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2008年6月15日

(書評)シルクロードの考古学

早稲田大学 オンデマンド出版シリーズ
シルクロードの考古学
岡内三眞 編著
ISBN978-4-88752-209-1
早稲田大学 文学学術院 2008.3

 本書は、考古学を中心としたシルクロードについての入門書。編著者のはじめにによれば、やさしい言葉で説くシルクロード史入門書で、現地で使えるハンディーなテキストとのこと。具体的には、下に書き出した目次のとおり。総論は、各テーマの下により具体的な一文を見開きで置き、6章で24篇。地域編は、関連する町や遺跡の紹介3頁と1頁のコラムの組み合わせ。小コラムを含む延べ大小50篇余りを、編著者である岡内氏のほか14人の若手研究者が分担執筆している。刊末に載るブックガイドは、参考文献ではなく関連一般書の紹介が中心。

 版形が山川出版社のリブレットシリーズとほぼ同じで、頁数も本文100頁とほぼ同じ程度。目次を見れば、具体的な掲載範囲がほぼ察せられると思うので、長くなったが細かいところまで並べた。範囲は広いが広く浅くというわけでもなく、ポイントを絞ることで可能な範囲での深さや情報の新しさも盛り込まれている。一文一文はよく書かれていて、執筆者が多い分多少の善し悪しは言えなくはないが、図版や写真も多くて十分な内容と思う。

 オンデマンドという点は、シリーズ名にされているとおり本書の特徴で、恐らくは一般書店への配本は無く、取り寄せ注文のみに対応しているということ。自分は、Abita Qurでの紹介を読んで早速にと近所の書店に注文したが、一週間かからずに届いた。


 これで終わらしても良いと思うのだが、蛇足を承知でもう少し書き足す。一つ目は、4月に史林 第91巻 第2号を読んだことの影響。この中に間野英二氏の森安孝夫氏の対する「シルクロード史観」についての再反論が掲載されている。さとうさんが博客 金烏工房で書かれている点、脱シルクロード史観ということを頭に置くと、本書では南北という言葉も多少でてはくるし、毛皮の交易やロシアも出ては来るものの、東西ラインが自明的でそこばかりに目が行ってしまうのは避けられない。考古学を看板にするのだから、もう少し中立に中央ユーラシアあるいは、中央アジアの考古学というタイトルで展開することはできなかったのか。

 もう一点は、地域篇の掲載地について。ここは細かく言うといろいろ指摘できる。内容ではなくて名前について言うと、ウルムチみたいな現代都市があり、ペルセポリスやパルミラなど歴史上の都市もある。イスランブールでなくてコンスタンティノープルなのはなぜか。カラコルムがあるがトルファンとクチャ、ホータンがない(トルファンとクチャは総論に入っている)。東西交流として考えると、パキスタン、アフガニスタン、イラク、カザフやロシア、コーカサスが含まれていない。内容の善し悪しというよりも、この構成の意味しているところに興味を持ってしまう。


 一文一文は良く書かれており、入門書として面白い内容と思う。ほぼ同じ情報量でリブレットよりも500円高い1300円。値段に見合うかどうかは、読む人に拠るところだろうか。


<目次>
Part1 総論
1 シルクロード学入門
 1 シルクロードのヒトと自然
 2 シルクロードの動植物
2 シルクロードの歴史
 1 シルクロードの夜明け
 2 漢と匈奴の抗争
 3 魏晋南北朝の南北交流
 4 唐とペルシャの交流
 5 元のユーラシア交易
3 シルクロードのオアシス都市群
 1 タクラマカン沙漠の北と南
 2 トックズサライの遺跡と遺物
 3 クチャの遺跡と仏教壁画
 4 トルファンは民族興亡の地
 5 砂に埋もれた隊商都市・桜蘭
4 シルクロード伝来の文物
 1 シルクロードの絹馬交易
 2 絹・毛織物の制作と交易
 3 ペルシャ渡来のガラスと金銀器
 4 西域の流通貨幣
 5 西域伝来の音楽と舞踊
 6 慶州と奈良・正倉院の西域文物
5 シルクロードの発掘調査と研究
 1 早稲田大学シルクロード合同調査
 2 交河故城とヤールホト古墳群
 3 漢代長城、関、烽火台
6 壁画古墳から生活を探る
 1 中国の古墳壁画
 2 壁画に見るソグド人の生活
 3 唐代壁画とキトラ古墳、高松塚
Part2 地域編
1 慶州
2 北京
3 西安と洛陽
4 カラコルム
5 敦煌
6 ウルムチ
7 カシュガル
8 フェルガナ
9 サマルカンド
10 ペルセポリス
11 パルミラ
12 コンスタンティノープル
資料

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