« リスボン | トップページ | (書評)ジャガイモのきた道 »

2008年10月 5日

観光圏

“安・近・短”から脱却、滞在型観光目指す16か所認定
 (読売新聞 10月4日)

 近接する観光地が連携して、2泊3日以上の滞在型観光を目指す「観光圏」として、観光庁は(中略)16か所が国土交通相の認定を受けたと発表した。
 このうち14か所に対し1000万〜2500万円の補助金を支給する。今年度の補助額は総額2億5000万円。
 滞在型を目指すという考え方は、それほど新しいものでもないように思うし、16か所だけと限定する必要があるのかとも思う。目に見えた実例が必要ということなのか、大型の補助事業で対象を絞りたかったのか。また、このニュースの事例紹介部分で
 県をまたがる二つの温泉宿を連泊すると2泊目が半額
とある。自分の感覚で連泊は同じ宿に続けて泊まることだが、同じエリアとはいえ滞在というイメージが随分広い。少し掘り下げてみる。


観光圏整備実施計画の認定及び観光圏整備事業の補助地域について
 (観光庁 10月3日)

 この中で観光庁では、「魅力ある観光地の形成」のために、「観光圏の整備による観光旅客の来訪及び滞在の促進に関する法律」に基づくとして、16エリアを対象に4つの「総合的な支援」を行うとしている。その一つ目が、

 観光旅客の来訪・滞在の促進に効果や成果の見込まれる事業に係る補助金の交付(補助率上限40%)
というもので、直情的にバラマキかと思ってしまう。今年度の事業であるから、比較的短期に集客を計ろうというものが多くなるだろうし、玉石が入り交じると予想する。


 ここで出てきた「観光圏整備法」について、以下の解説の中に「観光圏のイメージ」という模式図がある。

 観光圏の整備による観光旅客の来訪及び滞在の促進に関する法律
 (観光庁)

各市町村がそれぞれの特性を生かして役割分担をしながら、観光圏全体の魅力を向上していこうということなのだろう。これは、今まで個々に取り組まれてきたことを模式化したもので、総体としての魅力向上は意義があることと思う。

 この内、宿泊施設という点について上記模式図には「宿泊の魅力向上」として、「泊食分離の導入」「共通入湯券の導入」「宿による宿泊客への着地型旅行商品の販売」の3点があげられている。この他にも下記の文書の中の三と四で「もてなしの質的向上」「地産地消等の創意工夫ある取組」「地域文化の展示」「体験・交流の場の整備」「外観の統一感を創出するための外壁整備」「個人・グループ客へ対応した客室整備」といった事があげられている。

 観光圏の整備による観光旅客の来訪及び滞在の促進に関する基本方針(pdf)


 一面そのとおりなのだが、いずれも既に先進的な温泉地で長年取り組まれ、遅れをとった温泉地が追いかけるようになって何年にもなる。つまり、既に進行しているものを確認しているのに過ぎない。その上で現時点で決定している具体的は事業は、上記「総合的な支援」の4つ目に示された宿泊施設のハード整備への融資制度のみのようだ。

 (宿泊施設の整備に係る貸付制度の創設(pdf))


 この宿泊施設の話の中に「泊食分離」というのが出て来る。先月スペインを歩いてきた自分にはわりと実感が持てる。自分の場合、一泊25から30ユーロのシングルを目処に泊まり歩いていたので、夕食は全て外食「泊食分離」だった。スペインにもパラドールという食事も楽しみとする観光ホテルがあるそうだが、それ以外は基本は外食だろうと思う。なによりも外食が楽しい。大きな街しか回っていないが、そのどの街にも大きなオープンカフェがあり、夜遅くまで賑わい、料理も酒も美味しくて楽しかった。

 そんな自分が思い浮かべる「泊食分離」は、京都、鎌倉といった都市型の観光地である。上記の「観光圏のイメージ」模式図の「宿泊の魅力向上」に写真が2点添えられているが、入湯手形は熊本県黒川温泉のもので、いわば地方温泉地をイメージしているということだ。黒川温泉には30軒近くの宿があるが、素泊まりを基本とした宿は一軒のみ。そもそも黒川には夜も賑わう食事処が限られる。おなじ九州の有名温泉地由布院には100軒以上の旅館ホテルがあるが、素泊まり外食を基本とした宿は5軒ほどしかない。

 温泉旅館は、そもそも料理もウリ。だからなかなか「泊食分離」が馴染まないし、外食施設との連携という問題もついてまわる。ただ「泊食分離」がいらなとは思わない。旅館飯はそれなりに高くつく。予算を考えて良い温泉と普通の部屋があれば、夕食はラーメンでも良いと思うこともある。連泊した時には、二泊目は違う食事をと思うこともある。滞在ということの上に、旅のスタイルの多様性を考えれば「泊食分離」は都市でなくても現実的な問題となる。


 観光庁の施策について次の二つの点を問題としてあげてみたい。ひとつ目は、「長い目で見れているのか」ということ。黒川も由布院も数十年という時間の中で築かれてきた温泉地である。加えて観光圏を考えると、メリットなどの点で滞在促進地区が優越することが想像できる。根気づよく努力を続ける長い時間が必要である。

 もうひとつは「多様性」ということ。その点は「泊食分離」だけでなく、旅の時期や行き先、長さなどなど人それぞれで良いはずである。その点では、以下の内容にはズレを感じる。

 キーワードは「プレミアムデスティネーション」、観光立国戦略会議WGが構想
 (観光経済新聞 10月4日)

質の高さというのは、一面正しいと思うのだがどうもしっくり来ない。


茨城県、県央---県北で広域観光圏 集客の起爆剤に
 (日経新聞 10月1日)

 こんなニュースもある。単に集客増の種になる起爆剤程度と言ってしまったら、どちらにとってもおいおいと思う。金と人を注ぎ込んだだけで無駄だった、というのは勘弁してほしいのだが。

|

« リスボン | トップページ | (書評)ジャガイモのきた道 »

ニュース(国内)」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/162739/42691608

この記事へのトラックバック一覧です: 観光圏:

« リスボン | トップページ | (書評)ジャガイモのきた道 »