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2007年5月19日

(書評)中国史のなかの諸民族

世界史リブレット61
中国史のなかの諸民族
川本芳昭 著
ISBN978-4-634-34610-9
山川出版社 2004.2

 本書は、中国の歴史の中に登場する民族について、漢民族と北方系の民族との対立軸を中心に、古代から現代に至までを簡潔にまとめた一冊。以下の5章よりなる。

1.漢唐間の北方民族と中国
2.モンゴル族の国家
3.女真族の国家
4.長江流域以南の諸民族
5.現代中国における民族問題

 比較的ページ数の少ないリブレットシリーズであるので、中国内地に政権を立てた民族が中心になるのは当然といえば当然かもしれない。1章から3章まで、ページ数で約7割近くが北魏から清に至までの各王朝の話題になっている。その中でも著者の専門である北魏を中心として取り上げ、それとの比較で同じ遊牧民系である契丹、モンゴル、狩猟牧畜系として違いのある女真と分けて説明しているところは面白い解説と思う。また、北魏の孝文帝と契丹の海陵王、北魏の道武帝とチンギス・ハンそれぞれの対比、千戸長、ミンガンなどの支配体制の類似、文字創設についての民族意識など比較論の中で面白い所が押さえられている。

 4章では、福建地方の山越族の消長、清代の苗族などを取り上げているが、前漢初期の南越、雲南の大理、あるいは五代十国時代の南漢などもっと取り上げたら面白かったのだがと思う。ページ数が厳しいという点で、逆にいえば北方に絞った方がより濃い中身になったのではなかとも思う。

 また、漢族について古代から普遍的に続いてきたわけではないことが述べられているが、漢と匈奴から民族というくくりで語ることについての抵抗感は残る。自分は、民族集団というよりは政治集団と捉えて評価するほうが見誤りが少ないと考えている。

 細かい点でいうと、モンゴルについて蒙古人、色目人、漢人、南人という記述があるが、これはまだ過去のものではないということか。また、モンゴル時代の地図にオゴタイ・ハン国が載っているのも古くはないのだろうか。こういうところに噛み付きたくなるのは杉山正明氏あたりの影響が大きいからかもしれない。実際研究者の間では今どう評価されているのだろうか。

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