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2007年9月24日

(書評)世界の小国

講談社選書メチエ 397
世界の小国
ミニ国家の生き残り戦略
田中義晧 著
ISBN978-4-06-258397-8
講談社 2007.9

 本書は、人口100万人未満の44の独立国をミニ国家と定義し、それらの国々の成り立ちや現状を様々な角度から分析、解説したもの。生き残り戦略という副題のとおりミニ国家がどのようにして生き残ってきたのかというのは重要なテーマではあるが、全ての国がそこそこ上手く行っているというわけではないので、主体的に生き残りをかけてきたというよりは、結果的に生き残ってきたという現状分析が中心となる。日常的に報道される頻度が低い、あるいは皆無である国々のことなので、現状分析だけで十分に興味深い内容である。

 44の国は、アジア6ヶ国、オセアニア11ヶ国、アフリカ6ヶ国、ヨーロッパ10ヶ国、中南米11ヶ国よりなる。一人当たりGNI(国民総所得)6.6万ドルのルクセンブルクから390ドルのサントメ・プリンシペ、四国より大きいガイアナから1平方キロに満たないバチカン、人口98万人の東ティモールから822人のバチカンとその様相は多様である。したがって本書は、代表例の紹介という形はとっているが、極端に類型化しようというものではなく、総論もあるものの結果的に各論が中心となっている。

 ただ、当然ながら面積が小さいから人口も少ないので、島国、本書でいうところの小島嶼国家はひとつの典型であって、44の半数以上を占めている。その意味で小島嶼国家は、本書の中では重要なキーワドとなっている。オセアニアと中南米の大半がこの小島嶼国家に該当し、小さな島国であるが故の共通した問題があり、太平洋上に散在する国とカリブ海周辺に列島を作る国という地勢上の違いがあるといった点が解説されている。

 具体的な内容としては、各国誕生の歴史から近年ミニ国家が増えた経過、それぞれの経済、政治の状況、さらには国際捕鯨委員会における小国の役割、グローバルゼーションとタックス・ヘイブンといった話題が登場する。小国の典型的な武器だったタックス・ヘイブンに対して、脱税やマネーロンダリングの温床だとして大国から圧力がかかる一方、グローバスゼーションの中で小国が持てる当然の手段のひとつであるといった反論は、この様な話題に疎い自分には目から鱗だった。


 内容は盛り沢山であるが、44ヶ国全てを同等に紹介してわけではなく、テーマによっては典型的な国をあげているだけ。また地域別の紹介などは大半の国が紹介されているが、それでも網羅しているわけではない。また、統計上の数字を多く羅列比較したものでもない。これらの点で本書は専門書というのではなく、メチエシリーズの規格に合った一般向けの概説書である。盛り沢山な分底が浅いのは仕方がない。文章的にも難しい言葉が少なくメチエの中でも読み易い一冊と思う。

 自分的に本書の一番の面白さは、ミニ国家の現状を通して見る世界という観点。大国に翻弄される、小国の利点を武器に大国を翻弄する、様々な利害に巻き込まれる、また時にはイニシアティブを取るなどなど、その過程、結果は決して小さいものではなくてかなり多様だ。世界にはいろんな国があるものだと、それぞれの国の話だけでも面白いのだが、普段読む機会の少ないジャンルの本として、違った観点で世界を見つめてみるという点でも十分に興味深い一冊だった。

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