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2008年3月16日

チベット暴動

 10日の第一報を読んだときは、ここまで大規模な事件になると思っていなかった。既に一週間が過ぎ、沈静化に向かっているという主張も出ているが、実質戒厳令下に近い状況が続いているように見える。

 十数人以上、あるいは数十人の死者が出ているといい、1989年のチベット暴動以来の規模という見方もでているので、後学のためにニュースを纏めておく。

<経過>
7日  中国の全国人民代表大会でダライ・ラマ批判
8日  ダライ・ラマ、北京五輪支持を表明
10日 ギリシャで抗議の採火式
   インド北部でチベット独立派のデモをインド当局が阻止
   ダライ・ラマ、中国政府非難演説
   ラサで僧侶の抗議デモ
13日 インド北部でデモ行進中の亡命チベット人を警察が拘束
14日 ラサで大規模な暴動が発生
   ラサで軍が市内の寺院を封鎖
   アメリカ政府、懸念を表明
   ニューヨーク国連本部前でチベット人抗議デモ
15日 チベット自治区主席抗議活動に厳しく対応するとの声明
   在インド中国大使館で抗議のチベット人50人を拘束
   僧侶によるデモが甘肅省でも発生
   ネパールのカトマンズでもチベット人による抗議デモ

 3月10日のラサでのデモ以降も、14日の暴動に至までにいくつかの抗議行動があったようだが、確認できなかった。


 3月10日がポイントになったのは、1959年のチベット動乱の記念日だからという。この日を記念日として、50周年となる来年ではなくなぜ今年なのか。やはりオリンピックということだろう。僧侶、政府それぞれに例年とは異質な緊張感があったのは事実だろう。

 今後どう動くのだろう。オリンピックのために沈静化を進める方向で流れて行くと予想する。ただし、オリンピックについて、諸外国がどう動くかは読めない。単純にボイコットへ向かうとは考えられないが。


 自分の意見を纏めておく。まず一般論として、民族自決ということには懐疑的で、それは民族という存在が曖昧でデメリットも大きいから。チベットについてみても、今チベット族とされている人々が歴史的に集団として纏まったことはなく、また大きな広がりを持つため方言などの文化の地域差もある。つまり簡単には纏まり得ない。

 そのチベットにとって、独立したとしてもその先の道もかなり険しいのではないか。中国領に留まることには、経済的メリットがあるように見える。しかし、独立しない方が良いとも言い切れない。

 ひとつには今の中国に厳然とした民族区分があり、最大の民族とされる漢族が総人口13億人の内12億人を占める圧倒的多数であるということ。もうひとつは、チベットについて主要な部分が実質的な中国領になってまだ50年(四川、甘肅、雲南などではもう少し長い)であって、言葉、歴史、宗教などで独自性が強いという点。現地の人々を知らない自分には、この2点について今のチベット人にどのような意味があるのかが分からない。そのため自分は結論を持っていない。

 ダライ・ラマが説く高度な自治という考えはどうか。この点について自分は、中国全土が連邦制を導入することに、少数民族だけでなく漢族にも大きなメリットがあると考えている。その意味でも現実的と思うのだが、13億人を直接統治するという魅力に対抗できるのかどうか、さらには連邦制のメリットが大きくなるような状況になるかどうかによると考えているのだが。


<ニュースソース>
「不安定要素はダライ・ラマ集団」全人代でチベット代表ら
 (産経新聞)
チベット人、抗議の「採火式」
 (時事通信社)
ダライ・ラマ、北京大会への支持を表明
 (ロイター)
チベット独立派のデモ、インド当局が阻止
 (AFP)
ダライ・ラマ、中国のチベット「弾圧」を非難
 (AFP)
中国当局、デモ実施のチベット僧を拘束
 (AFP)
チベット人の反中国デモ行進、インド警察が阻止
 (CNN)
ラサで火の手、銃声も=複数の負傷者 僧侶の抗議拡大、中国軍は寺院封鎖
 (時事通信社)
チベットで商店放火などの「暴動」、僧侶らの反中デモも
 (CNN)
米政府、弾圧停止を中国に要求
 (産経新聞)
抗議活動に厳しい姿勢、チベット自治区主席
 (AFP)
NYの国連前で抗議デモ チベット人、6人逮捕
 (中日新聞)
中国大使館で抗議の50人拘束=亡命政府周辺ではデモ
 (時事通信)
甘粛省でもチベット僧デモ
 (時事通信)
抗議デモの20人を拘束 ネパール
 (産経新聞)
チベット亡命政府、ラサ騒乱で30人の死亡確認
 (AFP)
「ラサは平穏」と市長  戒厳令を否定
 (中日新聞)

