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2008年5月31日

道州制 最近の動き

 首相の指導力で道州制に 麻生氏、年金は税方式(47ニュース 5月19日)

 この中で自民党の麻生氏は、

 現在の中央集権システムには限界があるとした上で「地域を経営する感覚で物事を考えるべきだ。日本の将来は地域主権型の道州制に移行すべきだ」と強調した。
 とのこと。ここのところ道州制についてのニュースが多くなっているが、これは道州制担当大臣の懇談会、道州制ビジョン懇談会が3月に中間報告を纏めてからの流れと思われる。中間報告は、同懇談会HPから概要本文がダウンロードできる(両方ともPDFファイル、本文は少し重い)。

 自分は、政治制度を改革して中央集権を改めるなら、中央が必要以上に持っている権限を地方に移すことからと考えている。地方分権という言葉を言い換えただけのことだが。麻生氏の発言もそうだが、中央集権を変えるためになぜ道州制の導入が必要なのかが自分にはわからない。

 上記中間報告の「1. 現状の問題点」の中の「(6)不十分な広域行政化と地方分権」には、

 現在の都道府県の大きさでは、広域自治体の単位としては狭小となり過ぎ、地域経済活動活性化や雇用確保など地域や住民から求められている課題に対応できないなど、行政の効率性が著しく阻害されている。
とあるが、本当にそうだろうか。そもそも今の都道府県には広域自治体として必要な制度が整っているのだろうか。あるいは、自治体は現行制度の中で適切に機能しているのだろうか。中間報告の上記一文の前には次の一文がある。
 都市圏の拡大やモータリゼーションの発展などにより人々の移動が広域化したこと、基礎自治体の財政力基盤を高める必要性などによって、市町村合併が進められてきたが、都道府県については明治21年以降ほとんど変更がなく、いまだに行政単位は47の「細切れ」状態にある。
つまり、時とともに必要性があって市町村合併が行われたのだから、都道府県も合併すべきという論である。平成の大合併について大雑把に言って、中央の失敗を地方に押し付けて財源を餌に半ば強権的に進められたもので、少なくとも部分的に機能低下を招いていると自分は評価している。市町村合併が進んだことは、都道府県の合併の必要性には繋がらない。

 懇談会の座長江口克彦氏は、自著地域主権型道州制(PHP研究所)の中で、効率的な行政の為には「12の州、300の市」が適当として、人口規模の平準化を説いている。地方へ権限を移すためには今の自治体では非効率だという。しかし、人口平準化の必要性は、地方自治を考える上では机上の空論であることは、以前道州制についての中に書いた。合併するなというわけではない。合併にはメリットもあるので、合併という判断があってもかまわない。ただ、地方自治を目指す以上それは各地方が判断すべきで、平準化という空論を根拠に押し付けるべきではない。それこそ、平成の大合併の失敗を、輪をかけて繰り返すことになる。

 中間報告書の「3.制度設計の基本的な考え方」の中の「(6)導入のメリットと課題への対応」には、メリットとして以下の7点が揚げられている。

 1.政治や行政が身近なものになることで受益と負担の関係が明確化し、効率の低い政治行政の要求が抑制される
 2.政策の意思決定過程の透明化が進み、住民参加が容易になる
 3.東京一極集中が是正され、多様性のある国土と生活が構築される
 4.地域の実情や特性を踏まえた迅速で効果的な政策展開が可能となる
 5.国の縦割り機構による重複行政がなくなり、補助制度による無駄遣いや陳情合戦の非効率が改革される
 6.十分な規模と権限を持った道州による地域経営がなされることで、広域の経済文化圏が確立される
 7.国の役割を国家本来の機能に集中させることで、国家戦略や危機管理に強い中央政府が確立される
2、3、5、7については、道州制の導入とは無関係。1、4は、中央の権限を道州へ移せば、より身近になり迅速になるという。正しいと思うのだが、都道府県でなくて道州でなければならない理由にはならない。6にある「規模」は上に書いたとおりで、経済文化圏というのはなんだかよくわからない。自分には、都道府県を道州に再編するメリットがさっぱり見えてこない。


 行革推進の700人委員会、道州制導入を提言(読売新聞 5月26日)

 このニュースによると700人委員会の水野、石原両氏は記者会見で、

 日本の統治構造を全面的に変えるために道州制導入が必要。2018年をメドに道州制を導入すべきだ
と述べたとのこと。どうしようもない中央政府を改革するために、道州制という劇薬を使うべしという考え方は政治的にはありうるのだが、地方自治を考える上で都道府県の再編はあまりにもドラスティックにすぎる。


 自民、道州制区割りで4案まとめる…分割数は9と11(読売新聞 5月29日)

 区割りばかりが話題になっているように見える。29日に行われた道州制推進本部と道州制推進委員会の合同会議の議題は、区割りについてだったようだ。区割りの議論ばかりしているわけではないにしても、単独の議題になるほどの重要なテーマということ。区割り論が不毛なことも、簡単ながら道州制についてに書いた。区割りに目を奪われていると、道州という枠組みだけができて制度改革は置き去りということになりかねない。

 地域主権型道州制を高らかに謳うのであれば、同時にそれは地域主で進めるべきで、中央主導で中央から押し付けるのは全くナンセンスである。

 以上により、道州制ビジョン懇談会が纏めた中間報告が薦める道州制の導入に強く反対する。

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