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2007年4月 5日

(書評)ロシア・ロマノフ王朝の大地

興亡の世界史14
ロシア・ロマノフ王朝の大地
土肥恒之 著
ISBN978-4-06-280714-2
講談社 2007.3

 本書は、タイトルのとおりロマノフ朝ロシア300年の歴史を扱った通史である。ロマノフ朝は、初代ミハイルが1613年に選出されてから、ニコライ2世が1917年に退位するまで18人のツァーリを数える。全9章よりなるが、第1章が前史で9世紀のリューリク朝の成立、13世紀のモンゴルの侵攻、イヴァン雷帝などを簡潔に纏めている。最後の第9章が後史で、10月革命からソ連の崩壊までを納めている。

 思えばキエフ公国の成立からソ連の時代に至るまでのロシア通史を読んだ記憶がない。自分の感心としては、どちらかというとロマノフ朝以前のキエフ公国とか、モンゴルの侵攻とか、あるいはハザールとかだったりする。ロシアが侵攻して来たころの中央アジア、ロシアが清朝と戦ったころの満州に関心はあるが、そのいわば敵であるロシアにはあまり関心がなかった。全くのロマノフ朝初心者といっていい。

 本書は、私のような初心者をある程度対象としたロマノフ朝通史というのが感想である。いままで漠然とした記憶しかなかったこと、ピョートルが何故大帝であるのか、エカテリーナ2世なにをしたのかなど、かなり具体的なイメージを持つことができた。また、ロシア側から見たナポレオン戦争や日露戦争などの経過も新鮮な印象を持って読むことができた。

 結びによれば、単なる中央政府の政治史を描くだけではなく、社会史を描くことを目指したという。その点は全編をとおして印象として残るものがあり、特に農奴の問題については再三言及されている。経済や文化に踏み込み過ぎると自分にとっては退屈な内容になりかねないが、そういこともなく適度にバランスのとれた中身といって良いと思う。逆に言えば、ロシア史にある程度造詣のある人にとっては物足りない内容なのかもしれない。


 最後に気になった点をいくつか上げておく。第7章のタイトルが拡大する「植民地帝国」であることから、中央アジアやシベリアについてどのくらい触れられるかが楽しみだったが、自分にとっては少々もの足りなかった。ロシアが何故東へ拡大したのかという問題について、もう少し具体的な解説というのはできなかったか。あるいはこの問題は、より詳しい別書を求めるべきか。

 もう一点は細かいことだが、第3章をピョートル大帝の「革命」としている。大きな改革がなされたというの了解するが、「革命」という言葉使いには違和感が残る。

 これらは細かいことであり、関心があればより深く探究すれば良いことなのだ。その点も含めて、本書は私にとってロシア近代史の入門書として、よく纏まった一冊と評価しておく。

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コメント

この『興亡の世界史』シリーズは、結構広い読者層を対象にした感じの本が多いみたいですね。ロシア史入門にはいい本だと思います。

投稿: 馬頭 | 2007年4月 6日 10時09分

>この『興亡の世界史』シリーズは、結構広い読者層を対象にした感じの本が多いみたいですね。

そう思います。
まったく良い勉強になりました(^-^;
来月には林俊雄先生の匈奴や杉山先生のモンゴルがどんな内容になるか楽しみにしときます。

投稿: 武藤 臼 | 2007年4月 6日 23時58分

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『興亡の世界史 14 ロシア・ロマノフ王朝の大地』 (土肥恒之。講談社。2007年。2300円。印刷/大日本印刷。製本/牧製本印刷) 第1章・中世のロシア キエフ国家と「受洗」、タタールのくびき、モスクワ・ロシアの形成 第2章・ロマノフ王朝の誕生 ゼムスキー・ソボールの時..... [続きを読む]

受信: 2007年4月 6日 09時33分

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