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2009年8月16日

リニア中央新幹線 需要予測公表 その2

<今までのエントリー>
 リニア中央新幹線を諏訪へ
 リニア中央新幹線と長野県
 リニア中央新幹線 Bルートが無理なわけ
 リニア中央新幹線 知事の質疑応答ほか
 リニア中央新幹線 Bルートが実現する可能性 その1
 リニア中央新幹線 Bルートが実現する可能性 その2
 リニア中央新幹線 2008年12月の動き その1
 リニア中央新幹線 2008年12月の動き その2
 リニア中央新幹線 2009年1月の動き
 山梨でリニア学習会
 リニア中央新幹線 2009年5〜6月の動き
 リニア中央新幹線 ルート別の試算公表
 リニア中央新幹線 飯田市議会で決意案
 リニア中央新幹線 2009年上半期 長野県知事会見より その1
 リニア中央新幹線 2009年上半期 長野県知事会見より その2
 リニア中央新幹線 需要予測公表 その1

 その1に引き続いて、公表されたリニア中央新幹線 需要予測に関連するニュースなどを参照してみる。


 知事「さらに情報の開示を」 リニアルート需要予測公表
(中日新聞 7月22日)

 村井仁知事は「さらに情報の開示を求めたい」と従来通りの見解を示した。(中略)「数字の根拠は十分に吟味しないといけない」と話し、情報共有を進めていく姿勢を強調した。
 伊那市の小坂樫男市長は「Cルートありきの数字だと思う」と反発。「需要量などの計算方法もよく分からない。まずは(6月に示された)建設費の積算根拠を示してほしい」とJR側に説明を求めた。

 長野県知事のコメントは、下記知事会見を見ても分かる通り従来からの主張を繰り替えしただけのもの。

 伊那市長のコメントは、JR東海に反発したものとしては分かり易い。JR東海が試算に用いた「四段階推定法」には様々な仮定、パラメーターがあり、その点で結果を想定範囲内に納めるように操作することは、手段としては可能だろう。しかしながら、伊那市長の発言は何か具体的な数字を元にしたものとは思われず(下記参照)、批判の為の批判と思われても仕方が無い。

(注)
 伊那市長は、今年6月の定例記者会見でBルートとCルートの建設費の差額の問題について、

 金額が不明確で実際にはBの方が安かもしれない。
平成21年6月定例記者会見
と発言しており、具体的な数字を持っているとは思われない。


◆◆◆
 JR東海の試算公表後、最初となる長野県知事の7月24日の知事会見録より、リニア中央新幹線について(1)について、以下要約の上検討してみる。質問者はNHKの記者。

【記者】JR東海の試算ついてデータ開示がもっと必要だと考えているのか。

【知事】事実とロジックを押さえて議論を積み重ねることが大切。結論だけ言われても、根拠を押さえなければ共通の議論にならない。情報の共有が不十分。JR東海から結論だけ出てきて、それについて尋ねられたから「まだまだ」と言っている。

【記者】JR側は、促進協議会への説明を早く行いたい意向を示しているが、知事の発言はその前に説明があるべきということか。

【知事】いろいろなやり方がある。長野県がJR東海から話を聞くのも一つのやり方。各地域との会合を設定してそこで開示されることもあり得る。関係のある人たちにある程度満足のいくような情報の開示が行われるべき。その水準がまだ不十分と認識している。

【記者】建設費用についても、改めて十分な説明が必要か。

【知事】それはそうだ。私どもは専門家でないので、工事をする人が必要とするような情報が欲しいとは言えない。敷地を提供する立場からは、要求していい情報があるのではないか。


 JR東海の公表を受けて、数字など新しい情報に対する見解を期待していた自分には、かなり肩透かしといった内容。記者がそれしか質問していないとことにも疑問が残るが、JR東海がもっと情報を出すべきという従来の主張を繰り返しただけで新しい内容は無い。

 JR東海からの情報が不足していることには自分も異存ないものの、ではどこまで示せば満足できるのかを考えると、前提条件に大きな差があるだけに、満足は永久に得られないのではとも想像してしまう。


◆◆◆
 リニアBルート「複数駅が前提」 村井知事
(信濃毎日新聞 7月29日)

 村井知事は28日、(中略)諏訪・伊那谷回りのBルートについて「当然(県内)複数駅を前提にしている話だ」と述べた。
 とりたてて新しい話ではない。JR東海が主張する「1県1駅」を是として、県内唯一の駅を中央に置くか南に置くかという議論があり得るとはいえ、今の長野県でそれは無理だろう。


◆◆◆
 リニア試算 Bルート乗降1万5千人 JR「C」は7千人
(信濃毎日新聞 8月5日)

 JR東海は4日、リニア中央新幹線のルート別の工事費など、6~7月に示した一連の試算結果に関し、県が出していた疑問点への回答を示した。この中で、県内に設けられる中間駅の予想乗降者数を初めて提示。諏訪・伊那谷回りのBルートでは1日当たり1万5千人だったのに対し、南アルプス貫通のCルートは同7千人とした。
 中間駅は両ルートとも県内1カ所を想定。具体的な地点は示さなかったが、Bルートは「諏訪地区から上伊那にかけて」、Cルートでは「飯田市付近」とし、それぞれ中央線と飯田線に接続することを前提とした。また、東京-名古屋間に「1県1駅」、計4駅を設けた場合、各駅停車型の所要時間はBが79分、Cが72分かかると想定。直行型との差はともに32分となる。
 一方、県はBルートに2駅を設置した場合の輸送需要量も求めたが、JRは「経費がかさみ、ダイヤ編成に支障が出る」などとして示さなかった。また、CがBを5800億円上回るとした建設費(車両費を除く)の試算についても積算単価など根拠の開示を求めたが、詳しい説明はなかったという。
 このため県側は、各沿線に理解されるような「説明の工夫」を再度要請。十分な回答が得られない限り、ルートをめぐる調整の前提と位置付けている地元期成同盟会への説明会は「実施できない」としている。

