« リニア中央新幹線 Bルートが無理なわけ | トップページ | 『密使、西へ翔る』完結 »

2008年10月26日

リニア中央新幹線 知事の質疑応答ほか

 昨日のエントリーリニア中央新幹線 Bルートが無理なわけを書いていた時は気がつかなかったが、24日に長野県のHPにリニア中央新幹線に関連する情報がアップされていた。


 情報は2つある。一つは、リニア中央新幹線の整備促進についてという関連情報を集めたページ。従来から有った促進期成同盟会へのリンク以外に、6項目8件の文書についてpdfファイルへのリンクが貼られている。とりあえずアップしたという感が残るものだが。

 内容のあるものとしては、「リニア中央エクスプレス建設促進長野県協議会」の下に「平成20年度総会における決議文(pdf)」という、今年の8月付けの同協議会名義の決議文がある。その中で「リニア中央新幹線の早期実現を図るため」として7項目を列記している。この内1と7を以下に転載するが、文書中では太文字で表現されているので、特に重要という意味だろうか。

 1 リニア中央新幹線の県内ルートはBルートとすること。なお、県内に必ず駅を設置することとし、設置にあたっては沿線市町村の意見を踏まえて検討すること。
 7 今後のリニア中央新幹線の推進にあたっては、沿線自治体と十分調整すること。
「Bルートとすること」という所についてJR東海、あるいは国が異を唱えたら協議会はどう対処するのだろう。


 もう一つは、10月24日付け知事会見の中にあるもので、信濃毎日新聞記者牛山氏との質疑応答を記録したリニア中央新幹線について(1)と、朝日新聞記者杉浦氏との質疑応答を記録したリニア中央新幹線について(2)が載っている。以下気になるか所についてコメントするが、引用は知事の回答のみ最小限しかしないのでリンク先も参照されたい。

 まず、信濃毎日新聞記者との応答部分。JR東海による報告についてどう受け止めているか、という質問に対する答えについて。

 (前略)BルートかCルートかになるかなどというのは、長野県と、無理に言えば山梨県くらいしか関心がない、(中略)南アルプスは世界遺産に登録しようというような志を持っていまして、一説によりますと現在も隆起しているのだそうですね。そういうところにリニアを通すということはずいぶん大変なことではないかと。(以下略)
 前段について、ルートについて長野県と山梨県以外に関心が有る人はいないということだろうか。下記の別の応答の中で「メールでもずいぶんご批判をいただいており」とあるから、批判を各地から受けているのではないか。また、このブログではこの一週間でリニア関連のページへのアクセスが特に多く、それでいて長野、山梨からのアクセスがそれほど多くない。関心の(深さは不明だが)広さは物語っているように思う。

 後段について、JR東海は22日に国に提出した報告書の中で南アルプスのトンネルについて、「建設可能と判断した」(北海道新聞)と報告したとのことだが、知事は報告書に納得していないということか。


 次に、駅の設置についての質問に対する答えについて。

 長野県は大県ですから、二つでも三つでもいいのではないですか。(以下略)
 まず、長野県に3つ造ることの難点は昨日書いた。2つでも同じと思っている。

 「長野県は大県」と言っていることについて、面積の広い県という意味で大県といっているのなら有効な反論ではないが、人口も加味した場合を考えてみる。長野県南部、諏訪・伊那・飯田地域の人口は、今年9月現在で57万人、松本、塩尻に木曾を加えて90万人(長野県のHPより)。これに対して東西に長い県に東西に東海道新幹線が走る静岡県の総人口が380万人(静岡県のHPより)。静岡県には新幹線の駅は6つある。人口を比べる限り駅3つは多いと見る。


