2009年9月27日

信州まつもと空港 日航路線廃止か

 日航の国内7空港撤退、広島西・松本・丘珠も
(日経新聞 9月16日)

 ほぼ一年ごとに話題を提供してくれる信州まつもと空港(以下「松本空港」)だが、日本航空が撤退を検討していることが報じられたのが今月16日のこと。これを受けて様々な反応が見られたので、まずそれを眺めてみる。


 定期便ゼロの危機 日航が松本空港撤退検討
(朝日新聞 9月16日)

 同紙によれば、長野県村井仁知事は以下の様にコメントしている。

 まったく聞いていないのでコメントしようもない。松本空港と日本航空は、これまで運命共同体的にやってきた。不採算の便が議論になるのは当然だが、縮小すればいいというものではない。
松本空港と日本航空が運命共同体というのがよく解らない。はぐらかして明言を避けておきたいということだろうか。


 同じく長野県交通政策課長のコメント。

 日航が持っていた国内の航空ネットワークが地方に果たした役割は大きい。国、地方も含めて、これをどう維持するのかという議論も進めて欲しい。
後半の部分、リニア中央新幹線の議論同様に他力本願的な言い回しである。管理者として、ここまで追いつめられていてなお維持を乞い願う姿勢しか無いということがあり得るのか。


 同じく松本商工会議所会頭のコメント。

 路線廃止なら、観光面でも打撃を受ける。県や市とも相談しながら存続するための対策を取っていきたい。
打撃が皆無とは言わないが、程度の問題としてどれほどのものなのか。下に記してあるが、2008年度の松本空港利用者は約6万人。これに対して、平成20年版「松本市の統計」その2によれば2007年の松本市の観光地利用者数およそ570万人。6万人は、このほぼ1%にあたるが、松本市の観光地利用者は対前年比で22万人近く増えている。

 同様に長野県観光関連統計より平成20年観光地利用者統計調査結果(pdfファイル)を開くと、2007年の長野県の観光地利用者数は約8700万人。しかし、前年から400万人あまりの減少している。

 これらの観光関連統計が、延べ人数であることや地元利用者を含んでいることを考えても、増えるにしろ、減るにしろ空港問題の影響が小さいのは間違いない。


 同じく松本青年会議所理事長のコメント。

 減便して利用率が減ってから撤退というのでは納得いかない。
相対的に利用率が高い札幌便、福岡便が、一日各1便から、合わせて一日1便に半減して二年になる。毎日1便あるのと、2日に1便という中途半端な便数では不便なのは確かで、この点については減便⇒撤退が納得できないというのは理がある。

 しかし、それ以前から一日1便体制の大阪便は減少傾向が続いており利用率は44%に過ぎない。2007年6月9日のエントリーで指摘したように大阪便が存続していることは不可解ですらある。2008年度の年間利用者数は2.3万人にすぎず、一日あたりで63人、片道は半分の32人で普通車一両に60席ほどある特急電車一両にも満たない。

 これらの点から、松本空港に定期便が残るとすれば、札幌便、福岡便がそれぞれ一日1便という体制が考えられる。大阪便の低迷を考えれば、この体制の方が同じ一日2便でも利用率の向上が見込めるかもしれない。


 同じく八十二銀行の頭取のコメント。

 長野県は海が無く、空路を断たれると地方経済や交通の便への影響が大きい。県民がもっと利用する努力や工夫をすることにより、路線を存続させる方向でぜひ検討してほしい。
八十二銀行の頭取は、17日に以下のようなコメントも残しているようだ。

 「陸の孤島になる」
(読売新聞 9月18日、既に元記事が無くなっているためGoogleのキャッシュにリンクしている)

 長野には海がない。空(の移動手段)を取られてしまうと、陸の孤島になる。どう対応するか考えなければならない。非常に問題だ。
だれに向けてこのような発言を繰り返したのか、首を傾げたくなる。上に書いた観光客数の比較からすれば、経済への影響に対する発言は過大である。また、2008年5月28日のエントリーで紹介したように努力してこなかったわけではないので、むしろ努力も限界に来ていると考えるべきではないか。

 「陸の孤島」とう言い方に至っては笑止でしかない。鉄道と道路交通で十分に便利だから使われないだけのこと。むしろ、読売新聞がこのような実態の無い発言を「陸の孤島になる」のタイトルで紹介しているセンスの方が気になる。


 このような中で、9月18日に信濃毎日新聞は松本空港路線 存続へ手だて尽くそうと題した記事をアップしている。この中に、次のような指摘がある。

 県や市町村、経済団体などは、JR駅から空港までの交通費や、修学旅行での利用に補助をするなど、てこ入れを図ってきた。
 それでも低迷が続き、採算ラインには届かない。地元としてさらに有効な支援策がないか、真剣に考える必要がある。
税金を投入してのなり振り構わない延命策も既に限界にあるのではと見えるのだが、今まで以上に真剣に考えてなにか出て来る余地が残されていればいいのだが。続けて次のような記事がある。
 リニア中央新幹線ができれば、中南信と東京、名古屋の空港との時間距離が大幅に短縮される。北陸新幹線が延びれば、富山空港も競争相手になるだろう。
 リニア新幹線と北陸新幹線が開通すれば、まつもと空港はいらないと言っているに等しい。


 最後に、国土交通省の航空輸送統計年報 過去の統計資料 平成20年分より第4表 国内定期航空路線別, 区間別, 月別運航及び運送実績(pdfファイル)を参照し、離島を除く空港の内、2008年度の利用者が20万人を切る空港について、2007年6月9日のエントリーで纏めた2005年度のランキングとの変化を確認しておく。

 稚内空港 19万人 ▼
 山形空港 18万人 ▼
 中標津空港 18万人 ▼
 能登空港 16万人 △
 南紀白浜空港 14万人 △
 大館能代空港 11万人 ▼
 石見空港 7万人 ▼
 天草空港 6万人 ▼
 松本空港 6万人 ▼
 広島西空港 5万人 ▼
 オホーツク紋別空港 4万人 ▼
 但馬空港 3万人
(▼は対2005年度減、△は同増。稚内空港は2005年度は23万人、中標津空港同22万人。また、山形空港同20万人、広島西空港同7万人で前のエントリーの際に漏らしていた。)

 以上の中で減少率がもっとも大きいには、半減した松本空港である。エリア人口を見ても、観光資源を考えても能登や秋田県北部などよりも大きなものを持ちながら、むしろ三大都市圏に近いという恵まれた立地であるからこそ利用者は伸びないのである。

 唯一毎日運行の大阪便の利用者は、昨年度2.3万人あまり、利用率も44%に過ぎない。これは、但馬伊丹便の2.9万人、65%に大きく劣る数である。但馬というエリアとの違いを考えれば参考になるものがあるように思うが、但馬空港が大阪乗り継ぎで東京から集客できることを考えれば、松本空港の方がより厳しいとも考えられる。

 唯一松本空港に生き残る可能性があるとすれば、上に書いたように札幌便と福岡便の拡充である。2005年度の旅客数と利用率は、札幌便が5.5万人、59%、福岡便が3.4万人、66%。札幌便の利用者数は、現状の小型機に代えれば利用率100%を越える数字である。


 現状の松本空港は、全国の中の比較で見る限り既に存廃を問われる所まで来ているといっていいだろう。仮に札幌、福岡便がこのような形で存続したとしても、それでも利用者は10万人に達せず、ワースト5の空港のままである。

