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2007年3月31日

中央アジア学フォーラム

 大阪大学で開かれている中央アジア学フォーラムに初めて参加してきた。過去ログを見ると、わりと自分の興味範囲に近い発表が毎回されているので、一度聞きに行きたいと思っていた。今日は、予想以上に濃い興味深い内容で充実した半日となった。


●書評
サミュエル・リュウ他著『パルミラよりザイトンへ---碑銘学と図像学---』
 向正樹(大阪大学)
 ここで紹介されている本は、オーストラリアの研究者によるシリアのパルミラと中国の泉州の碑文を研究紹介したもの。今日はその中でも向氏の専門であるモンゴル時代の泉州に関わるものを中心としたものだった。中でも興味を惹かれたのが、中央アジア出身と思われるネストリウス派キリスト教徒、あるいはマニ教徒といわれる人達の墓碑文。漢文もあるようだが、シリア文字で書かれたトルコ語文があるとのこと。また、年号の表記としてセレウコス暦(アレクサンダー大王の1624年といった表記)を使っていたとか、ネストリウス派の墓碑で神という言葉に「テングリ」が使われているとか興味深い話の連続だった。


●研究発表
契丹文字研究の現状と課題
 武内康則(京都大学)
 契丹(遼)は、遼金西夏宋の中でもっとも存在感のある国と思っているのだが、その契丹で発明された契丹文字で書かれた資料は、西夏文字、金の女真文字に比べて圧倒的に少ないらしい。纏まった文字資料は全部で50点に満たないとのこと。契丹は「遼史」という西夏にはない正史があるわけで、西夏からみると羨ましいかぎりなのだが、こと現存する一次資料についていえば、カラホト文書があるおかげで西夏の方がずっと上ということになる。そういえば、愛新覚羅氏の研究書まだ読んでなかったな・・・


アブー=ドゥラフ=ミサル=イブン=ムハルヒルの中国旅行記に見えるサンダビル
 白玉冬(大阪大学)
 このアブー=ドゥラフは、白氏によると10世紀中央アジアのサーマーン朝に仕えた人物とのこと。彼は、王の命令で10世紀の前半に中国へ使者として旅をしていて、その時の記録が残っているという話。自分にとっては、そもそもそんな人がいて、その記録が残っているというだけで驚き。残念ながら氏が利用された資料がフランス語訳を再度中国語に訳したものだったとのことで、原典が中国を何と書いているかは今日のところは分からなかった。


張掖漢蔵合璧「西夏黒水橋碑」再考
 坂尻彰宏・佐藤貴保・赤木崇敏(大阪大学)
 中国張掖に残る碑文についての発表。この碑文は西夏時代に建てられた貴重なもので、一面が漢文、一面がチベット文で書かれている。坂尻、赤木両氏は昨年実物を視察し拓本を取ってきたとのことで、今回はそれを元に文面を再検討したというもの。西夏時代の地方史という点でも興味深い。今夏には論文として纏まるらしいので楽しみに待ちたい。


ベルリンの仏教ソグド語文献について:新発見資料など
 吉田豊(京都大学)
 最近公開されたというドイツベルリン蔵のソグド語文仏教文書についての考察。これも自分にとっては未知の領域。内容の検討からサンスクリット語、トハラ語、パルティア語、ウイグル語の影響について考察されている。森安先生には、ソグド語仏典にウイグル語の奥書があったことが、大変な驚きであったようだ。帰宅してから早速ネットを覗いてみたが、そのまま一次資料として検討できる綺麗な写真にびっくり。

 →ベルリン蔵の仏教ソグド語文献が紹介されているサイト
 →トルファン文書のアーカイブ
 →今回取り上げられたソグド語文書


 次は、7月28日予定とのこと。

<2007年7月16日:一部再編集しました>

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