« 天王山と山崎城 | トップページ | 経県値&経県マップ »

2008年3月 3日

(書評)国境・誰がこの線を引いたのか

スラブ・ユーラシア叢書
国境・誰がこの線を引いたのか
---日本とユーラシア
岩下明裕 編著
ISBN978-4-8329-6661-1
北海道大学出版会 2006.6
目次は、本書タイトルのリンク先を参照

 この本は、中国とロシアの国境問題が解決したのを契機に、2005年に7回にわたって開催されたスラブ研究センターの公開講座、ユーラシアの国境問題を考えるの講義録として編纂されたもの。雰囲気を残す意図もあり本文は口語体とのこと。

 それぞれの地域に関わりのある人が担当する形で、ドイツ、グルジアを中心としたコーカサス、中央アジア5か国、インド・パキスタン・中国、竹島、東シナ海と南シナ海、中国とロシアの7エリアが、それぞれの回の話題になっている。基本的には、20世紀あるいは近年にどのような国境問題があり、どんな事件があり、どう推移したかなどの事例紹介とその分析という内容。その中では、関係する文献の検証を行って細かい解説をしている竹島についての5章がやや特殊。また、編者が担当した中国とロシア関係を中心とした7章では、北方領土問題にも触れている。

 少し細かい部分で興味深い部分を少し摘み食いする。1章について、ドイツが第一次大戦以降に大きく領土を失ったことは、高校世界史レベルで地図的にも背景についても覚えている。しかし、当事者として大きく領土を失ったことをどう捉えてきたのかということは、考えたことがなかった。さらに分断された状況の中で、政治的な状況がどう推移したのかという点は、興味深い話だった。第二次大戦の敗戦国どうしであっても、多くの面で日本と対照的に見える。

 7章では、中国とロシアが領土問題をどう解決していったのかが簡単に紹介され、さらに日本の北方領土問題の問題点が簡潔に纏められている。それは、解決を推奨するというのでなく、かなり中立な立場での要点が多様に押えられている。覚えておくべきだなと思う部分が多いのだが、その内のひとつとして、国境問題が解決したからこそ、

 ロシアと中国で国境貿易がますます盛んになっており、国境での様々な協力が深化してます。(189頁)
という指摘は自分には重く感じられた。これは経済的な利益以上の話である。

 この他の章もそれぞれに個性的で興味深いものばかりだった。7章で190頁と適当な厚さで読み易いものだった。1章あたりでは少ないくらいだが、興味を惹かれる部分が多く中身が濃く感じられた。国境問題を考える時の取り掛かりとして、薦めることができる一冊である。


 国境や領土という問題について、少し自分の考えを書き残してみる。自分は、固有の領土という言葉に違和感を持っていた。長い歴史でみれば、先有はあっても固有はありえない。ただ、近代国家は明治維新からと考えれば、その時点での領土は固有ということもできるが、竹島と尖閣諸島は固有ではなくなる。固有という言葉を使う限りここら辺が限界である。

 もう一点、問題の解決ということ。見果てぬ夢にしない為に具体的にどうするのか。ひとつには、解決することの意義、メリットが、もっと指摘されて良いのではないかと考えさせられた。また、相手があることである上に認識の違いの大きさを考えれば、道筋はかなり純度の高い政治であると思える。その意味で、歴史、固有という言葉に違和感を感じることは今後も変わらない。


<参考>
中ロ 国境秘話(岩下氏の解説)

|

« 天王山と山崎城 | トップページ | 経県値&経県マップ »

書評」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/162739/40363821

この記事へのトラックバック一覧です: (書評)国境・誰がこの線を引いたのか:

« 天王山と山崎城 | トップページ | 経県値&経県マップ »