 今回の件に対しては、「経済への影響」「陸の孤島」と中身の無い評語を叫ぶのではなく、冷静に地域として、長野県として維持する意味、価値があるのかを見極め、廃港も選択肢の一つとして捉えて問い直す良い機会ではないだろうか。また、それができるかどうかに、地域、行政の力量が試されていると自分は考えている。

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2009年8月16日

リニア中央新幹線 需要予測公表 その2

<今までのエントリー>
 リニア中央新幹線を諏訪へ
 リニア中央新幹線と長野県
 リニア中央新幹線 Bルートが無理なわけ
 リニア中央新幹線 知事の質疑応答ほか
 リニア中央新幹線 Bルートが実現する可能性 その1
 リニア中央新幹線 Bルートが実現する可能性 その2
 リニア中央新幹線 2008年12月の動き その1
 リニア中央新幹線 2008年12月の動き その2
 リニア中央新幹線 2009年1月の動き
 山梨でリニア学習会
 リニア中央新幹線 2009年5〜6月の動き
 リニア中央新幹線 ルート別の試算公表
 リニア中央新幹線 飯田市議会で決意案
 リニア中央新幹線 2009年上半期 長野県知事会見より その1
 リニア中央新幹線 2009年上半期 長野県知事会見より その2
 リニア中央新幹線 需要予測公表 その1

 その1に引き続いて、公表されたリニア中央新幹線 需要予測に関連するニュースなどを参照してみる。


 知事「さらに情報の開示を」 リニアルート需要予測公表
(中日新聞 7月22日)

 村井仁知事は「さらに情報の開示を求めたい」と従来通りの見解を示した。(中略)「数字の根拠は十分に吟味しないといけない」と話し、情報共有を進めていく姿勢を強調した。
 伊那市の小坂樫男市長は「Cルートありきの数字だと思う」と反発。「需要量などの計算方法もよく分からない。まずは(6月に示された)建設費の積算根拠を示してほしい」とJR側に説明を求めた。

 長野県知事のコメントは、下記知事会見を見ても分かる通り従来からの主張を繰り替えしただけのもの。

 伊那市長のコメントは、JR東海に反発したものとしては分かり易い。JR東海が試算に用いた「四段階推定法」には様々な仮定、パラメーターがあり、その点で結果を想定範囲内に納めるように操作することは、手段としては可能だろう。しかしながら、伊那市長の発言は何か具体的な数字を元にしたものとは思われず(下記参照)、批判の為の批判と思われても仕方が無い。

(注)
 伊那市長は、今年6月の定例記者会見でBルートとCルートの建設費の差額の問題について、

 金額が不明確で実際にはBの方が安かもしれない。
平成21年6月定例記者会見
と発言しており、具体的な数字を持っているとは思われない。


◆◆◆
 JR東海の試算公表後、最初となる長野県知事の7月24日の知事会見録より、リニア中央新幹線について(1)について、以下要約の上検討してみる。質問者はNHKの記者。

【記者】JR東海の試算ついてデータ開示がもっと必要だと考えているのか。

【知事】事実とロジックを押さえて議論を積み重ねることが大切。結論だけ言われても、根拠を押さえなければ共通の議論にならない。情報の共有が不十分。JR東海から結論だけ出てきて、それについて尋ねられたから「まだまだ」と言っている。

【記者】JR側は、促進協議会への説明を早く行いたい意向を示しているが、知事の発言はその前に説明があるべきということか。

【知事】いろいろなやり方がある。長野県がJR東海から話を聞くのも一つのやり方。各地域との会合を設定してそこで開示されることもあり得る。関係のある人たちにある程度満足のいくような情報の開示が行われるべき。その水準がまだ不十分と認識している。

【記者】建設費用についても、改めて十分な説明が必要か。

【知事】それはそうだ。私どもは専門家でないので、工事をする人が必要とするような情報が欲しいとは言えない。敷地を提供する立場からは、要求していい情報があるのではないか。


 JR東海の公表を受けて、数字など新しい情報に対する見解を期待していた自分には、かなり肩透かしといった内容。記者がそれしか質問していないとことにも疑問が残るが、JR東海がもっと情報を出すべきという従来の主張を繰り返しただけで新しい内容は無い。

 JR東海からの情報が不足していることには自分も異存ないものの、ではどこまで示せば満足できるのかを考えると、前提条件に大きな差があるだけに、満足は永久に得られないのではとも想像してしまう。


◆◆◆
 リニアBルート「複数駅が前提」 村井知事
(信濃毎日新聞 7月29日)

 村井知事は28日、(中略)諏訪・伊那谷回りのBルートについて「当然(県内)複数駅を前提にしている話だ」と述べた。
 とりたてて新しい話ではない。JR東海が主張する「1県1駅」を是として、県内唯一の駅を中央に置くか南に置くかという議論があり得るとはいえ、今の長野県でそれは無理だろう。


◆◆◆
 リニア試算 Bルート乗降1万5千人 JR「C」は7千人
(信濃毎日新聞 8月5日)

 JR東海は4日、リニア中央新幹線のルート別の工事費など、6~7月に示した一連の試算結果に関し、県が出していた疑問点への回答を示した。この中で、県内に設けられる中間駅の予想乗降者数を初めて提示。諏訪・伊那谷回りのBルートでは1日当たり1万5千人だったのに対し、南アルプス貫通のCルートは同7千人とした。
 中間駅は両ルートとも県内1カ所を想定。具体的な地点は示さなかったが、Bルートは「諏訪地区から上伊那にかけて」、Cルートでは「飯田市付近」とし、それぞれ中央線と飯田線に接続することを前提とした。また、東京-名古屋間に「1県1駅」、計4駅を設けた場合、各駅停車型の所要時間はBが79分、Cが72分かかると想定。直行型との差はともに32分となる。
 一方、県はBルートに2駅を設置した場合の輸送需要量も求めたが、JRは「経費がかさみ、ダイヤ編成に支障が出る」などとして示さなかった。また、CがBを5800億円上回るとした建設費(車両費を除く)の試算についても積算単価など根拠の開示を求めたが、詳しい説明はなかったという。
 このため県側は、各沿線に理解されるような「説明の工夫」を再度要請。十分な回答が得られない限り、ルートをめぐる調整の前提と位置付けている地元期成同盟会への説明会は「実施できない」としている。

 長野県が出した質問への回答とのこと。このようなやり取りが行われていることが興味深い。必要な内容を含んでいる上に、信濃毎日新聞はいずれ元記事が無くなるのでやや長めに引用した。

 この中では、長野県内に設置が想定されている駅について、先の試算には無かった位置、乗降者数が具体的に示されている。JR東海が行った試算の上では詳細な駅位置は必須ではなく、駅の大まかなエリアと在来線と接続するという条件が必要だったと思われる。ただし、二段落目に示された条件を現実に当てはめれば、Bルートでは中央線茅野駅から上諏訪駅にかけてのどこか、Cルートは飯田市内の飯田線隣接地とまでは絞り込める。Cルートについては、南アルプス、伊那谷通過に伴う地形的な制約が未知数のため、この内容だけでは飯田駅付近から時又駅、あるいは天竜峡駅までの範囲内から絞り込むのは困難である。

 次に各駅の乗降数について。Cルート、飯田の駅の場合、乗降数1日7000人。Bルート、諏訪の駅の場合1日15000人とのこと。まともに比較できる数字がほとんど無いが、東京飯田間、名古屋飯田間の高速バスが合わせて62本、輸送力にして2500人ほど。新宿松本間の特急あずさ号の輸送力は、36本で2万数千人といったところか。どちらをとっても、開通後に数千人規模で需要が喚起されて初めて実現される数字に見える。