 次は、Bルートという主張は長野県のエゴだという誤解を払拭させることについての考えは、という的を外した質問に対する答えについて。

 ガバナーメールでもずいぶんご批判をいただいております。(中略)東京と大阪だけ結んだら、あるいは東京、名古屋、大阪だけスピードを出して走ったらそれですべてよろしいのだと、(中略)そんなの飛行機で飛べば良いではないか、その通りなのです。(中略)一番大事なことは沿線が影響を被るのです。その影響が甘受できる程度のものであるためには、どのような利益がその地元に還元されるのかということがなければいけない。それだけです。
 「東京と大阪」以下は、東京、名古屋、大阪を早く結ぶためなら飛行機で十分だという意味のようだ。しかし、東京大阪間として捉えても、それは空港に近い一部の人についてのみ当てはまること。リニア新幹線が飛行機より圧倒的に早く結ぶことを目指したものであることを、理解されていないということだろうか。加えて、JR東海がリニア新幹線を東海道新幹線のバイパスと位置づけている(JR東海のHPより)ことも理解されていないようだ。

 「一番大事なことは」以下について。これは、意図的にはぐらかせているのだろうか。Cルートが通る予定の飯田については、駅を造ることは十分に可能だと思うが、その場合諏訪や伊那は沿線ではない。通過する沿線には利益をという主張はある程度は理解できるが、Bルートを主張する理由にはならない。長野県としての協力・・・と言われるかもしれながい、程度の問題としてそれは拡大解釈すぎると自分は考える。


 次は朝日新聞記者との応答部分。駅関係について金銭的な部分はどうか、という質問に対する答えについて。ここは、財源についてという重要な所という意味もあるが、何が言いたいのか漠然としているので全文引用する。

 今、その5兆1千億で敷設いたしますと言っているけれど、これについてだっていろいろな議論があるのです。JR東海は、東海道新幹線という大変重要な高速交通体系を中心にしてできあがった会社でありまして、そこで得られるメリットというものを大いに享受して、JR中央3社の中でも非常にいい業績を上げている訳です。だから、東海道新幹線のオールタナティブ(alternative)としての、代替路線としてのリニア新幹線を自前でやりたいというような財務能力を得た。これについては、純粋民間会社ではないでしょうと、もともとは国民の負担において、国鉄というものが維持されて、それを民営・分割化するプロセスで、どれだけ多くの国民の負担を置き去りにしてきているのかという議論があります。そういうような問題も含めて、総合的に経済的な議論をしなければいけないという問題だと私は思っています。
 結局のところ、JR東海は大きな利益が上がっているのだから、国民に還元しろと言いたいのだろうか。それが正しかったとしても、それを長野県に特別に回す理由にはならない。財源問題もはぐらかしたいという意図なのだろうか。


 質疑応答を通しての感想を少し。まず、駅を設置する条件、リニア新幹線の位置づけなど、自分と認識が違う所が見えてきた。Bルートの理が見えてこない上に、財源問題に具体的に答えていないことも不満が残るし、焦点がぼやけて何が言いたいのか分からない所もある。結局の所、自分のBルートは無理という考えは覆らなかった。これを読まれたほかの方はどう考えるだろうか。

 余談だが、信毎の記者の不甲斐無さが腹立たしいほどだが、この程度なのだろうか。

|

« リニア中央新幹線 Bルートが無理なわけ | トップページ | 『密使、西へ翔る』完結 »

ニュース(国内)」カテゴリの記事

コメント

本当に仰るとおりだと思います。目的を考えてもCルートしかありえない。ちんたら沿線に停まる目的で作るのではないのですから。長野が何を勘違いしているのか分からないが、そもそもこの県は、オリンピックといい長野新幹線といい県の経済に役立て、活用しているとはとうてい思えません。こんなことをまだ続けるつもりなのだろうか?かつての教育立県?が泣くと思う。