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コメント

ふーん。
私のイメージだとチベット=吐蕃だから、当然独立国だし、独立したいならすれば、って感じなんですがね~。
独立できない、もしくはしない方が良い理由って、実際独立してみたら、ほとんどたいした理由じゃなかったって事がソ連崩壊で証明されちゃったし。

投稿: 雪豹 | 2008年3月17日 19時41分

雪豹さんども

・・・で、独立したいんですね?
勿論私に止める権利はないし、止めろという気もないし、むしろそうなれば応援しますよ。

独立できない理由ってたしかにそれほど無いんでしょうけど、それで良かったかどうかは分からないですよね?

投稿: 武藤 臼 | 2008年3月17日 23時15分

独立したいとか政治的要求というのもさておき、漢族がでかい顔して大勢押し掛けてきていることに対する反発があると思いますが。
頭をかすめたのはインドネシアとかでの華僑焼き討ち騒動。あるいは最近ではアフリカで起きた現地従業員による中国人経営陣に対する騒動とか。

中国に組み込まれている限りこの状況が変わらないのであれば、当然独立に向かうでしょう。平穏な状態の中で民族主義的な流れから独立を唱えているわけじゃないですよね(中共政府の言い分はそうだけど)。

民衆の苦しみを背に、命をかけて立ち上がったお坊さん達に「独立したいの?」とか「独立した方がメリットあるの?」とか、私はとても聞く気になりませんが・・・

・・・と、ケータイ用ブラウザソフトからの書き込みテスト。ポッドキャストも聞けるけど、音量が小さすぎる。何故だ…orz

投稿: 蒸しパン | 2008年3月18日 08時53分

日本人だって、冷静に計算したら借家の方がお得なのに、誰も彼も持ち家を欲しがるじゃないですか。
損得っつーか、主に心の問題だと思うけど。
※家主が因業大家なら余計持ち家に住みたいもん。
(卑近な例ですまん)

でも、こちらからは手も足も出なくてもどかしい。
餃子の件以来、既に中国製品は全く買ってないしなー(わかる限りだけど)。

投稿: 雪豹 | 2008年3月18日 19時41分

蒸しパンさん、こんばんわ
漢族にも子供の頃からラサに住んでいる人もいれば、最近乗り込んだ人もいるわけで、その意味でも単純に民族対立と見ていいのかと思っているわけです。このエントリもそういう動機もあって書いてます。

>平穏な状態の中で民族主義的な流れから独立を唱えているわけじゃないですよね

そのとうりだろうなと自分も思うのです。民族対立ではなく、政治というか行政vs住人という方が自分には理解し易い。
その上で、不満を抱えている人達が、「自分がチベット族だから」「漢族じゃないから」という意識がどのくらい強いのかという点が、自分には全く分からない。ここらへんはいろんな人の意見を聞いてみたいです。
偉そうな言い回しを使ってしまったのは、自分の弱さだな(爆)


雪豹さん、こんばんわ
持ち家を欲しいと思わない自分は日本人じゃないんですね(いやそうじゃなくて)
実際に自分は大家には恵まれてたと思います。ただ、心の問題だからこそ分からないです。

投稿: 武藤 臼 | 2008年3月19日 01時02分

民族みたいなものは境界なんてあってないようなもんだけど、一旦「他者」から不当な仕打ちを受けたりすると芽生えるもんじゃないですかね。海外でいきなり白人に唾を吐きかけられるとか。

そういう意味ではたとえ「歴史的に集団として纏まったことはなく、また大きな広がりを持つため方言などの文化の地域差もある。つまり簡単には纏まり得ない」だったとしても中国は見事にチベット民族を醸成しているんじゃないでしょうか。皮肉にも、というか。

この事態を民族対立ではなく、地元民対入植者の対立と言い換えることに何か意味があるのかは・・・うーん。

中共政府の振る舞いの酷さは議論の余地はないけど、ここではそれは本題ではないということでOKでしょうか。

「民族自決」という言葉がある一定量含んでいる胡散臭さ、危険性についてはまったくもって賛成です。これがために多民族の緩やかな共生社会が近現代になって血で血を洗う、あるいは民族浄化といった事態を招くことになった一因であるわけですから。

