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2008年11月 8日

(書評)青花の道

NHKブックス 1104
青花の道
中国陶磁器が語る東西交流
弓場紀知 著
ISBN978-4-14-091104-4
日本放送出版協会 2008.2

 ユーラシア史、とくに海を中心とした東西交流史の主要なアイテムとして登場する陶磁器。陶器と磁器の違いとか青磁や白磁がどんな物かくらいまでならなんとか分かる程度。本書を読むまで染め付けと青花が同じ物であることも理解していなかった。陶器屋の店頭で茶碗を眺めるのは好きだが、纏まった本を読んだことがなかった。

 本書は、書名を見て一度読んでみようと衝動買いした一冊。陶磁器の美術、考古、歴史について長年研究されてきた筆者が、その成果を一般書として纏めたもので、白磁にコバルトによって絵付けされた青花磁器を中心に、中国陶磁器の広がりを追っている。


 話は、ポルトガルにある王宮の「磁器の間」の天井を埋めた青花磁器から始まる。まず陶磁器についての研究史、青花磁器の起源、代表的な産地である景徳鎮の歴史と青花磁器を中心とした陶磁器の歴史に触れる。ついで、エジプトで発掘された大量の青花磁器、トプカプ宮殿のコレクション、琉球の青花磁器などの伝世品、出土品の内容や由来の話。そして、世界各地の沈没船から引き上げられたもの、草原地帯の遺跡から出土したものの話へと進み、世界を巻き込んだ青花磁器の発展とその発展的な終焉で終える。

 時代的には、唐の末期から現代までの1000年以上、場所的にもユーラシアの東西を中心にアフリカ、アメリカ大陸までに話が及ぶ。また、産地としては中国が中心で、景徳鎮だけでなく越州、定、龍泉、磁州、耀州などにも触れている。シリーズの規格どおりの一般書で、本文も250ページとそれほど厚くはないが扱っている範囲は結構広い。


 読み終わって思い返してみると、雑然とやや広い風呂敷に整理しきれていない内容という印象が残るが、政治抜きの文化・経済史の本としてかなり面白かった。内容的に一般書なのだが、陶磁器の種類については青花磁器以外については具体的な説明が少なく、カラー写真は最小限で、モノクロ写真もさほど多くなく、本書に度々登場する釉裏紅磁器とか紅緑彩磁器といった陶磁器の種類がどんなものなのかはさっぱりわからない。

 とりあえず字面からなんとなくイメージしながら読んでいたが、不思議とそれがあまり不快でなかった。まったく自分の主観なのだとは思うが。繰り返し出てきたので、用語としてだいぶ覚えてしまった。ネットを開けばいくらでも調べられることでもあり、それはそれで良いのかもしれないと思う。


 ところで、本書で言うところの「海のシルクロード」の向こうを張った「陶磁の道」と言う言葉は、何年か前にはテレビで聞いたように思うが、今も普通に使われているのだろうか。読後のイメージとしては、「海のシルクロード」よりもしっくりくるのだが。

 細かい部分では、ユーラシア周辺ばかりでなく南アフリカやメキシコにまで及ぶ話は自分には目新しく、世界各地の沈没船について触れた8章はとくに面白かった。


 扱う範囲と内容の広さのわりに読んでいてさほど重いとは思わなかった。また、沢山登場する陶磁器用語についての説明は、一般書というにはかなり不親切なのだがそれが不快ではなく、繰り返し引用されることで目にだいぶ焼き付いた。なんとなく陶磁器の世界に踏み入った気分になっている。

 本書の文章の力なのかどうかいまひとつ判断しかねているが、今まであまり感心のなかった世界について、もうちょっと踏み込んでみとうという気を起こさせた不思議な一冊だった。おかげで、先日立ち寄った博物館では他の展示そっちのけで青磁や白磁に見入ってしまた。


<目次>
 序章 王宮の天井を埋め尽くす青花磁器
 1章 「陶磁の道」研究のパイオニアたち
 2章 青花磁器の誕生
 3章 元代の景徳鎮窯
 4章 明代の景徳鎮窯
 5章 青花磁器は海を越えて
 6章 スルタンの中国陶磁コレクション
 7章 琉球王国に下賜された青花磁器
 8章 海に眠る中国陶磁器
 9章 草原世界へ広がる青花磁器の道
 10章 青花磁器のチャイナ・ブーム

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