 三段落目、JR東海としては、長野県内に2つの駅を設置する場合を試算する気は無いという。知事の28日の発言に対して、改めて「1県1駅」を強調したということだろうか。

 JR東海から全ての質問に対して回答がなされたわけでは無いようで、長野県として更なる説明が無ければ地元説明会は「実施できない」という。JR東海の説明に足りなさを感じているのは自分も同意できるものの、Bルートの不利は明らかであり、その問題をスルーして沿線に理解される説明があり得るのかどうか。


◆ ◆ ◆
 あらためて全ての記事を眺めてみる。JR東海がもっと情報を出すべきではないのかとは自分も思うものの、長野県側の他力本願ぶりがなによりも気になる。自ら動いて事態を改善しようという風がまるで見えてこない。やはり、長野県側もなんらかの試算を行い、その差を議論する形に持ち込まないかぎり出口は見えてこないのではないか。

 結果として事業に支障を来した場合、非難の矛先が長野県に向くことになるりかねない。要求だけをして何もしない長野県と揶揄され、やがては折れることを強圧的に求められるのが落ちではないだろうか。

 長野県内の交通政策としての鉄道網の整備は、大した実績もなく無策に過ぎてきたというのが自分の持っている印象である。これについて機会を設けて少し掘り下げてみたい。

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2009年8月15日

国旗国歌法 10周年

 【20世紀のきょう】国旗国歌法施行
(産経新聞 8月13日)

 正式には、国旗及び国歌に関する法律法令データ提供システム)。ネットで検索してみると、条文2、附則3、別記2という簡素な法律が見つかる。


 もう10年になるのかと思うが、ニュースを検索して出て来るのが中身が全然無い上記産経新聞の記事一つだけ。それだけ感心が無いということなのか。

 今日という日にこのニュースを持ち出すのは、もちろん戦後の日本にとって国旗国歌ってどういうもだったのかということを考えているから。ただ、変遷や立法に至る経緯を纏められればそれなりに形にはなるのだろうが、たいした情報を持ち合わせていないので徒然に思う所を簡単に書くくらいしかできない。


 10年前の法律制定については、ある校長の自殺が象徴のごとく語られているように、国旗国歌を国が定めたものと規定することが主目的だったと記憶している。私が忘れているということなら是非ご指摘を頂きたいのだが、その際日本の国旗国歌として何が良いのかという議論を、立法の手続きの中できちっとなされたのだろうか。

 私個人的には、日の丸はシンプルで日本らしい国旗と思うし、君が代は歌詞は別にしてメロディーにはさほど異存があるわけではない。しかしながら、太平洋戦争後のこととして考えれば、国旗が象徴してきたもの、歌詞が称揚してきたものが何だったのかという議論、手続きを省くことは片手落ちだと考えている。


 国家に属する者として、国の象徴を敬うのは当然という論はあるだろう。しかし、日本の歴史を振り返れば人の生活に国が直接影響力を持つようになった明治維新からまだたったの140年。国があっての生活と言うには、長い間地方勢力が担ってきたという歴史を簡単に無視ししすぎたものと思う。

 また、現状として国というものに対する想いが薄くなってきているということがある。それは、今の中央行政が失政を繰り返しているという不信感が強いから。選挙間近という意味では、地方分権を強く進めてくれるところに投票したい。もちろん、地方分権とは、地方が自分たちでできることは自分たちでするということであって、道州制という形ではない。


 終戦の日というにしては、目を引くようなニュースがまだなく、去年に比べて散漫な内容になったと思うのだが、結論が必要なわけでなく、振り返り考えることが重要と思うのでこのまま書き捨てておく。

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2009年8月 9日

リニア中央新幹線 需要予測公表 その1

<今までのエントリー>
 リニア中央新幹線を諏訪へ
 リニア中央新幹線と長野県
 リニア中央新幹線 Bルートが無理なわけ
 リニア中央新幹線 知事の質疑応答ほか
 リニア中央新幹線 Bルートが実現する可能性 その1
 リニア中央新幹線 Bルートが実現する可能性 その2
 リニア中央新幹線 2008年12月の動き その1
 リニア中央新幹線 2008年12月の動き その2
 リニア中央新幹線 2009年1月の動き
 山梨でリニア学習会
 リニア中央新幹線 2009年5〜6月の動き
 リニア中央新幹線 ルート別の試算公表
 リニア中央新幹線 飯田市議会で決意案
 リニア中央新幹線 2009年上半期 長野県知事会見より その1
 リニア中央新幹線 2009年上半期 長野県知事会見より その2

 6月18日の試算公表に続いて、需要予測がJR東海によって公開された。

 需要予測は「南アルプスルート」が有利 リニア中央新幹線でJR東海が試算
(産経新聞 7月21日)

 JR東海は21日、首都圏~中京圏で平成37年の開業を目指すリニア中央新幹線3ルートを対象にした輸送需要予測などの試算をまとめた。
 記事中に「輸送需要予測など」とあるように、この日発表されたのは輸送需要予測だけではないのだが、需要予測を中心にスポットが当たっている状況だ。以下でも、相対的に分かり易いので需要予測について考察を試みる。


 JR東海のサイトを見ると、同日に中央新幹線の維持運営費、設備更新費、輸送需要量についてがリリースされ、その中に同名のPDFファイルが添えられている。


 同報告書、「3. 輸送需要量(2025年)」によれば、C(南アルプス)ルートで167億人キロとあるので、365日で割って一日当たり4575万人キロ。路線延長286kmで割って一日当たりの平均輸送密度が約16.0万人となる。

 さらに1時間あたり速達4本、各駅停車1本と報道されているので(下記注参照)、片道5本、往復10本、17時間と仮定して一日あたり170本とすると、1列車あたり941人。

 B(伊那谷)ルートでは153億人キロとあるので、同様に計算すると、一日当たりの平均輸送密度が約14.7万人、1列車あたり862人となる。


 東京名古屋間の所要時間が40分が47分へ17.5%伸びると、一列車あたり100人近くも違うのかと思わなくもない。名古屋から先、現行の新幹線に乗り換えて新大阪まで48分、岡山まで1時間35分、広島まで2時間15分と少なくない時間がかかるので、乗り換えを嫌う人が一定程度あることは予想できる。

 上記JR東海のリリース内には、この予測は「四段階推定法」によるモデルを用いたとある。「四段階推定法」は自分には初見だが、ネット上で検索するといろいろ資料が見つかるが、宇都宮大学工学部地域計画学研究室サイト内にある講義資料「交通需要予測:四段階推定法(pdfアイル)」が奇麗に纏まっているだろうか。

 JR東海の試算では、全国を約400のゾーンに分けたとあり、いくつかの予測値を基に将来のゾーン間の移動量を推計し、その中からリニア新幹線の利用者を割り出すといった手順になるのだろう。つまり、現状の新幹線や特急あずさに利用者がどれだけ有って、その内どれくらがリニアに移り、さらに喚起される需要がどれくらい有るというような、現状を基にした積み上げをしているわけではないわけだ。


 ちなみに、JR東海の平成21年3月期 決算短信(pdfアイル)によれば、2008年度の新幹線の輸送量は460億人キロとのこと(39ページ、別紙2)。路線延長514kmと365日で割って1日平均輸送密度が約24.5万人。上記16.0万人は、この65%となる。少し小さいようにも感じるが、静岡以東から東京への需要を考えればこのくらいだろうか。

