哈爾濱金代文化展
11月8日まで新潟市歴史博物館で開催されている特別展哈爾濱金代文化展と、11日に新潟市万代市民会館で開催された同展記念シンポジウム中国金の建国と女真族の社会を見るべく、昨朝10年ぶりに新潟を訪ね、今朝方の夜行列車で戻って来た。
企画展開催中の新潟歴史博物館。新潟駅前からバスで20分ほど。
そもそもとして、金の時代について単独の企画展が見られること自体が恐らく画期的なことだろうと思う。その中で、目玉となるのが今回初めて招来されたというハルビン市の金上京歴史博物館の所蔵品。大小あわせて50点が並べられていた。
印象に残っている物をざっと書き出すと、刀、鍋、農具といった実用鉄器、銅製の火銃、銅鏡、銀製の馬具、シャーマン関連の楽器やお面といったあたり。ガラス製の碁石や現代の中国将棋の駒と同じような形の銅製の駒も展示されていた。
また、金代史の研究者としても知られた故三上次男氏のコーナーが設けられ、磁州窯陶器などが展示されていた。
11日の午後に開催されたシンポジウムの基調講演並びに報告は次の4つ。
・考古学から見た金代女真(臼杵勲)
・金代北東アジアの鉄器とその生産(村上恭通)
・金代北東アジアの銭貨流通について(三宅俊彦)
・金代の陶磁器は金朝の陶磁器か?(弓場紀知)
臼杵氏の報告は、中国からロシアにかけての金代城市遺跡発掘などの成果を基に、従来の金のイメージを問い直すというもの。村上氏は、古代から金代に至る北東アジアの製鉄と鉄製品を概観しながら、製鉄炉や製品の質などから中国の影響とそれ以外の地域との関係などについて具体的に考察したもの。三宅氏は、出土した銭貨の内容から金代の銭貨流通の状況の復元を試みるもの。弓場氏は、従来の研究で位置づけが難しかったという金代の陶磁器について再考したもの。鉄器、銭貨についての報告を聞いたことはあまり記憶に無く新鮮な話だった。全体を通しても、金代という情報の不足している時代についてこれからの盛り上がりを期待させる興味深いものだった。
特別展の図録
新潟市・ハルビン市友好都市提携30周年記念
哈爾濱金代文化展
---12世紀の中国、北方の民族が建国する---
新潟市歴史博物館2009年9月
シンポジウム後佐藤氏より下記2点頂戴を頂戴した。また、ブログでいつもお世話になっている関尾先生、モンゴルの考古学について度々名前を出させて頂いている白石先生にお目にかかることができ、関尾先生からは下記報告書を頂戴した。また両氏よりお話を頂けるなど楽しい時間を頂戴した。ありがとうございました。
環日本海研究年報 第16号(2009年2月) 抜刷
西夏語文献における「首領」の用例について---法令集『天盛禁令』の条文から
佐藤貴保
西北出土文献研究 第7号(2009年3月)
呉震先生追悼吐魯番学特集
「西州回鶻某年造仏塔功徳記」小考
栄新江/植松知博(訳)
麹氏高昌国の灌漑推理と税役
荒川正晴
「唐咸亨五年(674)児為阿婆録在生及亡没所修功徳牒」をめぐって
町田隆吉
大谷文書・旅順博物館文書中の吐魯番出土霊芝雲型文書の一例
片山章雄
トゥルファン出土、「五胡」時代文書の定名をめぐって---『新獲吐魯番出土文獻』の成果によせて---
關尾史郎
論説・ノート
S.5692に見える亡名和尚絶學箴に関連して---ある僧のノートから見る敦煌仏教の実相 ---
玄幸子
ロシア蔵西夏文『天盛禁令』第2585号断片について
佐藤貴保
大谷探検隊将来「西厳寺蔵橘資料」について
橘真敬
西北出土文献研究 2008年度特刊(2009年3月)
本調査記録
蘭州・武威・張掖・高台・酒泉・嘉峪関 調査日誌(2008年12月23日〜29日)
高台・酒泉・嘉峪関魏晋墓に関する問題点と課題---漢代の伝統的なモチーフを中心として---
北村永
甘粛出土魏晋時代画像磚墓、壁画墓等に見える記号的図像について
三崎良章
河西地区出土文物における朝服着用事例に関する一考察
小林聡
酒泉十六国墓前室北壁上段壁画天馬図運足表現
高橋秀樹
高台駱駝城に関する諸問題
市来弘志
予備調査記録
新疆クチャ磚室墓の予備調査記録
白石典之
ノート
遼陽壁画墓の現状と研究の可能性---2007年8月・2008年8月の調査から---
三崎良章
高台県の古墓群と主要出土文物をめぐるノート
関尾史郎
| 固定リンク
| コメント (6)
| トラックバック (0)
最近のコメント