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2007年4月23日

(書評)新書アフリカ史

講談社現代新書 1366
新書アフリカ史
宮本正興・松田素二 編
ISBN978-4-06-149366-7
講談社 1997.7

 本書はサハラ以南のアフリカを扱った通史で、新書ながら参考文献を含めて600ページ、厚さ2cmを超える大著だ。前史として人類発祥から始まり、ヨーロッパ襲来の時代を経て現代から未来展望までと、時代的にほぼ全てをカバーしている。

 また、厚いだけでなく時代的、地理的に広い範囲を扱っているので、章や節を単位に16人の著者が執筆を分担している。著者は、史学系のほか社会学、人類学、民族学、政治学など多彩な分野から招集されている。重複や表現の違いということはあるものの、それほど気にならなかった。

 本書の一番の特徴は、植民地時代以前の歴史に多くのページを割いていることだろう。2部と3部で200ページを超える。高校世界史レベルで、ポルトガル進出以前は真っ白な歴史地図しか知らない自分には膨大な情報だ。文献資料が決定的に不足している領域だけに、社会史的な部分や考古学、民俗学の成果などを盛り込んだ工夫の程が伺える。


 あくまでも一般向けの新書であって、先行研究の紹介や文献引用はなく元ネタは知れないことにはなる。それでもこれだけの厚さであり必要があれば参考文献に当るということで承知しておきたい。バンツー系の人々の拡散、サハラ交易、ムスリム商人の東アフリカ進出など断片的な情報は知っているが、誰がそれを担い、どう繋がっていたのかという点だけとっても、興味津々。とくに第4章「ザンベジ・リンポポ川世界」はグレートジンバブエと直接関わり面白い一章だった。

 第2、3部にページを割いた分、それ以降の時代が相対的に割りを食うことになる。それでもポルトガル登場から奴隷交易、オランダ人の移住、植民地化と抵抗などの部分は、各地域毎に分りやすく纏められている。サハラ南部に植民地化に抗する形で成立したイスラム系の国家群というあたりは、知らないことばかりで興味深い。

 植民地が確立してから20世紀末までの部分は、ダイジェスト版という内容になるのは仕方がない。そこで取り上げられている国や地域、人物、話題は要点を押さえているように見受けられるがどうだろうか。

 類書を全く読んでいないので比較検討はできないし、また細部についての検証もできない。しかしその前提であっても、扱う時代と地域の広さに加えて近現代史に片寄らない内容で、アフリカ史の奥行を学ぶことができたと思う。一般向けアフリカ通史としてバランスの取れた一冊と評価したいがどうだろうか。


 以下に目次を書き出しておく

はじめに---アフリカから学ぶ
第1部 アフリカと歴史
 第1章 アフリカ史の舞台
 第2章 アフリカ文明の曙
第2部 川世界の歴史形成
 第3章 ザイール川世界
 第4章 ザンベジ・リンポポ川世界
 第5章 ニジェール川世界
 第6章 ナイル川世界
第3部 外世界交渉のダイナミズム
 第7章 トランス・サハラ交渉史
 第8章 インド洋交渉史
 第9章 大西洋交渉史
第4部 ヨーロッパ近代とアフリカ
 第10章 ヨーロッパの来襲
 第11章 植民地支配の方程式
 第12章 南アフリカの経験
第5部 抵抗と独立
 第13章 アフリカ人の主体性と抵抗
 第14章 パン・アフリカニズムとナショナリズム
 第15章 独立の光と影
第6部 現代史を生きる
 第16章 アフリカの苦悩
 第17章 二一世紀のアフリカ

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コメント

これ1冊を手に取れば、アフリカ史(サハラ以南)に俄然興味がわいてくるというものです。いい本ですよね。とはいえ旧石器時代の歴史の長さにはさすがにお手上げですが(笑)。

紀元1000年代後半以降の歴史についてはユネスコから出ている本(確かアフリカのイスラム化の考古学)がよさそうですが、まだ手を出してはいません。北ユーラシアを納得行くまで理解できたら次はアフリカかも知れませんね(えー

投稿: 蒸しぱん | 2007年4月25日 01時31分

>いい本ですよね。
ほんとに。白地図に色を塗っていく感じですね。アフリカ史のイメージはかなり変わった・・・というか新しくできたってとこですね。

>北ユーラシアを納得行くまで理解できたら次はアフリカかも知れませんね(えー
なんか、やりたいこととかやりかけの事が溜まる一方でして(^^;
とりあえず足許を固めないと・・・ってそれでロシアとか三好とか手出してるし(^-^;

投稿: 武藤 臼 | 2007年4月25日 02時16分

この本を買おうか迷っていたところ、たまたまこちらの書評を拝見しまして
買うことに決めました。

実は、ブラッドダイヤモンドを観て、アフリカについて一から勉強しようと思いました。

投稿: tea☆ | 2007年4月30日 21時09分

tea☆さんこんにちは

コメントありがとうございます
書評にこういうコメントを頂くの初めてです。

私の感想があまり外れていないことを願って止みません(^^;

投稿: 武藤 臼 | 2007年5月 2日 18時57分

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