矢祭町議員の日当制
先日の道州制についての中で触れた福島県の矢祭町。ここ数日、複数のニュースに名前が出ている。ひとつは、同町議会が昨年暮れに決めた議員報酬を日当制にすることについて、この4月の実施を前に各地に波紋を広げたというもの。
(日当制についてのニュース→議員報酬、全国初の日当制に 福島県矢祭町(産經新聞))
講演会:日当制導入体験を聴く 住民団体、江府で来月1日(毎日新聞)
江府町議報酬の日当制導入などを直接請求している住民グループは26日、(中略)矢祭町の前町長ら2人を講師に招き、3月1日に講演会「町財政を考える住民の集い」を開くと発表した。江府町と矢祭町の数字を比べてみる。
江府町 面積124.66平方キロ、人口3931人(2004年3月現在)、町職員84人(2004年4月現在)、町議員10人(2007年6月現在)、一般会計歳出35億円(2005年度)、地方債残高68億円(2005年度)(町のHPより)
矢祭町 面積118.22平方キロ、人口6810人(2008年3月1日現在)、町職員77人(2005年3月現在)、町議員10人(2005年3月現在)、一般会計歳出31億円(2005年度)、地方債残高48億円(2005年度)(町のHPより)
面積は同じくらいだが、人口は江府町の方が半分に近い。それでいて町職員、歳出ともに江府町のほうが多い。あくまでも矢祭町との比較だが、努力の余地はだいぶあるということになる。人口が半分ということを考えると余地では済まないとも言える。地勢の違いがどのくらい影響するかということはあるが、矢祭町は江府町にとって良い見本なのだろう。
議員って何だ 福島県矢祭町で考えた 上・日当制の衝撃 報酬3分の1に削減(北海道新聞)
議員って何だ 福島県矢祭町で考えた 下・専業か兼業か 「カネより志」で改革(北海道新聞)
矢祭町を引き合いに出した北海道の市町村はどうかという特集記事。この中で前矢祭町長のコメントが紹介されている。
地方議員が本当にチェック機能を果たしているか。政策提言をどれほどやっているのか。まちが大きければ専業化でプロに、小さければ兼業のボランティアで、という分け方はできない機能という点では正しいと思う。現実問題として規模が大きい程処理する問題は増えるので、結果的に専業化せざるを得ない。
この特集が、報酬が少なければ議会が活性化し、多ければ停滞すると単純化したいわけではないだろうが、組織が大きければ安住が起きるのはそうだろうと思う。ただ、矢祭町の例が札幌市にそのまま援用できるわけではないし、「報酬が見合えばその分は十分に働く」ということも否定したくない。ただし、財政が逼迫しているほどに、金銭的な部分の想定が厳しい方に向くのは当然だろう。
人はなぜ議員を目指すのか…「日当制」で候補者減少?(産経新聞)
改革を実施した矢祭町では、条例実施を前に今月町議会が改選されるとのこと。
町役場で開かれた町議選(定数10)の立候補予定者説明会。日当制実施を新年度に控えた町議選として注目が集まったが、出席したのは現職7、元職1、新人1の9陣営。12陣営が参加した前回に比べ、3陣営少なかった。このニュースによると、日当制に反対した議員は、
収入に関係なく立候補できるのが民主主義の原点。だが日当制にして報酬が下がれば、立候補できない人が出てくる。改革とは呼べないと述べたとのこと。また、同町議会議長はの見解は、
報酬が下がれば候補者は金のかからない選挙を心がけるだろう。また本当に志のある人ならば、報酬とは無関係に立候補するはずだというもの。上で紹介している北海道新聞の特集記事内にある資料によれば、表に挙げられている10町の町議会の会期日数が17から46日で、矢祭町もこの範囲内にある。矢祭町が特別少ない日数というわけではない。30日の会期のために、どのくらい時間外の努力が必要かという問題は残るが、数字を見る限りこの規模の町の議員であれば兼業であることが当然のように見える。結局は、立候補できる人とできない人のどちらが多くなるかの問題である。門戸をより開き、世襲化を抑制するのであれば、自分は歓迎したい。
現実的に、今の時点では小さい町だからできたことである。議会の活性化という点では、いくつも考えられる手段のひとつにすぎないが、検討されてしかるべき事例と思える。少なくともこういう発想が矢祭町から起こり、波紋を広げているということが面白く興味が沸くところである。
<その他のニュース>
矢祭町:住民課と健康福祉課を統合、条例改正案を提案(毎日新聞)
不接続の矢祭町長「議会の判断重い」(朝日新聞)
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