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2007年10月22日

(書評)加耶と倭

選書メチエ 398
加耶と倭
韓半島と日本列島の考古学
朴天秀 著
SBN978-4-06-258398-5
講談社 2007.10

 日韓双方の考古学の成果から出土品の系統や編年についての考証によって「古代韓日交渉史を見なおす」ことを目指したという一冊。本のタイトルに加耶と倭とあるが、内容的には2章が加耶と倭、3章が百済と倭、4章が新羅と倭という構成で、サブタイトルの方が内容に近いように思う。

 本書の中心である2、3、4の各章は、加耶、百済、新羅各エリアの考古学全般を扱うものではなく、古代韓日交渉史を考える上で筆者がテーマを絞った部分について光をあてたもの。2章が、金官加耶、阿羅加耶、小加耶、大加耶の変遷、3章が栄山江流域の前方後円墳について、4章が敵対的だったとされてきた新羅倭関係を見直すことについてといったところ。


 本書に関係するような考古学ものはほとんど読んだことがないので、残念ながら本書で述べられていることの正否の判断はほとんどつかない。ただ、著者の意欲作である部分は感じ取れるので、機会があれば本書を検証できるような類書には手を出してみたいと思う。そんな前提の内で、古代日本史に関わる部分について印象に残ったところを少し書いておく。

 2章では、最後のところで大加耶との関係で任那四県について触れていて、これは3章にも関わってくる。高校日本史の参考地図に書かれているのとはかなり違う話になるが、初めて読む話で興味深く結構納得のできる内容。3章、栄山江流域の前方後円墳の評価については、考古学的な部分は良く纏まっていると思うが、そこからどう歴史を復元するかについては、飛躍を含んでいて熟れきれていない印象を受けた。

 それから全体的な感想を。土器や金属器などの比較をとおしての古代史の復元の可能性という点は、かなり面白い内容だった。もう少し攻撃的な内容になるのかと思っていたが、日韓双方の成果を取り入れて、できるだけ飛躍の少ない仮説で古代史を復元しようと試みていたように思う。部分的には疑問符が付くが、もう少し関係する本を読んでみたいと思わせる一冊だった。

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コメント

これはかなり読んでて興奮しましたですよ。
というのも、伽耶の諸勢力の時代的・地域的変遷について
簡潔にまとめられていたので。あの位の解像度は欲しい。
とりあえず手元の文献と比較してみようという気を起こさせてくれる位面白かったです。

伽耶諸地域と日本の諸地域の地域ごとのつながりは図に起こして見てみたいですね。

惜しむらくは半島南部の水系や半島、湾などの地形や地名についての地図がなかったこと。知ってて当たり前と言われればそれまでですが、折角面白いんだからもっと読み進めやすいとよかったなぁと。

三百年程時代を下った張保皐とかを見ても、半島南端部・北九州の歴史はわくわくします。

投稿: 蒸しぱん | 2007年10月23日 02時02分

>惜しむらくは半島南部の水系や半島、湾などの地形や地名についての地図がなかったこと。

これはかなり困りました。説明が丁寧だったんでこの川のことなんだろうなぁ・・・と想像はできましたが、電車の中とかで読んでてしんどかったですね。韓国歴史地図でも細かい地形名ないし。韓国製の道路地図帳引っ張り出してきてやっと落ち着きました。

投稿: 武藤 臼 | 2007年10月23日 23時04分

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