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2008年7月25日

(書評)タンパク質の一生

岩波新書 1139
タンパク質の一生
---生命活動の舞台裏
永田和宏 著
ISBN978-4-00-431139-3
岩波書店 2008.6

 タンパク質といっても食べ物の話ではなく、また筋肉とかの話でもない。分子生物学、あるいは生化学の分野、タンパク質の分子レベルでの話で、細胞の中でタンパク質がどのように作られるのかというもの。タンパク質がどう働くのかという面は中心ではなく、どう作られ、どう管理され、どう壊されるかというタンパク質のサイクルをミクロレベルで追ったもの。


 タンパク質というと、筋肉のような肉の塊のようなイメージだろうか。人の筋肉を作る筋繊維の主成分で、細胞と細胞を繋ぐ役割をもつコラーゲンもそのひとつであり、タンパク質は人を形作っているものの重要な要素だ。また、タンパク質には様々な化学反応を媒介する機能を持つものがあり、それらは酵素と呼ばれている。本書によれば、人の体重の2割弱がタンパク質で、体重70kgだと10kgほどだという。

 タンパク質は、20種類のアミノ酸分子が紐状に繋がってできていて、そのアミノ酸の並び方や長さの違いで数万種類のタンパク質があるという。生物の遺伝子には、そのアミノ酸の並び方が書かれているのであって、遺伝子とはタンパク質の設計図である。ここまでが本書の2章までの話で、ここから先が20年前の高校生物では習っていない自分にはとても目新しい話となる。

 アミノ酸が紐状に繋がれば筋肉や酵素ができるかというと、そうでもないというのが3章の話。紐は、決められた形に折り畳まれることで初めて正しく機能するタンパク質になるという。この折り畳むことをフォールディングといい、タンパク質の種類によっては正しくフォールディングされるのは、数分の一から数十分の一の確率であるという。

 フォールディングを助けるのもタンパク質で、シャペロンと呼ばれている。このシャペロンが筆者にとって重要な研究対象であるとのこと。シャペロンといっても色々な種類があり、フォールディングの過程もタンパク質の種類によって様々。中には筆者が「電気餅つき器」と呼ぶ器形のものがあり、中に紐を入れて蓋をしてから折り畳むのだという。

 4章は、タンパク質それぞれには細胞の内外に働く場所があり、そこまで運ぶための方法や、その途中でのフォールディングの話。5章は、寿命や再利用という話で、タンパク質には種類によって数十秒から数ヶ月の寿命があり、細胞の中に破壊と再生の仕組みがあるという。6章は、タンパク質の品質を管理する仕組みの話で、その仕組みが破綻した場合の例として、どのような病気があるのか紹介されている。


 最新の細胞生物学ものというと、詳細で複雑な化学反応が解明(あるいは仮定)されたというものを時々見かける。小さな細胞の中の複雑な科学反応と、人にはそんな細胞が60兆個もあるというスケール感が読んでいて面白い。本書もそのような一冊だが、タンパク質が作られる過程というのは自分には新しい分野で、退屈すること無く一気に読み終えた。

 細かい内容についていえば、本書は複雑な化学的部分はかなりはしょってあって読み易いのだが、説明が良くて流れをイメージし易い。また、イメージに寄り過ぎずかといって化学式沢山というわけでもなく、程よくバランスが取れているように感じた。細かい数字の齟齬や、著者の専門でない部分への疑問は多少あるものの、全230頁あまりの入門書として、また新しい情報が満載の細胞生物学ものとして十分にお薦めできる一冊である。


<目次>
1章 タンパク質の住む世界---細胞という小宇宙
2章 誕生---遺伝子暗号を読み解く・・・
3章 成長---細胞内の名脇役、分子シャペロン
4章 輸送---細胞内物流システム
5章 輪廻転生---生命維持のための「死」
6章 タンパク質の品質管理---その破綻としての病態

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