« カルモナ | トップページ | 1995年アジア紀行〈パタンとバクタプル〉 »

2008年10月30日

(書評)アフリカ・レポート

岩波新書 1146
アフリカ・レポート
---壊れる国、生きる人々---
松本仁一 著
ISBN978-4-00-431146-1
岩波書店 2008.12
目次などがこちらから見られます

 本書は、昨年朝日新聞を退職したという筆者が、長年の現地取材などを元に纏めたもので、2006年から08年にかけて朝日新聞紙上に断続的に掲載したレポートなどを加筆再編したものとのこと。

 1章は、農業がの国の経済を支えていたというジンバブエの話。白人敵視策をはじめとした場当的な政策と災害などに対する無策によって農業生産が大幅に減り、極度のインフレなどで経済が崩壊したという。2章は、アパルトヘイト撤廃から10年余りを経た南アフリカについて。国が警察力を中心とした治安維持に国が関心を持たなかったがために、極度に治安が悪化しているという。1、2章に共通しているのは、無策や収奪、収賄といった政府の腐敗という問題。

 3章は、アフリカ各地に進出する中国人の話。中心は、一旗上げること目論み南アフリカで小売業を営む人々。年に1万人を越える中国人が移り住み既に数十万人が暮らしているという。中国人が現地経済を握るという一面マイナスな話、利益を出すために苦労している中国人のことなどが紹介されている。

 4章は、アフリカ各地から母国を離れ、パリと東京で暮す人々の話。在日アフリカ人の4分の1がナイジェリア人という。

 5章は、アフリカ各地で腐敗した政府に代わって住人自らが自立を模索している話。6章が、アフリカ人と共に長い努力によって産業を築いてきた日本人の話。


 新聞記者らしい内容なのだと思う。とくに前半の3つの章はアフリカの負の面が全面に出た話で、血生臭い事件がでてくるなど絶望的な状況が語られている。これに対して5、6章がプラスな面の話で、それ自体はかなり感心できるものなのだが、今だ地道な努力というレベルであって、良い話はまだこれくらいなのかとも見えてしまう。

 そういった状況は、筆者が語る内容自体にはそれほど錯誤の少ない事実なのだろうと思う。ただし、一点としての話が深い分その事実がその地域や国の現状をどこまで反映しているものなのか。自分にとっては、筆者が短絡的に一面の事実を普遍化していないか反問しながら読まざるをえないというやや肩の凝るものだった。全体として、多くの事例を集めることでバランスを取ろうとしているように見えるし、そのように評価できる部分が多いものの、全面的にはその疑問は払拭されなかった。

 それでは、これからアフリカはどうなっていくのか、解決策はあるのか、また日本人はどう関わって行くべきかということについて。5章と6章がその一つの答えという意味と思われる。特に6章に登場する日本人には深い敬意を覚えるし、5章の話に光を見ることもできる。ただ、それは政府レベルの腐敗という点では、相当に小さな光りであって国としての先行きは見えてこない。筆者があとがきで「中間レポート」というあたりは、ここら辺にあるのかもしれない。その意味では、続編を期待しておきたい。


 1章に登場するジンバブエについては、本書に登場する白人敵視政策とそれに反発した欧米諸国の経済制裁というニュースをタイムリーに読んでいたことを思い出す。当時読んでいたレポートは、農産業の崩壊による飢餓に対して経済制裁が混乱に拍車をかけていることを問題視していたように記憶している。

 以来自分は、経済制裁の効果に疑問を持っている。ジンバブエのムガベ政権は、今年の大統領選挙を強引に乗り越えていまだ健在である。ではどうするのかという答えは、残念ながら自分にも無いのだが。

|

« カルモナ | トップページ | 1995年アジア紀行〈パタンとバクタプル〉 »

書評」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/162739/42957949

この記事へのトラックバック一覧です: (書評)アフリカ・レポート:

« カルモナ | トップページ | 1995年アジア紀行〈パタンとバクタプル〉 »