 JR東海のリリースの中に、大阪までのデータを今月下旬以降に説明するとあるので、その数値が明らかになればこの部分の数字の意義については、もう少し具体的に評価することができるようになるかもしれない。


 JR東海のリリースには、輸送需要量の他に「維持運営費」「設備更新費」の試算も載っていて、それぞれについて簡単ながら「算出の考え方」が示されている。


 関連するニュースなどについては、その2で考察する。


注)

 1時間当たり運行本数のうち、片道4本をノンストップの「直行型」、1本を「各駅停車型」として試算した。
 リニア計画 JR東海、3ルートの輸送需要の試算公表
(信濃毎日新聞 7月22日)より

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2009年7月25日

リニア中央新幹線 2009年上半期 長野県知事会見より その2

<今までのエントリー>
 リニア中央新幹線を諏訪へ
 リニア中央新幹線と長野県
 リニア中央新幹線 Bルートが無理なわけ
 リニア中央新幹線 知事の質疑応答ほか
 リニア中央新幹線 Bルートが実現する可能性 その1
 リニア中央新幹線 Bルートが実現する可能性 その2
 リニア中央新幹線 2008年12月の動き その1
 リニア中央新幹線 2008年12月の動き その2
 リニア中央新幹線 2009年1月の動き
 山梨でリニア学習会
 リニア中央新幹線 2009年5〜6月の動き
 リニア中央新幹線 ルート別の試算公表
 リニア中央新幹線 飯田市議会で決意案
 リニア中央新幹線 2009年上半期 長野県知事会見より その1


 その1に引き続いて、長野県の公式サイト内、知事会見録2009年上半期分のリニア新幹線に関わるものの中から、中身のあるものを取り上げ解説、評価を加えてみる。

 以下は、6月18日分にあるもの。同日JR東海よりルート別の工事費試算が公表されており、その内容を前提にしたものとなっている。関連の話題については、6月20日のエントリーに纏めてある。


 まず、6月県議会定例会開会、リニア中央新幹線のルート別工事費の公表について。この知事からの説明について、要点は以下の3つ。

 ・今回示されたものというものは、あくまで一部のデータの概数
 ・輸送需要量なども含めて客観的、総合的にデータを吟味・検証していく必要がある
 ・客観的なデータの他にも全国新幹線鉄道整備法にある地域の振興という観点からも議論が必要


 JR東海の公表資料がかなり簡単なものであることは、6月20日のエントリーの中でも触れた。ここでは、その部分を強調してさらにデータが必要とした上で、データ以外の部分として「地域の振興」も重要であるとする。

 この「地域の振興」という話について、「かねてから申し上げていること」と前置きしている。昨年の秋にまで遡って知事会見録を見返してみたが、リニア中央新幹線の話題の中には「地域の振興」という言葉は出てこない。ただし、長野県のサイト内にある信州・フレッシュ目安箱に寄せられたリニア中央新幹線についての提言に対する回答には、

 新幹線鉄道整備は、首都圏を短時間で結ぶ機能だけではなく、国民経済の発展とともに地域振興に資することも目的としており(一例として2009年2月9日回答
という一文が繰り返し添えられていて、知事の見解かどうかはともかく、長野県としては以前から強調してきた言葉であることはわかる。

 しかしながら、「地域の振興」を盾に従来の主張を繰り返す事は限度を越えており、いたずらにだだをこねていると捉えられかねない。このことは、再三ここで述べてきた。


◆◆◆

 次に、リニア中央新幹線について(1)。質問者は信濃毎日新聞の記者ながら、いつもとは違う人が行っている。以下やり取りの要点を纏める。


 【記者】BルートとCルートの差額6400億円について知事はどう受け止めるか。

 【知事】よく分からないとしか言えない。

 【記者】Bルート実現を目指している県側としては、どうやって理解を得ていく方向なのか。

 【知事】Bルートに合意を形成したところへCルートがボンッと出てきた。その為いろいろ問題が出てきているが事業主体はJR東海であり、アイデアがある訳ではない。JR東海から説明を聞いて情報を共有するようにしたい。

 【記者】所要時間の差について、知事は10分もかからないだろうという見方をされていた。7分位と示されたがこれについてはどうか。

 【知事】よく分かりません。何とも申しかねます。

 【記者】今後県としては、どういう形で話し合いを進めていくのか。

 【知事】明確な決意を私自身持っていない。Bルートで手間をかけて合意を形成した。中央新幹線の実現のために運動を重ねてきた。どうやって調整したらいいのか私も悩んでいる。当初、長野県に対して直接何の話もなく、いささかの不快感だった。できるだけ情報を共有して、どのような形で調整ができるのか、地域のさまざまな期待もおさえながら努力をさせていただきたい。

 【記者】6400億円ていう差について知事としてはどういうふうにお考えか。

 【知事】評価のしようがない。巨大事業は、当初想定された金額から膨らむケースが多いし、ずいぶん振れる。今の段階では楽観的な数字がCルートの場合であっても出されているのではないか。そういうことも含めてよく分からないとしか言いようがない。


 信濃毎日新聞の記者が代わり、あきらかに質問が明快になっている。しかしながら知事の回答は歯切れが悪く、Bルートへ一本化した事を繰り返すほか、分からないと言い切るなど内容の無いものとなっている。JR東海が示した資料が薄いものとはいえ、一応ながら示された数字に対してこの一連の回答では、意図的にJR東海の数字を軽く見なした上で逃げようとしているとしか自分には評価できない。

 質疑の中で記者が「理論武装」という言葉を使っているが、長野県は主体的に理論武装していかなくては、事態収拾に対して一定の役割を果たすことはできないだろう。


◆◆◆

 ついで、リニア中央新幹線について(2)について。質問者は中日新聞記者。

 【記者】各地区での説明会で、知事にBルート推進として、(あるいは?)JRとの調整においてリーダーシップを取ってほしいという声もあった。どう受け止るか。

 【知事】 それは一つの意見。いろいろな意見があると承知している。私は、Bルートというコンセンサスが一回できたことを押さえ、相談をさせていただくしかないということを繰り返している。よく事実を押さえ、それで事業推進のために議論を重ねていくという手続が大事。


 あくまでもBルートをと念を押しているとはいえ、複雑化しつつある利害調整について主体的に役割を果たす予定は今のところはないと言っているのに等しい。また、前提条件が崩れている現状で「Bルートというコンセンサス」と繰り返すこと自体が無策に過ぎる。

 中央新幹線の事業の大きさ、諏訪上伊那vs飯田下伊那という構図、問題の複雑化を「長野県」(行政として、エリアとしての両方を含めて)の問題と評価されている現状などを考えれば、県として主体的にすべきことは沢山あるはずである。


 7月分の知事会見録が既にアップされているが、これについてはまた日を改めて検討する予定。

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2009年7月20日

リニア中央新幹線 2009年上半期 長野県知事会見より その1

<今までのエントリー>
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 リニア中央新幹線 2009年5〜6月の動き
 リニア中央新幹線 ルート別の試算公表
 リニア中央新幹線 飯田市議会で決意案

 ここでは、長野県の公式サイト内、知事会見録の中から、2009年上半期分のリニア中央新幹線に関わるものについて、中身のあるものを取り上げ解説、評価を加えてみる。


 2月13日分よりリニア新幹線について(1)について。

 ここでは、信濃毎日新聞の記者からJR東海がCルートを選択したことについて意見を求められている(この質問の前提として、同紙によるJR東海社長へのインタビューの話が紹介されているが、全体を通して何を聞きたいのか良くわからない。その点知事からも指摘されて言い直しているが、その結果知事が採った解釈にも疑問がのこる)。この質問に対する知事の回答について以下に要点を纏めた。


