2013年9月 8日

西夏語研究新論

20130908

西夏語研究新論
西田龍雄 著
西田龍雄博士論集刊行委員会 編
ISBN978-4-87974-669-6
松香堂書店 2012.9


遅ればせながら、昨年逝去された西田先生の論集を購入した。論文27編の内、私には24編までが初見で興味深いタイトルが並んでいる。一部から三部までだけで566ページ、巻末の付録まで併せると600ページを超える大著で、携行もままならないのでなかなか進まないがなんとか年内には読破したい。

以下参考までに目次を抜き書きした。

第1部 序論
1 西夏語研究を顧みて
2 漢字周辺の文字と西夏文字
3 西夏文字---漢字を超えた表意文字の傑作---
4 死言語の復元と表意文字の解読---西夏語と西夏文字の特性---
5 西夏文字解読の新段階
6 西夏文字新考
7 西夏文字の特性---その文字組織の新研究---
8 西夏語研究雑考

第2部 本論
9 西夏語仏典目録編纂上の諸問題
10 西夏語訳法華経について
11 西夏語研究の新領域
12 西夏語文法新考
13 西夏語訳六十四卦と鍼灸書
14 西夏語文法新探
15 黒水城出土西夏文献について
16 西夏語研究と法華経(I)
17 西夏語研究と法華経(II)
18 西夏語研究と法華経(III)
19 西夏語研究と法華経(IV)
20 中文訳『西夏語の研究』への序文
21 西夏語の誕生とその系譜
22 西夏語(三省堂『言語学大事典』)

第3部 書評論文
23 史金波・黄振華・聶鴻音著『類林研究』
24 林英津著『夏訳《孫子兵法》研究』上册・下册
25 西北第二民族学院・上海古籍出版社・英国国家図書館編纂『英蔵黒水城文献』1
26 西北第二民族学院・上海古籍出版社・英国国家図書館編纂『英蔵黒水城文献』2,3,4
27 西北第二民族学院・上海古籍出版社・英国国家図書館編纂『英蔵黒水城文献』5

論文等初出一覧

付録
座談会「学問の思い出---西田龍雄博士を囲んで---」
西田龍雄博士 略年譜
西田龍雄博士 主要著作目録

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2009年4月 1日

シュトヘル 1

BCS2529
シュトヘル 1
伊藤悠 著
ISBN978-4-09-182529-2
小学館 2009.4

 昨日発売になったシュトヘルの第1巻。西夏がモンゴルに滅ぼされようとしている時代の西夏文字を巡る物語という、当ブログのためにあるような希少な物語を描いている。ビックコミックスピリッツに不定期で連載中。

 物語の背景では、ある程度事実に近いと思われる歴史を追っているものの、登場人物や語られているエピソードは大半が架空のもの。西夏文字が時々大量に出てくるので、勉強にちょうど良い。


 ざっと見て気になった所を紹介する。連載時と比べて明確に修正されているところはあまり見つからなかったが、興味深いところが一か所あった。それは、以前紹介した玉音同についてのところで、見開きページ(単行本では206ページ)に玉板に記されたという西夏文字が書かれている部分。そこには、連載時との違いで面白いか所が2つある。

 ひとつは、右上端。もともと原稿に書かれていて、連載時には断ち切られてしまったということかもしれないが、そこには縦に5つの西夏文字が書かれている。文字の右半分が切れてしまっているものの、文字詰めが他と異なることから、見出しかなにかと思われた。可能性のありそうな文字を引きながら、字典に引用されている文章に当たった所「重唇音一品」と書かれたものを見つけた。重唇音は、p、ph、b、m音の子音のことで、その左に並んでいる西夏文字がbで始まるものであるので、「重唇音一品」で正しいと思われる。

 もうひとつは、字典に並べられている西夏文字のところどころに小さな丸が書き加えられていること。実際の音同(あるいは同音)の上に書かれた記号を写したものと思われるが、残念ながら該当する音同の部分の文面が解らないので、どういう意味があるのかは解らない。


 カバーとカバーの内側部分に、同じ西夏文字2文字が書かれている。これは、以前紹介した主人公の名前ウイソである。

| | コメント (5) | トラックバック (0)

