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2007年6月17日

新 シルクロード 第3集

 第3集のサブタイトルは、オアシスの道は険し。これまでの3作の中では、無難に纏まっていたなと思う。現在のキルギスとウズベキスタンの問題について、かなり教科書的にツボを押さえていたように見えるのは、たまたま今自分が読んでいる『現代中央アジア論(日本評論社)』が、番組に取材協力者として名前を連ねていた小松久男、宇山智彦両氏らが纏めたものであるからかもしれない。

 とくに、自由化を急速に進めたキルギスと社会主義体制を残しながら国づくりを行ったウズベキスタンという点。オシュの事件や(今夜の放送には出てないが)タジキスタン内戦などがあったとはいえ、中央アジアは他地域に比べれば民族の対立は穏やかだったという点は、上であげた本の内容のままとも思える。ただ、自分がそう感じるのは前知識があるからと思われ、番組の内容として無難なだけで説得力があったかどうかは疑問が残る。

 見ていて面白かった点が人々の顔立ち。最初にウズベク人として紹介された老人がコーカソイド色の強い顔だったのに、その後に登場した青年はキルギス人とどこが違うのだろうという顔だった。ロシア人と朝鮮人の混血の女性とか、綿摘みをする女性たちとかにコーカソイドとモンゴロイドの配分の微妙さは、中央アジアの多様性と歴史の複雑さという点で見て楽しめる部分である。


 第3集目にしてようやくイスラムがでてきた。久しぶりに聞くアザーンが美しく響く。ただ、上の本によれば中央アジアではイスラムはまだそれほど大きな力を持っていないという。そのとおりならば、よりイスラムの存在感が大きいコーカサスやアラビアを差し置いて、ここに出てきたのはアンバランスに映る。取り上げてしかるべきとは思うのだが。


 細かい疑問点を二つ。ひとつは最初に出てきたキルギスと中国の国境貿易について。90年代以降貿易が盛んになった点はよいとして、番組を見ていると中国側からの一方的な片貿易に見えてしまうのだが、実際にそんなはずはないと思う。キルギスからは何が中国に輸出されているのだろうか。

 もうひとつは、ブハラのところでこの街にも大きな変化が訪れているとしてユダヤ人が取り上げられている点。中央アジアからの人の移動で大きな流れは、ロシア人とドイツ人。また、ユダヤ人のイスラエル移住はイスラエルの政策による所が大きく、中央アジアに限らず旧ソ連全体の流れだったように思う。さらに、ユダヤ教徒とイスラム教徒の共存という点では、歴史的にみれば今のパレスティナが異常であって、共存の方がより普通だったように思う。この両方の点でここでユダヤ人を取り上げたことには疑問がつく。


 歴史的な趣味からみれば、古い話題でも1924年の国境確定くらいで、アレクサンドロスもティムールも、またサマルカンドも出てこないので語りようもない。

 また、第1集から問題視しているシルクロードという言葉がこのシリーズに必要なのかという点は、今日の放送でも解決されていない。むしろ、現代の国境貿易について無理にシルクロードとという言葉を持ち込んだために焦点がぼやけてしまっているように見える。また、サブタイトルにオアシスとあるが、何がどのようにオアシスの道なのかもさっぱり的を得ない。やはりこのシリーズは、ソビエト崩壊後の現在という形で描くべきと思う。


 次回第4集の放送は次の日曜、6月24日。

<おまけ>
番組で取り上げられたキルギス中国国境(Google Map)

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