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2009年6月26日

リニア中央新幹線 飯田市議会で決意案

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 飯田・伊那両市議会が「リニア決議」 立場の違いあらためて
(信濃毎日新聞 6月23日)

 飯田市議会と伊那市議会は6月定例会最終日の22日、それぞれリニア中央新幹線の早期実現に関する決議を行った。(中略)両地域の立場の違いをあらためて示す内容となった。

 何かを作るための予算案を決議するのではなく、推進することを決議することにどんな意味があるのかピントこない。

 飯田市議会のサイトを見てみると、リニア中央新幹線の早期実現及び飯田駅設置実現に関する決議案可決されましたと題して、22日に可決されたという決議案が載っているので検討してみる。


 この決議案は、次の一文から始まる。

 リニア中央新幹線は、新たな国土の大動脈として、21世紀の我が国の社会・経済を支え、国際競争力ある日本を形成するとともに、国民のゆとりある生活の実現に大きく貢献する社会基盤であり、国家の浮沈を懸けたプロジェクトとして取り組まれるべきものである。
 これに続く部分を以下に箇条書きする。

 ・国家的プロジェクトとしての意義と地域貢献への意義という両面から検討されるべき
 ・飯田市では、35年間、民と官とが一体となって活動を展開し、実績を積み重ねてきた
 ・リニア中央エクスプレス建設促進長野県協議会が組織され、一員として共に運動を進めてきた、今後も県と一体となって進めていくべき
 ・リニア中央新幹線は、日本に必須のものであり、早期に実現して、すばらしい国家と地域を子孫に継承していきたい
 ・永年の悲願であるリニア中央新幹線の早期実現及び飯田駅設置について、改めてその決意を表明する

 これらの内容を踏まえてた上で次の2点を「決議する」とのことだ。

 1 リニア中央新幹線を早期に着工し、一日も早い実現を図ること。
 2 リニア中央新幹線飯田駅を設置すること。

 新幹線のような交通網が発達すると国際競争力が上がり、すばらしい国ができるという。有れば便利かもしれない。では、無かったら駄目なのだろうか。アメリカ、EU、インド、中国のような広域国家はどうすればいいのか。日本は、高速道路、新幹線だけでなく一般道路もそれなりに整備が進んでいると思うのだが、それでも「陸の孤島」とか「取り残される」といった言葉を目にする。いったいどのくらい便利になれば安心できるのか。

 交通の不便さを嘆き、便利さを求めることで、いったいどれだけの人が納得できるのだろうか。少なくとも、自分には空疎な絵空事にしか見えない。


 リニア中央新幹線が開通したとして、飯田市には何が起きるのか。

 東京へ30分以内なら、高級品の買い物は地元ではなくて銀座へでも行くのではないか。移動ストレスが少なければ、観光客が飛躍的に増えるかもしれない。では、箱根や日光よりも便利な飯田に観光客を呼び込む魅力があるのか。川本喜八郎人形美術館は、入館者が倍増するかもしれない。遠山、下栗といった秘境目当てなら、今まで躊躇していた人が泊まりに来るかもしれない。

 地価が安ければ、確かに東京や名古屋まで通勤する人がでてくるだろう。しかし、それはあくまで副次的なものであって目的にはなり得ない。「少子高齢社会・人口減少社会」というが、飯田市の隣には下條村という少子化対策をして全国に名を馳せた村がある。飯田市には、数百億円の駅建設費を考える前にすることが有るように思うのだが。


 それにしても、リニア中央新幹線ができるとどうなるのか分からないことばかりである。Cルートが実現したとして、「リニア新幹線の南アルプス貫通ルートを予想・検証してみる(ケンプラッツ)」のような見積もりがある。いくつかの前提条件によるとはいえ、飯田駅が便利なところにできることすら保証されていない。


 飯田市議会は、「運動を進めてきた」というが、議会や飯田市のサイトを見ても疑問に答えてくれるものは何も見つからない。

 飯田市のサイトで「リニア中央新幹線」で検索をかけると、リニア中央新幹線に関わる提言への回答が8件確認できる。これは、同サイトへ提言を行うフォームやらまいか提言(政策提言)へ投稿されたものへの市からの回答である。この回答を見てみると、提言されたことに正面から答えようという姿勢が見られ、長野県の信州・フレッシュ目安箱への回答よりも格段にマシある。

 しかしながらその内容を抜き出してみると、

 高速交通網や道路基盤が決して整備されているとはいえない当地域にとりまして、リニア中央新幹線が実現することにより、
 ・地域振興と産業の活性化による経済的な自立や生活圏の拡大が図られる
 ・三大都市圏への通勤・通学が可能になるなど、多様なライフスタイルの実現が期待される
 ・当市が推進するUI(結い)ターンの促進につながる
 ・地域を担う子供たちや地域の持続的な経営といった観点からも必要

なのだという。だから

 リニア中央新幹線の早期整備と飯田駅設置の実現を目指し、長野県を含む関係自治体の協力のもと、様々な運動を展開しています。
といったもの。近くなれば、東京への従属が強まり、名古屋の生活圏に飲み込まれるかもしれない。

 飯田市のサイトには、これ以上に具体的な情報はない。ひょっとしたら、以前に予算をかけて具体的な試算をしているのかもしれない。しかし、リニア新幹線とは何かがより問われている今、そういった情報がネット上に無いということは、何も無いということに限りなく近い。

 これだけの情報で、場合によっては数百億円ともなりそうな駅設置費用の拠出を、飯田市民は市議会に委ねることだできるのだろうか。


 自分が知っている飯田市の姿は、今から15年も前の90年代初期のもの。バブルが崩壊し始めた当時、ロードサイドへの店舗展開が進んで飯田駅周辺は空洞化が進んでいた。それ以前を知っているという先輩は、グラスを傾けながら寂しくなったと嘆いていた。リニア中央新幹線の駅が飯田にできれば、街へ活気が戻ってくるのか、衰退に拍車がかかるのか。全長1kmにおよぶ駅構造物が市街を縦断すると街はどう変わるのか。天竜川の河岸段丘を利用して、市街部分は全線地下に設置するという選択肢があるのかもしれない。

 いくらでも疑問が湧いてくるのだが、メリット、デメリットを比較すること抜きで、建設推進を唱えるということは、即ち造る事が目的であって造った後までは考えていないと言うに等しいのではないか。市議会として推進決議をする前に、積極的に独自に様々な予測を行う為に、補正予算を決議する方がよほど前向きである。その結果としての数字を持ち合わせていれば、JR東海に対しても、周辺他地域や県に対してもより優位に立つ事ができるし、なによりも市民に対して信頼を得られるというものではないだろうか。

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