2009年3月15日

第9回遼金西夏史研究会大会

 昨日今日と、京都大学にて開催された遼金西夏史研究会の発表を聞きに行ってきた。自分が聴講させて頂くようになって早4年目となる。

 今年は、以下のような7本が予定されていたが、残念ながら発表者体調不良のために見城氏の発表が無かった。

 自分の興味範囲に近いもの、わりと隣近所のもの、広汎な話題を含むもののほか、中世仏教やシベリア考古学のように全く縁の無いものが含まれている。とはいえ、西夏とその周辺に無縁というわけではなく、またそれ以前として内容そのものが興味深いものだった。

尊勝陀羅尼と日本の古代・中世仏教
 上川通夫

契丹・宋間の澶淵体制における国信使と外交儀礼
 古松崇志

東・西・南シベリア出土遼・金代の中国系銅鏡とその考古学文化
 枡本哲

2008年度敦煌莫高窟・楡林窟調査報告(敦煌壁画部分・仏教美術)、同(西夏文題記)
 向本健・荒川慎太郎

ハーバード大学での中国社会史研究の現状
 飯山知保

朝貢、貿易、あるいは投資---9・10世紀敦煌の使節派遣---
 坂尻彰宏

後晋出帝政権の性格---五代政治史研究
 見城光威

 この他に、研究会として初めて発行した54ページとなかなかの厚みのあるニューズレターが配布されている。


 発表以外では、サイトオープン当初よりリンクを貼っていた、小高裕次のホームページの小高さんに初めてお会いできた。予期していなかったので、かなりビックリしたが、西夏に絡み興味深い話をいろいろとお伺いさせて頂いた。以前からこのブログなどをご覧になられているとのこと、汗顔の限りである。

 大会終了後は、引き続いて西夏語の勉強会が開かれた。短時間ながらも西夏語文書の読解のほか、シュトヘルや夏漢字典の問題など中身の濃いひと時となった。

 来年は、3月21、22日に東京で開催予定とのこと。


 参加者の方より以下の冊子を頂いた。いつもながらありがとうございます。

大英図書館所蔵夏蔵対音資料Or.12380/3495について
 『京都大学言語学研究』第27号 P.203-212の抜刷り
 荒川慎太郎

契丹の旧渤海領統治と東丹国の構造
 史學雑誌 第117編第6号 P.1-38の抜刷り
 澤本光弘

突厥トニュクク碑文箚記---斥候か逃亡者か---
 待兼山論叢第24号史学篇 別刷
 鈴木宏節

契丹国(遼朝)の于越について
 立命館文学 第608号 抜刷
 武田和哉

| | コメント (2) | トラックバック (0)

2008年12月 6日

西夏地理研究

西夏地理研究
楊蕤 著
ISBN978-7-01-007113-8
人民出版社 2008.7

 新刊案内で見かけたので早速取り寄せた。政治、経済、社会など西夏に関わる広汎な歴史地理を扱った論文集。

 プロフィールによると、著者は黄土高原の直中、陝西省横山の出身で現在北方民族大学副教授とのこと。西夏地理研究としては、まさに地元の人。

 目次をひととおり書き出して、図版などをざっと眺めたところだが、宋や遼との国境問題についての論考は是非読んでみたいところ。西夏文字地名表記なども興味を惹かれる。欲をいえば、地理研究なのだから地図をもっと沢山載せて欲しかった。

 定価35元のところ、書虫で取り寄せて2180円。全473ページの大部な論文集が、このくらいまでの値段で手に入るのはありがたい。


<目次>
 緒論
  1. 関于西夏学、研究資料、基本框架及基本思路
  2. 学術史回顧

 1章 疆域的形成及演変
  1節 定難軍的五州之地
  2節 宋夏疆界的演変
   1. 西夏建国初期的宋夏疆界(1038-1067)
   2. 宋神宗親政与“元祐分疆”(1067-1093)
   3. “紹聖罷議”与北宋対西夏疆土的進一歩蚕食(1094-1127)
  3節 夏遼疆界
   1. 西夏与遼朝東段疆界
   2. 西夏与遼朝西段疆界
  4節 夏金疆界
   1. 西夏東北縁的夏金疆界
   2. 西夏南縁的夏金疆界
  5節 西夏的西縁疆界
   1. 沙州及沙州回鶻的問題
   2. 伊州問題

