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2008年4月11日

北東アジアの中世考古学(感想)

アジア遊学 107
特集 北東アジアの中世考古学
ISBN978-4-585-10358-5
勉誠出版 2008.2
目次は、本書タイトルのリンク先を参照

 本誌の特集は、タイトルのとおり渤海から金、13世紀初期に金から分裂した東夏(あるいは東真)国の時代の、中国東北部から沿海州にかけてを考古学から考察したもの。必ずしも最新のものというわけではなく、ロシア人のものを含むこれまでの研究成果も対象にしている。

 目次にあるように、10頁前後の小論を9本集めた前半部分と、1頁から数頁ほどの遺跡紹介を15本並べた後半部分からなる。また、執筆者の一人臼杵勲氏が研究代表者を務める文科省の特定領域研究補助事業北東アジア中世遺跡の考古学的研究と直接繋がるもので、報告書掲載の論文を再構成したものを含んでいる。なお、同報告書や調査に伴う写真などをHPで見ることができる。


 簡単に感想を添えると、金の官印について考察した井黒忍氏の一文が、考古学と金初期の政治史を絡めた部分が興味深く読むことができた。また、北東アジアの農業について触れた小畑弘己氏の一文は、どうしても狩猟採集と言われがちなこの地域について、農業の実態がうかがわれて勉強になった。一点だけ注文がつくのだが、筆者によってロシア語地名のカタカナ表記にばらつきがあるのは、なんとかならなかったのだろうか。

 ところで、北東アジア史に関係する本として、北方世界の交流と変容(山川出版社)、北東アジア交流史研究(塙書房)、中世の北東アジアとアイヌ(高志書院)が、わりとあいついで出版された。新書、ハードカバー、箱入りと質量が異なり、エリアや時代にも違いがあるが、いずれにも臼杵氏が関わっている。自分は、北方世界の交流と変容のみ既読で、北東アジア交流史研究は買ってからそろそろ1年になるが、重量級なのでまだ手がつかないでいる。これを機会にと纏めて読めば、記憶力が落ち始めた頭にも良く残るだろうか。


 本誌巻末には、別に『チベット族の一妻多夫婚の構造---雲南省迪慶チベット族自治州徳欽県の事例から』という六鹿桂子氏による小論が掲載されている。これは、雲南省北西部に今も残るという一妻多夫婚の実態について、聞き取り調査の成果を纏めたもの。中国西南地方で一妻多夫というと、女系を中心とした通い婚タイプがいくつかのメディアで紹介されていたように記憶している。この事例は、それと違って兄弟で一人の嫁をめとるのが基本形という。さらには、姉妹と同時に結婚する形の一夫多妻も併存しているとのこと。自分には全く初めて聞く話でかなり興味深いものだった。


<Google Map>
 以下は、本誌で紹介されている遺跡の内、Google Map上で確認できたもの。クラスノヤロフスコエ城址はかなり奇麗に見える。
 塔虎城跡泰州古城(矢印が北門付近)、八連城渤海の上京クラスノヤロフスコエ城址金の上京会寧府址ニコラエフカ城址

 それから、一妻多夫婚の調査地域徳欽県の中心部と、迪慶チベット族自治州の州都シャングリラ県の中心部

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