投稿: A熊 | 2008年10月26日 05時46分

A熊さん、こんにちは
コメントありがとうございます。

長野新幹線を生かしきれていないのではないか、
その点で前例に学べているのか?
というのはやっぱり出て来る疑問ですね。

今でも諏訪から東京まで2時間ちょっとで行けます。
これ以上早くしたら、秘境のイメージがまったく無くなって観光地としは詰まらなくなりますね。

それにしても、知事はどこまで分かってとぼけてるのか、分かってないのか、聞いてみたいところです。

投稿: 武藤 臼 | 2008年10月26日 11時16分

ども、始めまして。
一連のエントリー、興味深く読ませていただきました。
正直、長野県知事はアホかと思いますね。こんな人が知事なんて、長野の人はどう思っているんでしょうか・・・。
僕は名古屋の人間ですが、特別名古屋を通って欲しいとは思いませんけどね。
東京大阪間を最短で・・・という意見もあるらしいんですけど、それが国民大体数の意見なら納得します。
長野県民の皆さんもそうなんじゃないかなと思いますけどね。(まあ、現実的に名古屋を飛ばすことに利益があるとは思えませんが)
ということを踏まえて言わせていただくと、非常に一部の利益しか考えてないナンセンスな意見といわざるおえないと思います。
そこまでごねるなら、静岡経由で作った方が良いと思います、その方が需要もあると思いますし。
JR東海は、将来起きると思われる大震災や老朽化を懸念して、私財を投げ出して早期開通を考えているというのに、長野県知事の発言は、地方公共団体の長としては、非常に視野の狭く本当に失望されられました。

長文失礼しました。

投稿: kiichi | 2008年10月26日 12時35分

知事は正しい。
なんとなれば、大圏コースで考えれば東京-名古屋を結ぶ最短コースは茅野を通るからです。

・・・・嘘です(笑)。

そもそも論からすると、リニア新幹線の必要性まで戻ってしまうんですけどね。JR東海の皮算用的には採算取れるんでしょうけど。

それよりは、首都圏=中京圏=阪神圏を結ぶ長距離トラックをある程度代替してくれる、リニア貨物線を作ってくれた方がナンボか日本のためになると思うんですが。

http://www.mlit.go.jp/seisakutokatsu/census/8kai/houkoku8/rep8-3302.pdf
の「主要地域間別輸送機関分担」とか見るとそう思います。

長距離の大型トラックが減って一般車両と一緒に走ることが減れば事故も減るでしょうし、東海大地震に対しるバックアップにもならない第二東名なんて無駄なものを作らなくて住むと思うんですがね。

私企業であるJR東海に言うことではないですが、国交省ならこういう指針を示しても罰は当たらないよなぁと。貨物線ならノンストップでまっすぐ通しても誰も文句言わないだろうし。

個人的には1時間40分余が40分程度になる(しかも既存の新幹線よりずっと高い値段)のなんて、大してありがたみも必要性も感じないんです。

投稿: 蒸しぱん | 2008年10月26日 18時58分

kiichiさん、こんばんわ
いらっしゃいませ。
なかなか上手く纏めきれておりませんが、お読み頂きありがとうございます。

>JR東海は、将来起きると思われる大震災や老朽化を懸念して、

この点は、評価として見かけたことが有ります。JR東海の本意どの辺にあるか自分にはわかりませんが、十分にありえる話と思ってます。
知事は、このことを知らないのか、知らないフリをしているのか。少なくとも念頭に置けばあんな発言にはならないと思うのです。


>長野県知事の発言は、地方公共団体の長としては、非常に視野の狭く本当に失望されられました。

中央政界に長く身を置いていた知事が、その時代そのままの感覚で明言を避けながらはぐらかして、有利な取引を探っているとか見えなくはないですが。そういうのが戦術として今でも有効かどうか。少なくともネット上で情報を探し歩かれている人達には、不誠実と映るでしょうねえ。

投稿: 武藤 臼 | 2008年10月26日 22時06分

蒸しぱんさん、こんばんわ
だいぶ寒くなりましたね?