 2章 《天盛改旧新定律令・司序行文門》与西夏政区
  1節 《天盛改旧新定律令・司序行文門》中的地名翻訳及其地望考証
   1. 《天盛改旧新定律令・司序行文門》中西夏地名的翻訳
   2. 有関地望考証
  2節 《天盛改旧新定律令・司序行文門》反映的西夏政区
   1. 関于西夏政区的類型和数目
   2. 関于西夏政区的排序和層級問題
   3. 西夏政区的辺界
  3節 西夏的基層組織与社会
   1. 漢式“郷里”制度対西夏基層社会的渗透和影響
   2. 西夏基層社会中的部落制
   3. 西夏基層社会中存在“一国両制”的原因探析
  4節 西夏政区特点之帰析
  5節 《天盛改旧新定律令・司序行文門》反映的西夏地方官制
   1. 学術背景
   2. 《天盛改旧新定律令・司序行文門》中西夏地方官制的信息

 3章 自然地理(上):気候状況
  1節 相関的学術背景和漢文史料所反映的西夏気候信息
   1. 唐宋時期中国気候変遷的相関討論
   2. 漢文史料所反映的西夏気候信息
  2節 《月月楽詩》和《聖立義海・月之名義》所反映的西夏気候
   1. 関于資料反映的地理範囲和研究的可行性分析
   2. 《月月楽詩》和《聖立義海・月之名義》所反映的物候現象
   3. 従古今物候現象的対照看西夏気候的特点
  3節 水旱等気象災害与西夏気候的乾湿状況
   1. 西夏的水旱災害概況
   2. 西夏気候乾湿状況的初歩估計
  4節 相関問題的討論
   1. 気象災害与西夏社会
   2. 気候与北方民族南下---以党項為参照
  5節 簡短的結論

 4章 自然地理(下):生態与植被
  1節 関于研究資料和研究方法
  2節 西夏分区的植被状況
   1. 鄂爾多斯地区
   2. 夏宋(金)沿辺地区
   3. 河套平原
   4. 阿拉善高原
   5. 河西走廊地区
  3節 西夏境内的野生動物
  4節 西夏時期自然環境遭受破壊之表現及西夏人朴素的環保意識
   1. 西夏時期自然環境遭受破壊之表現
   2. 西夏人朴素的環保和生態意識
  5節 小結

 5章 経済区的形成及其相関問題
  1節 基本概念、研究状況和存在的問題
  2節 経済区形成的緒因素分析
   1. 自然条件
   2. 宋夏沿辺的居民結構
   3. 党項内附以及宋夏双方対沿辺人口的争奪
  3節 経済区的形成
   1. 畜牧区: 鄂爾多斯乾草原区和阿拉善高原荒漠区
   2. 半農半牧区:宋夏沿辺和河西走廊地区
   3. 農耕区:寧夏平原
  4節 相関問題的討論
   1. 内附党項従“客人”---“主人”的轉変
   2. 宋夏沿辺的生産方式与黄河氾濫

 結語
 附録1 《聖立義海》
 附録2 《月月楽詩》的俄訳文之漢訳
 附録3 西夏文資料中的西夏地名
 参考文献
 地名人名索引
 (地図7面、表33点の索引は省略)

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2008年10月18日

夏漢字典


夏漢字典
李範文 編著
賈常業 増訂
ISBN978-7-5004-2113-9
中国社会科学出版社
1997年7月第1版、2008年6月第2次印刷

 11年振りに増補改訂なったという夏漢字典が届いた。A4版で約1200頁、ハードカバーで箱入り。著者李範文氏のほか、西田龍雄氏、クチャーノフ氏などの写真入り。

 鞄に入れて鞄が耐えられるだろうか。持ってなかったのと言われそうだ。はい、持ってませんでした(汗

 扉対向に「獻給寧夏回族自治區 成立五十周年」という一文が入っている(「献給〜」は「〜にささげる」「〜に贈る」)。記念事業だったのか?


