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2007年8月18日

バイダル裔系譜情報とカラホト漢文文書

バイダル裔系譜情報とカラホト漢文文書
『西南アジア研究』
赤坂恒明

 赤坂氏より論文の抜き刷りを頂戴した。本論については、松井さんがブログ中央ユーラシア研究会の報告で解説されているので、私は違う切り口で簡単に感想を残しておく。

 モンゴル好きといえどチャガタイの息子であるバイダルの名はあまりピントこないと思う。フビライ時代の初期にチャガタイ家当主として活躍したバイダルの息子アルグの方が有名だろう。本論は、そのバイダルの子孫の系譜を各種文献資料から探ろうとするもの。

 この研究の視点で思い出すのが杉山正明氏のモンゴル帝国と大元ウルス(京都大学学術出版会)所収の論文だが、本論はその杉山氏の研究を基礎として引きながら発展させる方向にある。本論の面白さは、杉山氏の論文と共通する部分でもあるが、モンゴル時代の研究の奥行き感であって、東西別々に編纂された資料を駆使して検証を行っていることにある。著者は、表題にあるロシア蔵のカラホト文書や元史などの漢文資料、杉山氏が利用したペルシャ語資料に加えて、著者が「ジュチ裔諸政権史の研究」(風間書房)でも利用した『勝利の書なる選ばれた諸史』という16世紀初頭のチャガタイ=トルコ語の資料を利用している。この異なる言語の資料を比較することで、各資料の不備が補われてバイダルの子孫の系譜が復元されていく。

 本論は20頁余りの論文であって、松井さんが言うところのよくわかっていないという「14世紀以降の東部天山の政治情勢」に問いを発しているものであって、まだまだ入り口ということなのだろう。フビライ以降の元朝とチャガタイ=ウルスの関係には分からないことが多いが、ジョチ一族の研究からチャガタイ一族へと広がる赤坂氏の研究が今後どういう展開を見せるか楽しみにしておきたい。

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