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2007年5月28日

(書評)古代の地方官衙と社会

日本史リブレット 8
古代の地方官衙と社会
佐藤信 著
ISBN978-4-634-54080-4
山川出版社 2007.2

 古代日本史の中で、律令制と言われた時代に実際に行政制度がどのように機能していたのか、というのは少し興味を覚えるテーマだ。ただ今は手を広げることが困難なので、時々思いついたように面白そうな本を読んでいる。

 地方官衙とは、地方にあった国や郡の役所のこと。本書では、律令制時代の国や郡の役所関係の遺跡発掘成果を文献資料で補いながら、官衙を中心に当時の地方社会を考察している。

 自分が利用した高校日本史の参考資料であれば、国府の復元図は掲載されていたが郡についての情報はほとんど無かった。発掘の進展によって、国府ばかりでなく各地で郡の役所跡とされる遺跡が多く発掘報告されるようになったとのこと。それら国や郡の役所跡は全国に渡って、ある程度の企画性があるという。本書に紹介されている遺跡でいえば、北は宮城の東山官衙遺跡から、南は福岡の小郡官衙遺跡まで、広く企画性が認められるという点が本書の一番の肝といえるだろうか。

 国、郡、郷、里という律令時代の地方制度は、近代的な中央集権的なもののように見えるのだが、だからこそ古代においてどの程度機能していたのかという疑問は湧いてくる。発掘の成果による限り、少なくとも8世紀から9世紀にかけて、制度はかなり機能していたと評価しうるということになるのだろう。奈良平安という時代を考える上でとても興味深い話だ。


 本書は、100ページ余りというコンパクトな中に、遺跡の平面図など図版を多く盛り込み、具体的な遺跡の事例から解き明かしている。背景的な部分は簡潔であって、成果を多く盛り込んだ分やや散漫と言えなくはないが、他に考古学ベースの詳しい解説書がいくつもあるように思うので、本シリーズの企画的に十分な内容ではないだろうか。

 これまで国内を旅行する場合、戦国、江戸時代の史跡に立ち寄ることが多かったが、本書で紹介されているような遺跡もこれからは対象にしてみようと思う。

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