 長野県が出した質問への回答とのこと。このようなやり取りが行われていることが興味深い。必要な内容を含んでいる上に、信濃毎日新聞はいずれ元記事が無くなるのでやや長めに引用した。

 この中では、長野県内に設置が想定されている駅について、先の試算には無かった位置、乗降者数が具体的に示されている。JR東海が行った試算の上では詳細な駅位置は必須ではなく、駅の大まかなエリアと在来線と接続するという条件が必要だったと思われる。ただし、二段落目に示された条件を現実に当てはめれば、Bルートでは中央線茅野駅から上諏訪駅にかけてのどこか、Cルートは飯田市内の飯田線隣接地とまでは絞り込める。Cルートについては、南アルプス、伊那谷通過に伴う地形的な制約が未知数のため、この内容だけでは飯田駅付近から時又駅、あるいは天竜峡駅までの範囲内から絞り込むのは困難である。

 次に各駅の乗降数について。Cルート、飯田の駅の場合、乗降数1日7000人。Bルート、諏訪の駅の場合1日15000人とのこと。まともに比較できる数字がほとんど無いが、東京飯田間、名古屋飯田間の高速バスが合わせて62本、輸送力にして2500人ほど。新宿松本間の特急あずさ号の輸送力は、36本で2万数千人といったところか。どちらをとっても、開通後に数千人規模で需要が喚起されて初めて実現される数字に見える。


 三段落目、JR東海としては、長野県内に2つの駅を設置する場合を試算する気は無いという。知事の28日の発言に対して、改めて「1県1駅」を強調したということだろうか。

 JR東海から全ての質問に対して回答がなされたわけでは無いようで、長野県として更なる説明が無ければ地元説明会は「実施できない」という。JR東海の説明に足りなさを感じているのは自分も同意できるものの、Bルートの不利は明らかであり、その問題をスルーして沿線に理解される説明があり得るのかどうか。


◆ ◆ ◆
 あらためて全ての記事を眺めてみる。JR東海がもっと情報を出すべきではないのかとは自分も思うものの、長野県側の他力本願ぶりがなによりも気になる。自ら動いて事態を改善しようという風がまるで見えてこない。やはり、長野県側もなんらかの試算を行い、その差を議論する形に持ち込まないかぎり出口は見えてこないのではないか。

 結果として事業に支障を来した場合、非難の矛先が長野県に向くことになるりかねない。要求だけをして何もしない長野県と揶揄され、やがては折れることを強圧的に求められるのが落ちではないだろうか。

 長野県内の交通政策としての鉄道網の整備は、大した実績もなく無策に過ぎてきたというのが自分の持っている印象である。これについて機会を設けて少し掘り下げてみたい。

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コメント

地図「リニア中央新幹線想定ルート」
http://22.media.tumblr.com/dJ8rSromGp098qt2awrMZBMPo1_500.jpg
遅ればせながら、この地図を拾って見てました。
Gルート(静岡経由)ってのも面白いですね。
Bルート(諏訪経由)と大差ない感じがします。


長野県の地勢を見ていますと、古くに令制国として成立した際から信濃国には求心力を探しての問題がくすぶっていて、
そういう国の在り方を巡っての問題点が、けっきょく大きな負のエネルギーになって長野県の歴史を動かしているんじゃないかと思いました。

古代の道路事情といえば、東山道の整備と駅の配置だと思いますが、さいきん橿原考古学研究所の主任研究員の近江さんという方が書かれた、『道路誕生』という古代道路発掘の本を読んでおります。

それによると、奈良時代に駅が置かれた道路は現在の高速道路とよく類似している点があるということで、
そういう風に考えてみると、群馬、栃木の両毛地方への入り口として国家整備されたと思わしき信濃国は、南北に裂けた地形をうまく東山道の道路に利用できる為に、非常に高所からの俯瞰的な事情から一国としてまとめられた。そんな悲しい成立事情があったりするんだろうか、とついつい思ってしまいました。
実際のところどうなのか分かりませんけれど、アルプスの下を通す路線ということで、信濃国の地勢的価値が旧来の交通事情とはまるで違ってしまう、とんでもないことで県民の意思がまとまらない、そういうことなんだろうと思います。

まとまらない文章で申し訳ないです(^^;

投稿: 巫俊(ふしゅん) | 2009年8月19日 07時38分

巫俊さんこんばんわ^^

外に対しては団結し、内ではいがみ合うお国柄
県民の総意なんて言葉が端から嘘ですよ^^;

東山道とのリンクとか南北の地勢とかは面白いですねえ
古代と近代と考えると
むしろひとつの勢力下に纏まったことが無いといわれる国が
なぜ一つの県に纏められたかが不思議です

摂津や丹波、武蔵、肥前と旧国が分割された例も散見されます
信濃国がすなわち長野県になる必然性はなかったようにも思います

今でこそ高速道路が発達して移動しやすくなりましたが
明治期なんか飯田から長野まで何日かかったんだか

投稿: 武藤 臼 | 2009年8月21日 02時01分

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