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2008年10月22日

リニア中央新幹線と長野県

JR東海、リニア3ルートを国交省に報告
(日経新聞 10月22日)

 2025年に首都圏ー中部圏での開業を目指すリニア中央新幹線のルート案などを盛り込んだ地形・地質調査を国土交通省に提出した。南アルプス直下を貫通する「直線ルート」を含む3ルートについて建設が可能であることを報告した。

 17年先と気が長い話ではあるもののいよいよ具体的に動き出す。とりあえず東京名古屋間ということで、東京都、神奈川県、山梨県、長野県、岐阜県、愛知県を通るルート(Google マイマップ参照)が想定されるが、この件についてニュースになるのは長野県ばかり。JR東海が押しているという直進案(Cルート)に対して、長野県と県下関係地域が諏訪経由案(Bルート)を主張していることが再三報じられている。このことは、以前リニア中央新幹線を諏訪へでも書いている。どうも治まりがわるいので、もう少し書いてみる。


リニア中央新幹線:地形地質調査 県内は「Bルート」希望
(毎日新聞 10月22日)

 上記ニュースに先だって、このニュースが報じられている。この中で長野県知事村井氏は、次のようにコメントしている。

 JR東海がリニアをまっすぐ走らせることができるとの認識を持っただけだ。県の立場を変えることなく、私企業の言うことに反応することもない
 国土交通省から、自治体と相談してルートを決めろ、と指示が出るはず。明治以来、自治体の意見を聞かずに鉄道を引っ張ったことがあるか。南アを世界遺産にする動きもある
本当にこんなことを言ったのだろうか。そもそもこの事業は、JR東海が建設するという前提ありきのこと。それを否定すれば17年後の開通もありえない。その上で「私企業の言うこと」という言い方は暴言に近い。

 揚げ足取りを少し。明治以来、自治体の意向とあまり関係なく造られた鉄道を揚げることは可能と思う。また、全国新幹線鉄道整備法(法令データ提供システム)を読む限り、「自治体と相談しろ」とはどこにも書かれていない。協議なんて必要ない・・・とは言わないが、地方の我が儘まで聞く必要があるのかどうか。「我が儘」という点については後で触れる。


 この知事のコメントが、どこまで知事の発言の核心なのか。また、長野県としてはどう考えているのか。長野県にも当然ながら公式HPがあるにも関わらず、さっぱり分からない。長野県内の鉄道についてというページには、リニア中央新幹線については外部にリンクが貼ってあるだけで、県や知事のコメントが全くない。

 違うページを探すと、信州・フレッシュ目安箱というメールなどで寄せられた意見に、県の担当者が答えたと思しきページがある。その中に、リニア中央新幹線に関係するものがいくつか見つかる。たとえば2008年5月7日回答の中には、次の様に担当者の回答が纏められている。

 法の目的の趣旨である地域振興の観点から、県としましては、今までどおりBルートによる整備が必要と考えており、(以下略)
新幹線整備法を根拠に「地域振興」だから「Bルート」というのが主旨というのは、知事の発言と方向性としてはそれほど変わらないように思う。

 (それにしても、長野県の公式見解が纏まって読める文章が、ネット上にまともに無いというのはどうかと思う)

 この新幹線整備法について。確かに同法の第一条に「地域の振興」という文言があるが、全文を「法令データ提供システム」から引用すれば次のとおり。

 この法律は、高速輸送体系の形成が国土の総合的かつ普遍的開発に果たす役割の重要性にかんがみ、新幹線鉄道による全国的な鉄道網の整備を図り、もつて国民経済の発展及び国民生活領域の拡大並びに地域の振興に資することを目的とする。
つまり「地域の振興」は、「国民経済の発展」「国民生活領域の拡大」と併記された3つの目的のひとつということ。3つのうちのひとつだけを振りかざしてもBルートを押す根拠としては弱い。ほかの2つにも「資する」のか、あるいは妨げないのか長野県は、知事はどう考えているのだろう。


 だいぶ長くなったので、続きは後日に。


<追記> (10月26日)
 当エントリーの中程に、「長野県内の鉄道についてというページには、リニア中央新幹線については外部にリンクが貼ってあるだけで、県や知事のコメントが全くない。」とありますが、10月24日に長野県のHPが更新されてリニア中央新幹線の整備促進についてというページが新しく作られています。また、同日づけの知事会見には、リニア中央新幹線関連のものが含まれています。

 これらのことも含めて、続きはリニア中央新幹線 Bルートが無理なわけリニア中央新幹線 知事の質疑応答ほかをご覧ください。

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コメント

真面目な意見

声を大にして言いたい

もういらない

東海道新幹線の大改修を如何に行うか真剣に考えられたし

鉄軌道系に拘らなければ東阪間には航空便も頻発している

莫大な費用とか大規模な自然破壊を伴うリニアよりも既存の高速道路や空港等に予算を振り向けて欲しいものであります。

投稿: I love train | 2013年8月30日 07時11分

I love trainさん

コメントありがとうございます。
ここでは、まだ自分の意見をあまり述べていませんが、私もリニアは不要と考えています。
ところが、リニアはJR東海が自力で造ると言い出したので回りも(一部を除いて)あまり文句を言われずに建設が進もうとしています。すくなくとも現時点では税金が投入されないというのがミソです(ただし駅建設は地元負担なので、やっぱり税金は使われるわけですが)。
したがってリニア建設を中止してもその分の資金は高速道路にも空港にも回る質のものではありません。ここらへんが反対の声が大きくならない理由なのでしょうね。

投稿: 武藤 臼 | 2013年8月30日 21時48分

お返事ありがとうございます。

JR東海さんも巧妙なやり方ですね。
半世紀前とは違い今は真に新しい高速鉄道が必要かと言えば日本国内に限って言えば必ずしもとは言い切れないのですが

電磁波の人体に於ける影響とか莫大な電力消費量とか南アルプスで起こるであろう大規模な自然破壊をよそにリニアは少しずつ実現の方向へ向かっている。と言う現実(>_<)

投稿: I love train | 2013年8月31日 07時18分

I love trainさん

コメントありがとうございます。
これだけの大事業にもかかわらず、交通論として本当に必要なのかという議論抜きで進んでいることに国としての深い病巣を感じます。
金勘定さえ合えば政策論は無用の長物で、あとは如何に利益を獲り、誘導するかしか考えられていないわけです。

全うに金勘定以外の論点を考えている人はもちろん皆無ではありませんが、国政レベルではほぼ皆無に思います。

みんなそんなに考えることが嫌いなのでしょうか。

投稿: 武藤 臼 | 2013年9月 1日 00時52分

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