 JR東海は研究の結果として十分な情報を持って、「Bルートではなかなか進まない」「Cルートでしかやりようがない」と結論したと思われるが、結論だけ示して同意を求められても知識も情報も無いので同意できない。

 JR東海は、Bルートがなぜ難しいのか説明しなくてはいけない。全国新幹線鉄道整備法であれば国の補助を受けて(Bルートが?)できたがそれでは時間がかかるから、早期実現のためにCルートというのは簡単で分かりやすく見える。しかし(JR東海は?)もっといろいろ言う必要があるのではないか。

 JR東海が、吟味に耐えるだけのデータ持って地道な説明をされることを期待している。


 以上について、JR東海が単独で事業を行う場合Cルートが有効であることを知事は十分に認識しているように読み取れる。この点は記憶しておいて良いと思う。JR東海がもっと説明すべきという点について、自分はJR東海の義務とは思わないが、先のルート別の試算公表の結果(6月20日のエントリー参照)を見る限り、できるだけ情報を出す方が賢明であると考えている。

 ただし、一連のエントリーの中で書いてきたように、JR東海がCルートを選択した時点でBルートの実現はほぼ不可能である。また、全国新幹線鉄道整備法を盾にしたところで、「国民経済の発展」「国民生活領域の拡大」「地域の振興」という「新幹線鉄道網の整備」の3つの目的の1つを持って6400億円を引き出すのはやはり無理がある。

 このような状況の中で、「知識も情報も無い」とJR東海の説明を待ち情報を引き出すことを目指すというのは、受け身に過ぎると自分には思える。長野県自らJR東海に対して数字を示すような努力をしないかぎり、Bルートはおろかより些細な事についても、JRが示した事にだだをこねるか諦めて受け入れるかの選択肢しか残らないのではないだろうか。


◆◆◆

 次に、6月10日分よりリニア中央新幹線について(1)について。

 これは、マスコミによって「それで事業が進むのか!」リニア1県1駅構想で長野県知事(産経新聞 6月10日)などと報じられ、非難を集めた部分である。質問者は、なぜかいつもと同じ歯切れの悪い信濃毎日新聞の記者。記者と知事のやり取りついて以下に要点を纏めた。


 【記者】中間駅は1県1駅が適当というJR側の発言をどう思うか。

 【知事】(新しい)ニュースとは受け止めていない。いままでのことを繰り返されただけ。

 【記者】知事は以前「長野県の場合は大きな県だから複数の駅も」と言っていたが。

 【知事】リニア中央新幹線の運営者としては、東京と名古屋と大阪だけ飛ばせればいいので、通過地点は経営的にプラスではないと見ていることは理解はできる。「ただ、それで本当にうまく事業が進んでいくのでしょうか。」まだまだ初期の段階。とりあえず承っておくと言うにとどまる。

 【記者】昨日からは諏訪ほか4箇所で説明会が行われているが、知事としての意義、受け止めを。

 【知事】(地元の)関係者にとって、報道だけではなく、直接事業をJR東海から説明を受けることは大事な過程。こういう形で事実上いろいろなやり取りが始まっていくことは非常に結構なこと。


 まず報道された部分について。知事の回答2つ目の中程にあるが、ここは原文ままという意味で「 」に括ってある。上にリンクした産経新聞の記事と並べてみると以下のようになる。

 それで本当にうまく事業が進んでいくのでしょうか。(知事会見録)
  ↓
 それで事業が進むのだろうか(産経 記事本文内)
  ↓
 それで事業が進むのか!(産経 記事見出し)

 知事会見録が、発言をそのまま載せている保証もないので1番目から2番目への変化は評価できないが、2番目と3番目の違いは産経新聞の編集と見て間違いないだろう。程度の大小はともかくとして、脚色と見る事は可能と考える。

 産経新聞の記者が、当日の知事の語調を聞きながらその雰囲気を再現した可能性はゼロではない。しかしながら、質疑応答の全体の流れの中から考えれば、この一文を少し強調しすぎていると自分には思える。また、2番目の発言の最後の部分および3番目の発言を見る限り、知事はまだ道程の中であって多くはこれから、という点を強調したいようにも見られるが、そのニュアンスは産経の記事からは伝わってこない。

 次に知事の発言の中身についてだが、現状について簡単な評価をしているだけで目新しい中身はない。件の発言については、「通過地点の協力もなくては事業はすすまないでしょう」と解釈して差障りは無いだろう。


 なお、知事会見録については動画、音声での視聴が可能なようだが、自分の環境ではどちらもできないので、興味のある方は直接当たられたい。

 少し長くなったので、6月18日分について稿を改める。


<追記> (7月20日)
 上記の一番最後で触れた知事の会見について、6月17日のエントリーの中で

 「理解できるが」が「進むのだろうか」という「疑問を呈した」という文脈が自分には理解し難い。
と評価した。これについて、上記の内容では自分の評価に何もつながりを取れていないので以下に少し書き足す。

 知事の発表内容を改めて整理し直してみると、知事の発言を「通過地点の協力もなくては事業はすすまない」と言い換えるのは妥当というのが上記最後の部分の内容で、文脈として違和感なく、この部分だけ捉えれば理はあると言うこともできる。

 また、この部分には「Bルート」「Cルート」という言葉が出てこないので、純粋にルート沿線の理解を得ながらという意味に捉えれなくはないものの、同日の一連の発言の中にJR東海が1県1駅という考えを示した事が述べられていることを考えれば、やはりこの「通過地点の協力」の為には「Bルート」という地元の意思が含まれていると解釈されても仕方がないだろう。しかしながら、「Bルート」を含めるのはやはり行き過ぎである。

 こうして読み返してみると、Bルートの評価についてJR東海と長野県の間の大きな隔たりを改めて見せられたように思う。その点長野県知事は、本当にJR東海の評価を「理解でき」ているのだろうか。この意味においては、知事の発言について「文脈が自分には理解し難い」と評価することは、さほど間違っていなかったように考えている。

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2009年6月26日

リニア中央新幹線 飯田市議会で決意案

<今までのエントリー>
 リニア中央新幹線を諏訪へ
 リニア中央新幹線と長野県
 リニア中央新幹線 Bルートが無理なわけ
 リニア中央新幹線 知事の質疑応答ほか
 リニア中央新幹線 Bルートが実現する可能性 その1
 リニア中央新幹線 Bルートが実現する可能性 その2
 リニア中央新幹線 2008年12月の動き その1
 リニア中央新幹線 2008年12月の動き その2
 リニア中央新幹線 2009年1月の動き
 山梨でリニア学習会
 リニア中央新幹線 2009年5〜6月の動き
 リニア中央新幹線 ルート別の試算公表


 飯田・伊那両市議会が「リニア決議」 立場の違いあらためて
(信濃毎日新聞 6月23日)

 飯田市議会と伊那市議会は6月定例会最終日の22日、それぞれリニア中央新幹線の早期実現に関する決議を行った。(中略)両地域の立場の違いをあらためて示す内容となった。

 何かを作るための予算案を決議するのではなく、推進することを決議することにどんな意味があるのかピントこない。

 飯田市議会のサイトを見てみると、リニア中央新幹線の早期実現及び飯田駅設置実現に関する決議案可決されましたと題して、22日に可決されたという決議案が載っているので検討してみる。


