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2007年10月27日

(書評)古代史おさらい帖

古代史おさらい帖
考古学・古代学課題ノート
森浩一 著
ISBN978-4-480-85787-3
筑摩書房 2007.10

 日本の古代史について数々の著作を残してきた著者が、これまでの研究の総括と考古学、文献学の双方から古代史の入門書を目して書き起こした一冊。入門書というよりは、筆者の観点によって古代史について押えておくべきポイントを纏めたもの。

 下に転載した目次のように3章、11節よりなる。自分的にはいまだに筆者の古墳研究についてのイメージが強いが、本書の扱う範囲(時間よりも空間的に)は広く、かつ古代史を考察する上で基本的な軸となる問題ばかりに思える。各問題について詳細に論述するのではなく、各節を更に小節に分けてコラム的に著者の考えを展開したもので、一般向けの解説書である。また、既に著者が既刊書で詳細に論じてきたことは、簡単な解説だけで詳細は既刊書にあたるようにとあり、話題によっては結論が書かれていないものもある。その点で、著者のこれまでの著作のインデックスとしての要素を含んでいる。

 自分としては、本書のひとつの視点である地方史を探求することで歴史を見直すというものが、所々に生きていて興味深く読むことができた。ひとつには、私が著者が地方をテーマにして書いたものを読んでいないということもある。本書には地方史のほかに中国史から見た部分も多く含まれていて、それらを既成概念に捕われることなくバランスよく見直していくことで見えてくるものが、多く浮かび上っているように思う。


 本書は概説というものではなく、あくまでも著者の考えを纏めたもの。必ずしもというよりは、かなり教科書的ではない内容を含んでいる。例えば邪馬台国についての考え方は、自分が今まで読んだ中では他で見た記憶のないものである。それでいて強弁しているわけではなく、穏やかに理路を述べられていて興味深く読むことができる。

 筆者がここで示している観点が、今後どのような重みを持ち得ていくか私には評価できないが、視点の広さとバランス感覚は評価されるべきと考える。既に筆者の本を多く読んだ向きには、やや浅くて物足りない内容とも思う。また上に書いたようにインデックス的な要素があり、結論が書かれていない部分でには不足を感じることもある。しかしながら、容易に楽しく読める内容であって森浩一的古代史入門書として著者の著作へ足がかりであって、古代史にのめり込んでいく入り口として面白い一冊だと思う。

 なお、著者はあとがきで

古代史関係最後になるだろう書物
古代史についてのまとまった発言は、たぶんこの書物で終わりになるだろう。
 と書かれている。来年80歳を迎えるとのことだが、著者の原点である古墳の問題について、深い内容のものを是非もう一冊とあえて書き足しておく。


<目次>
第1章 土地の見方
 1 海道と島々を考える
 2 変貌する河内と摂津---国産み神話の鍵
第2章 年代の見方
 1 時間をどう記述したか
 2 銅鏡の「年代」をめぐって
 3 諸所に刻まれた年号
 4 「暦」はどのように使われたか
第3章 「人」の見方
 1 『古事記』の構造
 2 倭人=「呉の太伯」の後裔伝承の重要性
 3 複数の「倭人」の存在
 4 南九州を考える
 5 海を渡る倭人たち

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