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2010年1月 9日

(書評)ルワンダ中央銀行総裁日記

中公新書 290
ルワンダ中央銀行総裁日記
増補版
服部正也 著
ISBN978-4-12-190290-0
中央公論新社 2009.11


 本書は、日本銀行員であった筆者が1965年から71年までの6年間、国際通貨基金の依頼でルワンダ中央銀行の総裁を勤めた時のことを纏めたもの。だいぶ以前に名著との推薦文を読んだことがあったが、長く絶版状態で実に37年ぶりの増刷となりやっと読むことだができた。

 本書によれば、筆者が担当した事案は総裁としての中央銀行の立て直しや通貨改革に留まるものではなかった。国全体の経済を立て直すため、貿易から国家予算、金融政策、さらには新規事業の開拓や農業振興、およびそれに伴う立法と多岐に渡る。わずか6年の間にここまでできるのかと驚く内容だった。

 アフリカの年から10年も経たない時代に、白人の存在に気圧されることなく現地の実情を見据えた冷静さや、援助国の挨拶回りから国内の個人対応まで直接手がける行動力、さらにはその際に見せる現実主義的な側面など、支えとなった思想信条的な部分をとても興味深くみることができた。手法について揚げ足を取ることは可能かもしれないが、半世紀を経てなお学び取れるものの多さを評価したい。


 増刷に当たって増補された部分を除いても298ページと新書としては厚い部類。中身は事業報告と日記を一般向けに書き直したという雰囲気のもので、6年分の内容を集録するのに枝葉の話が相当に割愛されていると想像できる。登場人物に関わるエピソードも全体の中からすれば少なく、またルワンダという国の歴史や現状など概要的内容も必要部分に絞られていて多くはない。

 それでいて大部な内容というのは、筆者が総裁を勤めたことに留まらず、大統領の信任によって経済全般に渡って多岐な事案をこなした結果と捉えることができるだろう。章の構成は主要な事案の流れが中心で、時系列としての流れはあるものの前後するエピソードが多く、重複したり章を越えて飛んでいる部分も見られる。

 また、主務が金融ということもあり、金融、会計などの専門用語が散見されるものの説明はほぼ皆無。それでいて読み辛いというわけではない。用語の理解を諦めて飛ばしたということはあるが、文学的な要素の低い内容にもかかわらず読み進めるのにさほどの努力は必要とはしなかった。社会的な背景を除いてしまえば、決して古さを感じない興味深い一冊だった。


 なお、著者服部氏は1999年に81歳で亡くなっている。巻末の増補1については、中央公論1994年10月号に掲載された同名の一文を転載したものとのこと。以下に目次を抜粋した。

I 国際通貨基金からの誘い
II ヨーロッパと隣国
III 経済の応急処置
IV 経済再建計画の答申
V 通貨改革の実施の準備
VI 通貨改革の実施とその成果
VII 安定から発展へ
VIII ルワンダを去る
増補1 ルワンダ動乱は正しく伝えられているか
増補2 「現場の人」の開発援助哲学(大西義久著)

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