2月14日 01時31分

遼東というと、高句麗が燕諸国と争ってるし北燕とかには高句麗出身者とかもいるし、自分的には高句麗ネタに食指が動きますね
その五章の注で武田幸男氏の「高句麗史と東アジア」が紹介されてて、欲しくなりました(笑
古本としてはほとんど出物ないんで、近所の図書館を漁ってきます

投稿: 武藤 臼 | 2007年2月14日 23時47分

実は手元に>「高句麗史と東アジア」
やはりこの本(五胡)も欲しい・・・ムラムラ

投稿: 蒸しぱん | 2007年2月17日 23時30分

>実は手元に>「高句麗史と東アジア」

あ、いいなあ(^^;
面白い?
燕とか夫餘とかの情報あります?

投稿: 武藤 臼 | 2007年2月18日 01時21分

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