« スカイ・クロラ(感想だけ) | トップページ | チンギス・ハーンとモンゴルの至宝展 »

2008年8月 3日

契丹の旧渤海領統治と東丹国の構造(感想)

 先月発売された史学雑誌 第117編 第6号(史学会)を購入。掲載文はリンク先のとおりだが、自分の目当ては研究ノートとして集録されている澤本光弘氏の一文、契丹の旧渤海領統治と東丹国の構造---「耶律羽之墓誌」をてがかりに---

 本論は、遼金西夏研究の現在(1)に掲載されている論文、契丹(遼)における渤海人と東丹国---「遺使記事」の検討を通じての中で重要な役割を果たした耶律羽之の墓誌を詳細に検討し、東丹国についてより深く検討しようというもの。

 東丹国は、契丹によって滅ぼされた渤海国の故地を治めるために作られた契丹の傀儡国、ないし衛星国のことで、契丹皇帝の長男耶律突欲(倍)が王とされた。しかし、その耶律突欲が後唐に亡命したり、反乱が続いたりして短い期間で国としての実態は無くなったと評価されてきた。これに対して、10世紀末近くまで東丹国の実態があったとする論文が既にいくつか出されているとのこと。本論もそれを肯定している。


 本論の検証が深まれば、東丹国についての歴史が書き換えられるだけでなく、契丹国の地方制度やその成立過程についても見直されることになるのではと思うのだがどうだろうか。また、本論には当該墓誌、35文字38行、千数百文字全文とその読み下し文が掲載されている。日本ではほとんどお目にかかることのない長文の墓誌に、何が書かれているのかということだけでも面白い。

 筆者は、おわりにの中で本論は東丹国に限定した考察であることを述べた上で、今後の可能性について触れている。東丹国のことだけでなく、契丹の政治や社会について今後でのような論が出て来るのか楽しみにしておく。

|

« スカイ・クロラ(感想だけ) | トップページ | チンギス・ハーンとモンゴルの至宝展 »

中央ユーラシア史」カテゴリの記事

収集本(アジア)」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/162739/42054394

この記事へのトラックバック一覧です: 契丹の旧渤海領統治と東丹国の構造(感想):

« スカイ・クロラ(感想だけ) | トップページ | チンギス・ハーンとモンゴルの至宝展 »