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2007年12月 3日

(書評)アイヌの歴史

講談社選書メチエ 401
アイヌの歴史 
---海と宝のノマド
瀬川拓郎 著
ISBN978-4-06-258401-2
講談社 2007.11

 蒸しぱんさんがブログで“お薦め”の一冊として紹介されていたが、私も楽しく読了することができた。

 タイトルを見るとアイヌについての通史という印象を受ける。自分としては、通史というよりは北海道、あるいはアイヌの歴史について著者が設定したいくつかの問題点について、一般読者向けに解説したものと捉える方が分かり易い。本書の特徴は、蒸しパンさんも言われているようにその問題点を考古学的な成果から説き起こしている点にある。

 従来自分が読んだことがあるアイヌ関係のものといえば、文献資料をベースにして本州や大陸との関係を本筋に説いた関係史というものが中心。それに比べると考古学ベースに主体的にどう見えてくるかという論は新鮮だった。

 本書は七章よりなる(目次はこちらを参照)。アイヌ前史としての縄文時代にはじまり、オホーツク文化、擦文文化を経て江戸時代の鮭交易についてまでを扱っている。また逆に、考古学ベースであるため交渉史、関係史、あるいは戦争や江戸時代以降の日本人との関わりといった話は相対的に薄くなっている。


 自分的に興味深かった所をふたつ。まず、考古学の報告書となると遺跡とか出土品の分布や分類などの専門的解説が並び、入門者には退屈になることはままあるが、本書には必要最小限しか紹介されていない。本書的な解説のポイントとして、アイヌの有力者が収集した、日本向け高級矢羽根として取引された鷲羽、擦文文化以降に集落の分布にも大きな影響を与えた鮭漁などが設定されていて、文脈的に分かり易く纏まっている。

 もうひとつは、オホーツク文化とアイヌの樺太進出の具体的な位置づけについて。恐らく専門書をあたればより詳細な解説があるのかとも思うのだが、自分としては本書くらいのサイズでの解説が読みたいと思っていたので、その点で重宝する内容だった。


 簡単に総評を付け加える。本書は一般向けの入門書として本文250ページほどの内容。時代的にも扱っている範囲がわりと広いので、広く浅くなるのはやむを得ないと思う。その意味で興味が向くテーマ、例えば何をもってアイヌ文化とするかといった点については、物足りなさが残るのも当然であり、著者の次回作期待、あるは機会があったら他の本にもあたってみるべきなのだろう。

 しかしながら、著者が序文で次のように示した疑問については十分に解説されていたように思う。

 アイヌ社会はほんとうに「自然との共生」「平等」「平和」の社会だったのだろうか。かならずしもそうではなかった、と私にはおもわれる。
その点でも、考古学から北海道とアイヌの歴史について、新しい視点を得られる一冊としてお薦めできるのではないかと思う。

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