>そもそも論からすると、リニア新幹線の必要性まで戻ってしまうんですけどね。

大阪まで開通したとして、東京起点駅が今より不便になる、料金が高くなる、東海道新幹線が赤字になる、新大阪駅で乗り換えを強いられる、そこまで早くなってメリットがあるのか。そもそもシステムとしてリニア新幹線は経営が成り立つのか、などなど今でも突っ込み所と思います。
メリットもいくつか上げられると思いますが、自分的にはリニア新幹線が開通すると北陸新幹線を敦賀から米原へ繋ぐことができるという点はちょっと良いなと考えてますが。


>リニア貨物線を作ってくれた方がナンボか日本のためになると思うんですが。

モーダルシフトということが叫ばれてだいぶ経ちますが、進んでないんですねえ。トラック運転手受難なんてのが数年前にニュースになりましたが、脱トラックへは向かわないもんなんですね。
やっぱり、スイスがやってるみたくトラック通過禁止とか、ある程度強権を発動しないと進まないんでしょうか。排出権取引よりはまともな政策のような気もします。


投稿: 武藤 臼 | 2008年10月26日 22時09分

思いのほかいろんなところで物議をかもしていますねw

JR東海の本意は、単純明快で企業存続の為だと思います。東海道新幹線の保険であり、飛行機利用者の取り込みも考慮してるんだとおもいます。

料金は現状の新幹線の1000円程度と上乗せで済むと言われています。その程度なら利用する人は結構いると思いますけどね。

JR東海の僕のイメージは、非常に保守的というかコストに見合うだけど利益が約束されていないと殆ど動かないというイメージがあります。
なかなか取引に応じてくれるような相手ではないとは思いますが、今後の動きに注目ですね。もし、JRが折れるようなことがあったら、株主総会で叩かれて、株も暴落するでしょうが・・・。

投稿: kiichi | 2008年10月27日 00時45分


kiichiさん、こんばんわ

どのくらい世間で話題になっているのか、自分は今イチ掴みかねているのです。当事者である人達の目に触れなければあまり意味がないですが、今後もっと大きなリアクションがあるんでしょうか。

おっしゃるように、JR東海が迂回ルート分の建設費を半分でも持つということはありえないでしょう。

JR東海についてのイメージは、自分も微妙ですね。北海道、四国、九州に比べて余裕がある分、ソフト的なサービスがあまり向上していないという感じです。東日本、西日本についても同じで、もっと良くなるはず・・・と思ってるんですけど。

投稿: 武藤 臼 | 2008年10月27日 21時00分

始めまして。
長野から書き込みさせていただきます。
まあ県内に利益を誘導する、という一点においては知事の行動も間違ってはいないと思いますが、JR東海さんからすれば国内線旅客機を相手にしなければならないわけで、知事の発言は到底受け入れられないことだと思います。ま、相手にしないでしょうけど。
県内でも温度差はありますね。
私に言わせれば飯田に駅を作ってもらえるだけでもありがたいくらいで(まあその駅を利用することは無いでしょうが)、さらに線路を曲げて2駅追加なんて、いい加減にしとけよって気分なんですが。

投稿: 幸 | 2008年11月27日 02時03分

幸さん、こんにちは
コメントありがとうございます。

この件について県民が纏まるとははずもなく、その意味で知事が何を考えて(あるいは考えずに)一連の発言をされているのか多少興味があるところです。
大した読みがないのであれば、今後右往左往しながら言うことが変わっていくかもしれません。


>まあ県内に利益を誘導する

今の中途半端な地方制度では、そういう首長が評価されてきたのは分かります。
それで評価された市町村長も沢山いますし、長野県に限る話でもありません。

しかし、何でもいいから金を使う・・・という時代では既になく、否、それが幻想だったからこそ今の地方の構造的な問題の一端があるわけです。
利益誘導、霞ヶ関詣でが首長の仕事という時代は、少なくともそれがメインとなる時代は終わらないものかと思います。

長野県にもそのことを実戦している事例が沢山あります。
基本は、下から変えていくことではないでしょうか。

投稿: 武藤 臼 | 2008年11月27日 08時12分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/162739/42906186

この記事へのトラックバック一覧です: リニア中央新幹線 知事の質疑応答ほか:

« リニア中央新幹線 Bルートが無理なわけ | トップページ | 『密使、西へ翔る』完結 »