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2007年3月17日

(書評)日本人になった祖先たち

NHKブックス1078
日本人になった祖先たち
DNAから解明するその多元的構造
篠田謙一 著
ISBN978-4-14-091078-8
日本放送出版協会 2007.2

 本書は、生物の細胞の中の小器官、ミトコンドリアが独自に持つDNAの違いを比較することで、人類がアフリカからどのように拡散し、日本人がどのように遷移してきたのかを解き明かしている。

 ミトコンドリアが持つDNAは、母親からしか子供に伝わらないという特質がある。この他にも細胞核の中にあるDNAと異なる点がいくつかあり、そのメリットによって人の系統をDNAから解明する材料として研究されてきた。その研究から、10から20万年前にアフリカにいた一人の女性が全人類の先祖であるとしたミトコンドリア・イブ仮説が話題になったのは10年近く前のことと思う。本書は、そんなミトコンドリアDNA研究の最新の成果を紹介している。

 ミトコンドリアDNAの違いを基に作られた人の系統図は前からあったが、4から6つのグループに分類する程度のものだった。それが研究の進展によって大きく細分化されたという。さらにサンプル数が格段に増えたことで、細分化されたグループの実態が解明されてきている。つまり、地球規模でそのグループの分布の片寄りを比べることで、アフリカから世界へ人がどのように拡散していったのか、より複雑に推測できるようになった。これが本書前半の中心で、いちばん興味深いところ。


 後半は、日本人についてはどうかというもの。まず、10以上に細分化された日本人のミトコンドリアDNAのグループについて、それぞれの由来を推測している。北、西、南から来たものがあり、日本人独自に近いものがありと想像以上に複雑というところ。

 次に国内の地域差、発掘した人骨から採取したDNAを使った縄文人や弥生人との比較、中国や朝鮮との比較と面白い話が続く。ただしそれまでの話題に比べるとやや歯切れが悪くなる。それは一部を除いて地域差が小さいこと、またグループそのものの比較ではなくてグループの頻度を比較するという方法に限界があるからと自分には思える。

 最後にややおまけという感はあるが、Y染色体に基づく研究が一部紹介されている。Y染色体はミトコンドリアDNAとは違って男性のみが持つDNAであって、その点でミトコンドリアDNAの研究とお互いに補完しあえるものとなるという。


 本書は著者が強く意図して入門書として書かれている。文章は平易であって必要以上の専門的な説明を避けるなど読み易さに配慮されている。ただしその分内容がやや希薄で物足りなさがあるのは仕方がないか。それでも、自分にとってDNA研究に基づく話は久しぶりで、その進展振りはとても驚きで、新しい情報が多く、また今後の進展もかなり楽しみ。

 一つ注文ということになるが、後半の部分で縄文人、弥生人比較するという形になっているので、弥生時代に先立つ人々は全て縄文人というひとつの集団に見えてしまう。著者自身が本文中で縄文人が多様であることを書いてはいるが、弥生人vs縄文人という書き方をする限りその意図が明確にならない。いずれより専門性の強い続編が出ることを期待しているが、この点は是非改善して欲しい。

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