 この決議案は、次の一文から始まる。

 リニア中央新幹線は、新たな国土の大動脈として、21世紀の我が国の社会・経済を支え、国際競争力ある日本を形成するとともに、国民のゆとりある生活の実現に大きく貢献する社会基盤であり、国家の浮沈を懸けたプロジェクトとして取り組まれるべきものである。
 これに続く部分を以下に箇条書きする。

 ・国家的プロジェクトとしての意義と地域貢献への意義という両面から検討されるべき
 ・飯田市では、35年間、民と官とが一体となって活動を展開し、実績を積み重ねてきた
 ・リニア中央エクスプレス建設促進長野県協議会が組織され、一員として共に運動を進めてきた、今後も県と一体となって進めていくべき
 ・リニア中央新幹線は、日本に必須のものであり、早期に実現して、すばらしい国家と地域を子孫に継承していきたい
 ・永年の悲願であるリニア中央新幹線の早期実現及び飯田駅設置について、改めてその決意を表明する

 これらの内容を踏まえてた上で次の2点を「決議する」とのことだ。

 1 リニア中央新幹線を早期に着工し、一日も早い実現を図ること。
 2 リニア中央新幹線飯田駅を設置すること。

 新幹線のような交通網が発達すると国際競争力が上がり、すばらしい国ができるという。有れば便利かもしれない。では、無かったら駄目なのだろうか。アメリカ、EU、インド、中国のような広域国家はどうすればいいのか。日本は、高速道路、新幹線だけでなく一般道路もそれなりに整備が進んでいると思うのだが、それでも「陸の孤島」とか「取り残される」といった言葉を目にする。いったいどのくらい便利になれば安心できるのか。

 交通の不便さを嘆き、便利さを求めることで、いったいどれだけの人が納得できるのだろうか。少なくとも、自分には空疎な絵空事にしか見えない。


 リニア中央新幹線が開通したとして、飯田市には何が起きるのか。

 東京へ30分以内なら、高級品の買い物は地元ではなくて銀座へでも行くのではないか。移動ストレスが少なければ、観光客が飛躍的に増えるかもしれない。では、箱根や日光よりも便利な飯田に観光客を呼び込む魅力があるのか。川本喜八郎人形美術館は、入館者が倍増するかもしれない。遠山、下栗といった秘境目当てなら、今まで躊躇していた人が泊まりに来るかもしれない。

 地価が安ければ、確かに東京や名古屋まで通勤する人がでてくるだろう。しかし、それはあくまで副次的なものであって目的にはなり得ない。「少子高齢社会・人口減少社会」というが、飯田市の隣には下條村という少子化対策をして全国に名を馳せた村がある。飯田市には、数百億円の駅建設費を考える前にすることが有るように思うのだが。


 それにしても、リニア中央新幹線ができるとどうなるのか分からないことばかりである。Cルートが実現したとして、「リニア新幹線の南アルプス貫通ルートを予想・検証してみる(ケンプラッツ)」のような見積もりがある。いくつかの前提条件によるとはいえ、飯田駅が便利なところにできることすら保証されていない。


 飯田市議会は、「運動を進めてきた」というが、議会や飯田市のサイトを見ても疑問に答えてくれるものは何も見つからない。

 飯田市のサイトで「リニア中央新幹線」で検索をかけると、リニア中央新幹線に関わる提言への回答が8件確認できる。これは、同サイトへ提言を行うフォームやらまいか提言(政策提言)へ投稿されたものへの市からの回答である。この回答を見てみると、提言されたことに正面から答えようという姿勢が見られ、長野県の信州・フレッシュ目安箱への回答よりも格段にマシある。

 しかしながらその内容を抜き出してみると、

 高速交通網や道路基盤が決して整備されているとはいえない当地域にとりまして、リニア中央新幹線が実現することにより、
 ・地域振興と産業の活性化による経済的な自立や生活圏の拡大が図られる
 ・三大都市圏への通勤・通学が可能になるなど、多様なライフスタイルの実現が期待される
 ・当市が推進するUI(結い)ターンの促進につながる
 ・地域を担う子供たちや地域の持続的な経営といった観点からも必要

なのだという。だから

 リニア中央新幹線の早期整備と飯田駅設置の実現を目指し、長野県を含む関係自治体の協力のもと、様々な運動を展開しています。
といったもの。近くなれば、東京への従属が強まり、名古屋の生活圏に飲み込まれるかもしれない。

 飯田市のサイトには、これ以上に具体的な情報はない。ひょっとしたら、以前に予算をかけて具体的な試算をしているのかもしれない。しかし、リニア新幹線とは何かがより問われている今、そういった情報がネット上に無いということは、何も無いということに限りなく近い。

 これだけの情報で、場合によっては数百億円ともなりそうな駅設置費用の拠出を、飯田市民は市議会に委ねることだできるのだろうか。


 自分が知っている飯田市の姿は、今から15年も前の90年代初期のもの。バブルが崩壊し始めた当時、ロードサイドへの店舗展開が進んで飯田駅周辺は空洞化が進んでいた。それ以前を知っているという先輩は、グラスを傾けながら寂しくなったと嘆いていた。リニア中央新幹線の駅が飯田にできれば、街へ活気が戻ってくるのか、衰退に拍車がかかるのか。全長1kmにおよぶ駅構造物が市街を縦断すると街はどう変わるのか。天竜川の河岸段丘を利用して、市街部分は全線地下に設置するという選択肢があるのかもしれない。

 いくらでも疑問が湧いてくるのだが、メリット、デメリットを比較すること抜きで、建設推進を唱えるということは、即ち造る事が目的であって造った後までは考えていないと言うに等しいのではないか。市議会として推進決議をする前に、積極的に独自に様々な予測を行う為に、補正予算を決議する方がよほど前向きである。その結果としての数字を持ち合わせていれば、JR東海に対しても、周辺他地域や県に対してもより優位に立つ事ができるし、なによりも市民に対して信頼を得られるというものではないだろうか。

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2009年6月20日

リニア中央新幹線 ルート別の試算公表

<今までのエントリー>
 リニア中央新幹線を諏訪へ
 リニア中央新幹線と長野県
 リニア中央新幹線 Bルートが無理なわけ
 リニア中央新幹線 知事の質疑応答ほか
 リニア中央新幹線 Bルートが実現する可能性 その1
 リニア中央新幹線 Bルートが実現する可能性 その2
 リニア中央新幹線 2008年12月の動き その1
 リニア中央新幹線 2008年12月の動き その2
 リニア中央新幹線 2009年1月の動き
 山梨でリニア学習会
 リニア中央新幹線 2009年5〜6月の動き


リニア工事費でJR東海がルート別の試算公表
(信濃毎日新聞 6月18日)

 リニア中央新幹線構想で、JR東海と鉄道・運輸機構は18日、東京---名古屋間の工事費について、長野県側が求める諏訪・伊那谷回りのBルートは、同社が想定する南アルプスを貫くCルートを6400億円上回る5兆7400億円などとする試算結果を公表した。
 その結果、BはCより60キロ延び、所要時間は7分多くかかる。木曽谷回りのAルートはCより48キロ長く、6分差。工事費は5300億円増の5兆6300億円となった。

 18日、JR東海からリニア新幹線建設についての試算が公表された。この試算については、同日JR東海のHPに中央新幹線調査の今後のスケジュールと工事費等についてがリリースされ、その中に同名のPDFファイルが添えられた。どの様な見積もりが公表されているのかと期待したが、わずか6ページに簡単な表が並ぶだけのもので読み取れる事は少ない。