<参考>
 成立50周年を迎える寧夏回族自治区
(北京週報 9月23日)

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2008年10月 7日

10月6日購入書籍

アイハヌム2008
加藤九祚一人雑誌
加藤九祚 編著
ISBN978-4-486-03708-8
東海大学出版会 2008.10

 今号は、本文230ページ余りがほぼ全てチムールの一代記で、チムール以後のムガール帝国初めまでの話が添えられている。「はじめに」によれば、原著者はキルギスのラフマナリエフ氏で、紀元前からオスマン帝国に至までを対象とした大著『チュルクの帝国』の中から、第6章「アミル=テムル」を訳出したものとのこと。

 目次は以下のとおり。

 14世紀後半のマーワラーアンナフル
 チムールの登場
 マーワラーアンナフルの統一
 モゴリスタンへの遠征
 ホラズムへの遠征
 チムールとトクタミシュ
 東部イランの征服
 西イランの征服
 インドの征服
 シリアとエジプトへの遠征
 チムールとバヤゼド
 サマルカンドへの帰還。中国への遠征。チムールの死
 その時代の文脈から見たチムールの肖像
 チムールの軍隊の構成
 行政組織
 国際関係
 文化と宗教
 チムール帝国の後継者たち
 大モゴールの帝国
 訳者追録

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2008年8月 3日

契丹の旧渤海領統治と東丹国の構造(感想)

 先月発売された史学雑誌 第117編 第6号(史学会)を購入。掲載文はリンク先のとおりだが、自分の目当ては研究ノートとして集録されている澤本光弘氏の一文、契丹の旧渤海領統治と東丹国の構造---「耶律羽之墓誌」をてがかりに---

 本論は、遼金西夏研究の現在(1)に掲載されている論文、契丹(遼)における渤海人と東丹国---「遺使記事」の検討を通じての中で重要な役割を果たした耶律羽之の墓誌を詳細に検討し、東丹国についてより深く検討しようというもの。

 東丹国は、契丹によって滅ぼされた渤海国の故地を治めるために作られた契丹の傀儡国、ないし衛星国のことで、契丹皇帝の長男耶律突欲(倍)が王とされた。しかし、その耶律突欲が後唐に亡命したり、反乱が続いたりして短い期間で国としての実態は無くなったと評価されてきた。これに対して、10世紀末近くまで東丹国の実態があったとする論文が既にいくつか出されているとのこと。本論もそれを肯定している。


 本論の検証が深まれば、東丹国についての歴史が書き換えられるだけでなく、契丹国の地方制度やその成立過程についても見直されることになるのではと思うのだがどうだろうか。また、本論には当該墓誌、35文字38行、千数百文字全文とその読み下し文が掲載されている。日本ではほとんどお目にかかることのない長文の墓誌に、何が書かれているのかということだけでも面白い。

 筆者は、おわりにの中で本論は東丹国に限定した考察であることを述べた上で、今後の可能性について触れている。東丹国のことだけでなく、契丹の政治や社会について今後でのような論が出て来るのか楽しみにしておく。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2008年7月27日

ペルシア語文化圏における十二支の年始変容について(感想)

 デジタル・クワルナフで馬頭さんが紹介されていた史林 第91巻 第3号(史学研究会)。自分は、諫早庸一氏のペルシア語文化圏における十二支の年始変容について---ティムール朝十二支考---が読んでみたいなと思い買ってみた。

 本論は、チュルク・モンゴルによって草原からペルシャ語文化圏へもたらされた十二支が、ペルシャでいつ頃変化を遂げたのかというもの。本論のいうところの十二支は、60年周期の十干十二支ではなく、12年周期の十二支。そして日本ではないので、12番目はブタとなる。先日エスファハーンのところで少しだけ触れたが、ペルシャ語文化圏はイスラム化以前からの伝統として、春分の日を新年の始まりとしてノウルーズと呼んている。

 本論によれば、中国の影響が大きいというモンゴル帝国の暦は、現在の旧正月と同じように立春前後に新年が始まるもので、イル=ハン朝の暦も同様であったとのこと。モンゴル時代の名残として、イル=ハン朝滅亡後も行政文書の年表記に十二支を加える習慣が残ったが、いつの頃からか古い伝統と混ざり合い、十二支の表記の上でも新年はノウルーズからに変わっていったという。この変化がいつ頃起きたのか、もう少し具体的に言えば、ティムール朝の前半なのか後半なのかというのが本論が目指したもの。


 本論は、イル=ハン朝からティムール朝にかけてのペルシャ語文献の中から、十二支が使われている所を集めた上で論考されている。資料として約100例にのぼる一覧表が添えられている。自分は、中国圏からは離れた所で、十干十二支でない十二支が使われていた実例を見てみたいと思っていたのだが、この表だけでも十分に面白かった。

