最近の中国の鉄道ニュースというと、なにかと話題を振りまいた中国版新幹線に目を奪われていたが、甘粛や新疆に興味深い新線が開通している。ちょっと古いネタも含まれているが、Google Mapを駆って眺めてみた。
精伊霍線
3年前、2009年の11月に新疆天山北路の精河とイリ河沿いの要衝伊寧を結ぶ精伊霍線が開通した(鉄路網 2009-11-20 )。天山北路とイリ河畔の間には天山山脈の支脈ボロホロ山脈が横たわる。1995年に旅した時、ウルムチと伊寧を結ぶ長距離バスはサイラム湖畔の峠を越えるルートを走ったが、新しい鉄路はどこを走っているか。
Google Mapに見られるルートに色を乗せたのが以下の地図。大胆に人跡の少ないエリアを抜けるルートは、Ωカーブと長いトンネルを使い苦労して越えているように見える。車窓からはどんな風景が広がっているか。列車の時刻を検索してみると(旅情中国)、このルートを走る列車はウルムチと伊寧を結ぶ夜行急行が2往復のみ。山懐を抜ける時間は、上りが深夜、下りが早朝になる。
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奎北線
新疆に新線がもう一本。ウルムチの西の奎屯と新疆北部の中心アルタイの少し南の北屯とを結ぶのが、昨年開通した奎北線(人民網日本語版)。1995年にほぼ同じルートを北から南へ夜行バスで抜けた。闇夜に浮かび上がったカラマイ油田の幻想的な炎を記憶している。このルートを一日一本走る急行も夜行列車なので(旅情中国より)、同じ光りを楽しめるかもしれない。
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南疆線
つぎに、建設中の路線の話題を2つ。ひとつは、トルファンを起点にコルラ、クチャ、カシュガル、ホータンを結ぶ南疆線。かつてNHKのシルクロードシリーズに登場して話題になった鉄道だ。11カ所のΩカーブと4カ所のループ線を駆使して天山山脈を越える山岳鉄道は、いかにも秘境線の趣きであり、それを目当てにしたと思しき旅人を検索して探すのも容易だ。
以前は、旅客列車は上下各2本のみというローカル線だったが、今は上下各7本と大幅に増えたのに加えて貨物列車の本数も多くパンクが近いという。そこで複線化計画が持ち上がり、目下工事最盛期で来年の開通を目標にしているとか。
この工事をGoogle Mapで調べてみると、トルファンから焉耆へ至るルートの後半部分が丸々新線として建設されている。沢山のループ線、Ωカーブで苦労して越えた山脈を10kmを超えるトンネルで一気に抜けようというもの。Google Map上での計測だが、新ルートの完成によって100km余りの短縮になるというのも大きな数字。
鉄道ファンが楽しみにしている区間がそっくり別ルートになることになるが、Google Mapで見る限り、現行線は地形的にも地質的にも厳しい場所を走っており、新線の開通とともにその大半が廃線になるのではないかと予想できる。取材車を荷台に積んでトンネルを抜けた映像を思い出すが、天山の山懐を抜けるルートの余命はあと一年しかないのだろうか。
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蘭新線第2期複線化
これは、全長1776kmにおよぶ蘭州とウルムチを結ぶ新幹線建設という話し。
蘭新鉄道第2期複線化工事が着工 所要時間ぐんと短縮(人民網 日本語版)
そんな途方もない線がいつ開通するものかと思ったが、Google Mapを眺めるとほぼ全線に渡って着々と建設が進む鉄路を確認できる(Google Map)。
この線と現行線との大きな違いは、現行線が蘭州から武威を経て張掖へ抜けるのに対して、新線が蘭州から西寧経由で張掖へ抜けること。西寧と張掖の間には最高所4800mに達する祁連山脈が横たわる。この山脈のどこを抜けているのかを見たのが以下の地図。ほぼ国道に沿うルートのようだが、どのような風景が広がっているだろう。
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烏鞘嶺越え
最後に、新線への切り替えを終えてしまった峠越えをひとつ。蘭州から武威へ抜けるルートも西寧張掖間ほどではないとはいえ、祁連山脈の東端の峠を越えている。古代隊商路だった時代から難所として知られた所だが、自分が通り抜けた20年前はまだ残っていたSL牽引の列車が喘ぎながら登るルートだった。
中国一長い鉄道トンネル開通(旅情中国)
もう6年も前のニュースだが、当時中国一だというトンネルは20kmに達するそうだ。SLが通った細道が長大トンネルで複線電化されただけでも驚きなのに、さらにもう一本新線(蘭新線第二複線)が造られているというのだから凄い。
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