 計算根拠としてここに記されていない数字が多々あると思われるものの、かなり簡素な資料でこれだけでは数字がどこまで具体的なものなのか価値が疑われかねない。実際に、長野県知事は公表後の記者会見で以下のように述べており、公表された数字を曖昧なモノとして軽視しようとしていると取れる。この点で、JR東海はより中身の濃いものを出すべきだったのではないか。

 それは率直に申しまして評価のしようがないと思います。これはあくまで現段階でその程度の金額でいけるのではないかという推計がされているということでありまして、これまでいろいろな巨大事業を私見てまいりましたけれども、当初想定された金額から膨らむケースが結構多ございましたし、ずいぶん振れます。
(長野県のHP内6月18日知事会見より)


 この簡単な試算表から読み取れる事をいくつか考えてみる。

 Cルートが、延長286km、建設費4兆8000億円とあるので、1km当たり建設費が168億円となる。同様にBルートは、346km、5兆3800億円で1km当たり155億円。つまりCルートの方が単価が高い。これは、南アルプスにトンネルを掘るたの分と想定して間違いないだろう。CルートとBルートの違いがそれだけであるならば、大雑把に計算して3000億円以上が南アルプス貫通に必要な費用と見ていることになる。しかし、それでもトータルでBルートの方が高いというわけである。

 Bルート延長346kmの内、トンネル区間が248kmでトンネルの割合72%と計算できる。Cルートが81%なので、Bルートの方がトンネルが少ない。それでも7割というのは、ずいぶんトンネルが多いという印象を受ける。山梨の実験線はほとんどトンネルであり、山岳部は同様にほとんどがトンネルになるのだろう。また、関東平野部については、大深度の地下線で通すということであり、相対的に伊那谷部分のトンネルの割合は低くなる。

 車両費について、Aルートで3400億円、Bルートで3600億円、Cルートで3000億円とある。編成単位ということだろうから、1編成が100億円ならAルートで34編成、Bルートで36編成、Cルートで30編成。これだとかなり多く見えるので、1編成あたり200億円、それぞれ17編成、18編成、15編成ということだろうか。

 なお、この試算表には既に完成している山梨実験線の18kmが含まれているのかどうかが書かれていない。その点も、大雑把で適当な資料という印象を助長しているように見えてならない。


 関連したニュースに書かれていることについて、少しコメントしておく。

 中央リニア需要予測など試算へ 早期着工は不透明
(中日新聞 6月19日)

 (前略)経済効果は50年間で10.7兆円に上る。(中略)日本経済をどれだけ潤せるかについても考えるべきだ」と話す。
 この記事上では、メリットについてしか書かれていない。書かれていないだけなのか、語られなかったのか。メリットのみを強調して、巨大事業を推し進めるのは自分としては辟易なのだが。


 リニア3ルート試算提示、知事は静観姿勢 県内関係者は賛否両論
(中日新聞 6月19日)

 山田勝文諏訪市長は差額について「ずいぶん小さい。ほとんど変わらないじゃないか」と受け止めた。
 地元関係者として6400億円を「小さい」というのは厳に慎むべきだろう。格好の攻撃ネタである。

 県議会でのBルート決議案、修正や見送り模索
 政治的な流れということなのだろう。たいした中身の無い決議は不要とも思うが、もはや県を上げてお祭りのようにBルート推進という事態ではないということだろうか。

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2009年6月17日

リニア中央新幹線 2009年5〜6月の動き

<今までのエントリー>
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 リニア中央新幹線 Bルートが無理なわけ
 リニア中央新幹線 知事の質疑応答ほか
 リニア中央新幹線 Bルートが実現する可能性 その1
 リニア中央新幹線 Bルートが実現する可能性 その2
 リニア中央新幹線 2008年12月の動き その1
 リニア中央新幹線 2008年12月の動き その2
 リニア中央新幹線 2009年1月の動き
 山梨でリニア学習会


 あまりブログを更新していない中で、リニア新幹線関係の記事もだいぶ間が開いてしまった。この間小さなニュースがいくつか散見されただけだったが、JR東海による長野県下への説明会が始まるなど急にニュースが増えて来た。長野県に関係する部分を中心に簡単ながら記録に留めコメントを試みる。


 リニア構想 JR東海が29日、5地域の同盟会に説明
(信濃毎日新聞 5月22日)

 リニア中央新幹線構想をめぐり、県とJR東海は、諏訪、上伊那、飯田下伊那、木曽、中信の県内5地域の建設促進期成同盟会を対象に今月29日、初の「地元説明会」を開くことで合意した。
 JR側はこれまで「地域をまとめる県と話し合う」(松本正之社長)ことを基本姿勢とし、市町村などへの説明には消極的だった。
 2月9日のエントリーで触れた「JR東海と長野県の顔合わせ」以降この記事に至までにどんな経緯があったのか、ネットを検索しても公式記録やニュース記事は見当たらない。水面下での折衝の結果ということなのだろうか。JR東海が譲歩したと取ることができるが、自分にはそれで何が変わるのだろうかと疑問符がつくものの、結論を導く必要はないので経過を見守っておく。


 リニア中央新幹線:松本で初の地元説明 5促進同盟60人に---JR東海など /長野
(毎日新聞 5月30日)

 JR東海によるリニア中央新幹線の建設問題で、同社とリニア中央エクスプレス建設促進県協議会が29日、(中略)初めての地元説明会を松本市内で開いた。(中略)今後も順次開催するという。
 実際に開かれた最初の「地元説明会」の記事だが、以下のような事について「報告され」たとのこと。

 ・リニア開発の経緯
 ・環境への影響
 ・駅の構造やイメージ
 ・建設手順

 参加していた伊那市副市長は、「新しい話や具体的な話が少なかった。今後の調査結果が出た段階で説明会を開いてほしい」との感想を記者に述べたようだ。

 この副市長の発言に限らず、地元関係者の発言にはJR東海側の説明待ちとの受け身の姿勢を見受ける。先に長野県下でBルートへ意見が集約されたという経緯があるとはいえ、これまのでエントリーで述べてきたように地元側は圧倒的に不利と自分は見ている。積極的に地元側から働きかけない限り状況は何も変えられないのではないか。


 リニア「1県に1駅」 JR東海社長が方針表明
(日本経済新聞 6月8日)

 (前略)リニア中央新幹線の途中駅について「1県に1駅ずつ設置することが適切」との考えを明らかにした。
 途中駅の建設費は「受益の観点から地元負担と考えている」と説明。
 これは、愛知県知事が会長を勤めるリニア中央エクスプレス建設促進期成同盟会の総会でのR東海社長の発言と思われる。(→総会の開催について)最初の地元説明会から10日足らず。いかに長野県下の意向に影響力が無いかを示していると見る。

 これを受けて、次の長野県知事の発言についての記事につながる。


 「それで事業が進むのか!」リニア1県1駅構想で長野県知事
(産経新聞 6月10日)

 長野県の村井仁知事は10日の記者会見で、(中略)「中間地点の駅は経営的に大してプラスにならないとみているのは理解できるが、それで事業が進むのだろうか」と疑問を呈した。
 「理解できるが」が「進むのだろうか」という「疑問を呈した」という文脈が自分には理解し難い。

