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2008年10月 6日

(書評)ジャガイモのきた道

岩波新書 1134
ジャガイモのきた道
---文明・飢饉・戦争
山本紀夫 著
ISBN978-4-00-431134-8
岩波書店 2008.5
目次などがこちらから見られます

 本書は、通史的にジャガイモの歴史を綴ったというものではなく、地域にテーマ絡めた6つの章よりなり、ジャガイモの歴史や栽培、利用方法などわりと広い視点から考察したもの。

 1章では栽培種としてのジャガイモの誕生を農学、生物学的に解説し、2章でインカ帝国を中心としたアンデス地方におけるジャガイモの役割を説き、3章でヨーロッパへの栽培拡大とアイルランドの悲劇を語る。2章は、単に歴史の話だけでなく栽培技術の解説なども交えている。3章がジャガイモの歴史ものとしては、他の本でも読んだことのある展開だが、ページ数的にはさほど多くはなく概略的。

 4、5、6章は、より限定された地域での話になる。日本に触れた5章では、ジャガイモ伝来から現代までの話に触れるが、4章と6章はほぼ現代の話。4章は、ネパールのシェルパの村における生活の中で重要な位置を占めるという話。6章は、ペルーでの大きな高度差を利用したジャガイモを中心とした農業とその問題という内容。


 本書の特徴は、筆者が農学の中でも農業経営論の専門家で、フィールドワークに取り組んできたことにあると自分には思える。本書の中では、4章と6章が長期の現地調査をベースとして書かれている。

 また、筆者の主張として強調されているのが、ジャガイモでも文明を支えられるという視点。伊東俊太郎氏や江上波夫氏による、穀物生産が文明を築いたとする文章を引いて、イモでは文明は生まれないという論に異を唱えている。


 5月にジャガイモの世界史(中央公論新社)を読んだ後、もっとジャガイモの歴史的なものを読みたいと思って買ったのが本書だった。新書版200ページで、上記のように歴史的な内容は前半だけ。その点では歴史ものがまだ読み足りない。

 フィールドワークを基にした4章と6章は、歴史とは別物ながらシェルパとジャガイモという自分には全く未知のものだったこと、ペルーでの多品種を同じ畑で同時に栽培する技術がかなり驚きだったことなどとても興味深い内容だった。また、終章を「偏見をのりこえて」というタイトルをつけるなど、ジャガイモの役割の見直しを強く唱えている点について、「偏見」というほどなのかとも思うが十分に説得力があったと考える。


 ジャガイモの歴史モノはまた探さなくてはと思うが、ジャガイモの話としては全く興味深く読み終わった。旅先で読終わったのだが、その後何度かジャガイモ料理を頼み、今日の夕飯にもジャガイモを食べた。なかなか楽しい影響を残した一冊だった。

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