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2007年4月29日

(書評)羊皮紙に眠る文字たち

羊皮紙に眠る文字たち
スラヴ言語文化入門
黒田龍之助 著
ISBN978-4-7684-6743-5
現代書館 1998.12

 本書は、ロシア語を中心にスラヴ諸語について、文字と言葉、その歴史も踏まえて解説したもの。言葉や文字の説明に特化せずにその背景の話を取り混ぜ、サブタイトルのように言語を巡る文化についての本といった内容になっている。

 現在使われている言葉や文字について、ロシア語での文字の音価やスラヴ諸語それぞれで使われている文字の違いについてのほか、人の名前の中の「父称」についての話を含む第一章「スラヴ語学入門」。近代以前の言葉や文字の変遷についての第二章「中世スラヴ語世界への旅」。キリル文字、グラゴール文字の歴史的な話、アラビア文字が使われた話を含む第三章「文字をめぐる物語」。著者の体験をもとにスラヴ諸語の話をエッセイ風にまとめた第四章「現代のスラヴ諸語」よりなる。

 あとがきにも書かれているが、この本で何かを学ぶというよりは、これを切っ掛けにスラヴ諸語の世界に興味を持ってもらえれば良いというもの。説明的で体系的に書かれた文語調のものではなく、また専門的内容を全て省いてしまっているわけでもない。様々なエッセンスを交えながら行った市民講座をそのまま書き起こしたような雰囲気がある。部分的に纏まりの無さがあり、入門者には難しい部分やもう少し踏み込んで欲しいと思う部分があったりするが、それも入門書として刺激的な部分ということもできると思う。

 著者は、ロシア語を中心に広くスラヴ諸語全般を研究対象とし、ロシア語、ウクライナ語、ベラルーシ語についての専門書を著している。スラヴ諸語を学ぶために東欧諸国を飛び回った話を綴った第四章はとくに興味深い。ひとつの言葉が話せれば他の言葉もおおよそ察しがつくことがあるといった話は、類縁語といえば琉球語しかない日本人にとっては、なかなか実感し難いだけに興味深い話と思う。

 当面スラヴ諸語やキリル文字を使う予定があるわけではないが、文字や言葉には興味があるので読み物として十分に面白い一冊だった。ロシア語で33もあるアルファベットの音価が、なかなか頭に残らないのは年のせいかもしれない。それでも記号ではなくて文字に見えるようになってきたのはこの本を読んだ成果と思う。

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