 記事から受ける印象そのままに読み取って良いのかという疑問も残る。この記者会見については長野県の公式サイト内知事会見6月10日分リニア中央新幹線について(1)に全文が掲載されているので稿を改めて検討してみたい。


 リニア中央新幹線:諏訪で説明会 「Bルート」求める要望相次ぐ /長野
(毎日新聞 6月11日)

 JR東海が想定する南アルプスを貫く「Cルート」に対し、出席者からは諏訪・伊那を通る「Bルート」を求める要望が相次いだ。
 山田市長は「地域を考慮した全体の発展を考えてほしい。我々は今後もBルートを求めていく」と話した。
 諏訪地区を対象とした説明会が9日に開かれたとのこと。地域の発展に考慮してBルートを推すことの無理については、既に一連のエントリーの中で述べてきた。


 リニア中央新幹線:「Bルート」決議へ---県議会 /長野
(毎日新聞 6月12日)

 リニア中央新幹線の建設問題で、県議会が諏訪・伊那を経由する「Bルート」の実現を求める決議をする方向で調整を始めたことが11日、明らかになった。
 上記にあるように、JR東海が「1県1駅」を表明したことなどから、議会として意思を示したいのだという。意思を示すというだけでは、子供にもできるただのポーズにすぎない。そこからは、議会は頑張っていますというフリをしておこうという以上のものはなんら感じ取れない。


 構内長さ1キロ、線路4本 リニア中間駅の基本構造が判明
(中日新聞 6月12日)

 JR東海が、各県などに示した駅の基本構造の概要が11日、明らかになった
 この記事によれば、リニア中央新幹線の中間駅として想定されている構造は、東海道新幹線などでよく見られる4本の線路の外側にホームが向かい合うもの。大雑把に見積もって20m前後の幅を持つ構造物が延々1kmあまり続くことになる。

 用地買収も大変そうだが、地域振興以前に地域分断のシンボルにならなければ良いのだが。このようなものを3つも作ろうというのだがら大したモノである。


 リニア新幹線Bルート要望相次ぐ 伊那でJR東海が説明会
(長野日報 6月14日)

 地元説明会は、13日に3地区目となる上伊那で開かれたとのこと。「Bルートでの建設を求める意見が相次いだ。」として、いくつかの意見が列記されている。この記事が説明会の状況をバランス良く伝えているのかという疑問が残るが、「コスト面だけでルート選択しているが、あまりにも独善的」「トンネル内で緊急事態があったとき、どうするのか」など、いずれも勉強不足を露呈する一方的なものと自分には思える。

 「人を物のように速く運ぶなら直線になるが、これからの時代は、もっと人間的ゆとりが必要。人間的、将来的な選択を」というものもある。リニア新幹線はいらないという意味なら、他の意見の中では異彩を放つまともな意見と言えなくもないが。

 伊那市長が、「(Bルートを願う)上伊那の心意気をしっかり(上層部に)伝えてほしい」と述べたとのことだが、心意気で誘致するレベルを越えていることを説明する必要がまだあるだろうか。


 JR東海、リニア建設費提示へ 3路線、8000億円増加ルートも
(日本経済新聞 6月17日)

 東海旅客鉄道(JR東海)は自民党が18日に開くリニア特命委員会(堀内光雄委員長)で、(中略)建設費の試算を提示する方針だ。南アルプスを貫通する直線ルートでは約5兆円の建設費が必要だが、諏訪・伊那谷を通るルートでは建設費がさらに8000億円前後増える見通しだ。
 18日に開かれるという会の内容が、前日に流れるのはどういうことなのだろう。Bルートに釘を刺そうという意味ともとれてなんとも胡散臭い。明日には、もう少しまともな情報が流れるだろうか。

 以前、かなり大雑把ながら7000億円という試算をしてみたが、それほど外していない喜んでよいだろうか。

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2009年2月11日

山梨でリニア学習会

 沿線住民でネットワークを 山梨でリニア学習会
(信濃毎日新聞 2月8日)

 JR東海が検討しているリニア中央新幹線計画をめぐり、長野など沿線5都県の住民が7日、山梨県甲州市内に集まり、必要性や課題を考える学習会を開いた。「財政、自然環境の破壊、電磁波などの問題を一緒に考えていく必要がある」とし、今後、5都県の住民によるネットワークを発足させ、多くの住民にリニア問題に関する情報を提供していくことで一致した。
 伊藤洋・山梨大名誉教授が講演。南アルプスを貫く直線(C)ルートより、諏訪・伊那谷回り(Bルート)を現在の新幹線方式で建設した方が「現実的」と述べた。大型公共事業の工事費は当初見込みの3倍程度になることが多いとし、同計画の建設費もJR東海が試算する約5.1兆円を上回る可能性があるとの見方を示した。リニア特有の磁場が人体に与える影響については「全く分かっていない」と説明。南アの長大トンネル掘削も技術面や環境面で課題があると述べた。

 技術、財源など課題が多く、それでいて具体的な試算や情報が不足しているので、情報が増える切っ掛けになることを期待したい。

 ただし、取り上げるのはこの後半部分、伊藤氏の講演内容に興味を惹かれたから。この中で氏は、中央新幹線はリニアではなく、在来の新幹線方式によるBルートが「現実的」と述べている。しかし、そうなるとJR東海にメリットがないために、中央新幹線は今進行している整備5線以降の話ということになる。整備5線ですらいつ開通するのか不明な状況では、実質的に中央新幹線建設反対という内容と言っていいだろう。

 もう少し具体的な内容が見てみたいと思ってネットを探したところ、学習会に参加されていた長野県議北山早苗氏の報告を見つけた。どこまでが北山氏の意見で、どこまでが伊藤氏の意見なのか曖昧ではあるが、気になるところにコメントしておく。


 リニア問題学習会(あおぞら)

 新幹線の代替路線で必要とも言われていますが、北陸新幹線がすでに代替路線として存在していて、この点でも必要性に疑問符がつきます。
 これは北山氏の見解だろうか。計画されている北陸新幹線が開通すればという意味かと思うが、現時点では北陸新幹線の敦賀以南について全く見通しがたっていない。災害時での一時的な振替という点では、全通すれば機能し得ると思うが、東海道新幹線の老朽化に伴う長期の代替という点では北陸新幹線では無理と自分は考えている。
 しかし、実際の事業費は3倍かかると言われています。
 これも北山氏の見解だろうか。JR東海の5兆という試算はアバウトなものという話が以前あったが、この3倍という数字の具体的な内容を聞いてみたい。しかし、実際にそうであればJR東海による事業実行は不可能であり、建設されないだけのこととも思うのだが。
 フォッサマグナが通っているところで、地質的にも大変心配である、
 これはどなたの発言なのか不明。ここで言う「フォッサマグナ」とは、「糸魚川ー静岡構造線」の誤りなのだろうかと思う。糸魚川ー静岡構造線にしろ中央構造線にしろ地質的に問題があるとしても、東西を横断するものは全てこの線を跨がなくてはならない。中央新幹線だけに当てはめるのはどのようなものか。この学習会でより具体的に現地の断層か何かを問題点として取り上げた可能性もあるが、このような言い方では「フォッサマグナ」という言葉が一人歩きしそうでかなり違和感を覚える。


 ここで触れなかった部分の数字については、それなりに根拠がありそうなものからドンブリに過ぎないのではと思われるものまで混ざっていると見る。全体としては、賛成とも反対とも判断しようがない。なお、私個人的としては、いまのところ賛成でも反対でもない。

<参考>
 フォッサマグナって何ですか?(フォッサマグナミュージアム)

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