ただ、今回の事態はモンゴル系、オイラト系も含めて多様な集団が暮らしていたチベット文化圏に、まったく関わりのない漢民族が大量に入植して全てを塗り替えてしまおうとしていることへの抗議・抵抗であるわけなので、民族意識を持ち出すまでもない(むしろ中国側が掻き立てている)話だと思います。

ダライラマの唱える「高度な自治」も要は政治的な地位は国でなくとも自治国でも保護領でもいいけど、チベット文化圏を壊すようなことだけは勘弁してくれということなのではないかと勝手に解釈してますけどどうですかね。

つ「甘粛からのビデオ」
ttp://www.nicovideo.jp/watch/sm2680859

投稿: 蒸しぱん | 2008年3月19日 03時09分

武藤さん:
>実際に自分は大家には恵まれてたと思います。

これがすべてなんじゃないかと思うのですが……。
大家がひどいので出て行こうとしたら刺された、ぐらいに理不尽な話なのではないかと。

投稿: 雪豹 | 2008年3月19日 18時21分

蒸しパンさんこんばんわ

>だったとしても中国は見事にチベット民族を醸成しているんじゃないでしょうか。皮肉にも、というか。

面白いですね。確かに民族を育てたのは中国政府といえます。ものすごい皮肉です。意図せずに全く反対のことをしてしまっている。


>中共政府の振る舞いの酷さは議論の余地はないけど、ここではそれは本題ではないということでOKでしょうか。

OKです。政府発表とそれ以外の落差は滑稽なくらいです。やや短絡的な評価ですが、中国政府は国内しか見ていないのですよ。国内でいっぱいいっぱいといっても良い。表現形はともかく、たぶん実態はずっとそのままなのです。


>チベット文化圏を壊すようなことだけは勘弁してくれということなのではないかと勝手に解釈してますけどどうですかね。

基本的にはその方向で良いと思うのです。ただ、この国ではどうあっても圧倒的な少数派。その意味が重くて自分には良い案が浮かばないです。


雪豹さんこんばんわ
ただ、大家は気がついたら決まっていた、簡単には出て行くこともできないわけです。その場合、粘り強く交渉をするというのが王道ですが、聞く耳を持ってもらえないというのは厳しいですね。

投稿: 武藤 臼 | 2008年3月19日 23時28分

チベット事件のまとめガイドラインwiki
http://www8.atwiki.jp/zali/
現在進行中で起きているチベットの事件
(一方からの見方ではチベット虐殺、
もう一方から見ればチベット暴動)の
ニュースソース、関連スレ、ガイドライン、
関連画像、リンク、ネタなど等を収集するwikiです
できるだけ中立の意見で記事をまとめてあります
関係ありそうなところに転載してください

投稿: zali | 2008年3月20日 19時37分

zailさんは方々に同じ文面をコピー&ペーストしているけれども、こういうのはどうなのかなぁ?
転載してくださいなんて正にチェーンメールそのもので、たとえ善意から出ていても迷惑メール同様、決して良いことだと思えないんだけど。つまり、目的は手段を正当化しないんじゃないですか?って事です。
ここのことはむとさん次第ですけど。

むとさん:
>粘り強く交渉

それができれば一番ですが……。
これが夫婦間のことなら、こういうDV夫とは即刻離婚をお奨めしたいですね。家庭内のことには介入しないとか、奥さん自立できるのかとか等々言ってると、追いつめられた奥さんがDV夫をのこぎりで分断しかねませんぞ。

投稿: 雪豹 | 2008年3月22日 19時29分

zaliさん、雪豹さんこんばんわ
コメントありがとうございます。

当ブログは、基本的に梁山泊です。基本を外していなければ、エントリーに関係のないコメントでも歓迎しています。Zailさんのコメントもその範疇と判断しておきます。

ただし、一種のチェーンメール的な意味がありますので、私から情宣することはありませんので、ご了承ください。私の発言になにかコメントをいただけたら面白かったのですが。


>追いつめられた奥さんがDV夫をのこぎりで分断しかねませんぞ。

こと中国に関して、最も中国政府が恐れていることは、政府が多数派であると認定している漢族が反旗を翻すことだと考えています。あまり読めているわけではありませんが、漢族そのものが「追い詰められた奥さん」になる可能性は、現状でも十分にあると思います。少数民族においておやなのでしょうが。

私自身、まだまだ勉強不足ですので、精進させていただきます(笑)

出先より

投稿: 武藤 臼 | 2008年3月22日 23時04分

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