 いままで、さほど暦に興味を持っていた訳ではないので、ほぼ知らなかった世界ということになるが、本論の注によればそもそも十二支の発祥はいまだに良く分からないという。ほぼ無前提に中国で始まったものと思っていたので、これもちょっと驚き。

 また、質が随分と違ういくつもの暦を並べて比較するのに、どれだけの計算が必要だったのかが想像できない。それだけも本論はなかなかに力作と思うのだが、馴染みの無い世界を見せて頂いたということで面白い一論だった。


 イランは、今でもイラン暦とイスラームのヒジュラ暦という性質の全く違う暦が同居している。そこに、中国由来の暦が持ち込まれた時、大混乱に陥ることはなかったのだろうか。

| | コメント (2) | トラックバック (0)

2008年7月26日

Newton 2008年9月号

Newton 2008年9月号
雑誌07047-09
ニュートン プレス 2008.9

 流行モノということで、「三千年の歴史を経て,いま 北京」と題して、70頁余りの特集を組んでいて、以下の4部で構成される。

 1 変貌と悠久の首都
 2 北京3000年---波乱の歴史を追う
 3 北京の世界遺産---写真とイラストでめぐる
 4 特別取材「北京の科学」

 1部は、グラビアページで「鳥の巣」や北京空港の新しいターミナルビル、景山から撮った故宮(5年前撮影は古くないか?)などの写真がならぶ。そこには自分の知っている北京と知らない北京が入り交じる。

 2部は、戦国燕国から現代までの北京の歴史。隋唐代の龍舟、モンゴル時代の大都、清代の天安門など復元イラスト(大都のイラストはこちらで見られる)に加えて、契丹、女真、モンゴル、満洲族の辯髪比較が載っている。

 3部では、周口店、万里の長城、明十三陵(世界遺産としては、明・清朝の皇帝陵墓群)、故宮(世界遺産としては、北京と瀋陽の明・清朝皇宮群)、頤和園、天壇が紹介されている。闇夜にライトアップされた天壇の写真がちょっと良い。

 4部は、超伝導研究、中国初という月探査衛星、天文台の話。ここに、ワンフーと名付けられた月のクレーターが紹介される。ワンフーとは、明の時代にロケットを作って宇宙を目指したというワンフー(万戸あるいは王富)に因むという。この人物のことは全く知らなかった。詳しくは、望夢楼明朝のロケット操縦士ワン・フー氏の謎を参照されたい。


 歴史的な部分ということでは、2部と3部に40頁あまり割かれ、著名な方々が協力者として名を連ねておられる。あまり調べたことがない時代などは、自分の知らない情報がわりと載っているのだが、細かい所ばかりでなく突っ込み所が散見されるが、突っ込み所なのか、自分の勘違いなのかを調べてみるとなかなか良い勉強なった。とりあえず、中国の歴史地図集をほぼコピーしただけの歴代王朝の変遷図と、全般に「民族」という言葉で説明しようとしているところはどうにも違和感あり。

| | コメント (2) | トラックバック (0)

2008年4月26日

4月26日購入書籍

 給料日直後というのでもないのだが本屋で纏め買いをした。あれこれと書架を見て回ったのだが、買ったのはいずれも既にどなたかがブログでコメントされたものばかり。最近の購買傾向が現れているといえなくもない。

夕陽の梨
仁木英之 著
ISBN978-4-05-403631-4
学習研究社 2008.5

 マルコさんが南極漂流者で紹介していたもの。朱温、つまり唐を滅ぼした朱全忠を主役にした小説とのこと。自分の守備範囲に近い所でマイナーな人物を主役にした小説は大歓迎である。ということで、マルコさんのコメントに従い、マルコさんの感想を読まずに買ってきた。久しぶりの時代小説。さてどのくらい楽しませてくれるだろう。

 

シリウスKC
将国のアルタイル 1巻
カトウコトノ 著
ISBN978-4-06-373112-5
講談社 2008.4

 馬頭さんがデジタル・クワルナフで紹介していたコミック。十字架をシンボルとするドイツっぽい帝国と、三日月をシンボルにした中東イスラム的で13人の軍人による寡頭制の国が同居するという大陸が舞台。主人公はその13人の軍人の一人。インディアンかロマかというような遊民も登場する。シンボルではあっても今のところ宗教的な話題はない。仮想モノなのだが、こういう凝った設定は楽しい。

 

史林 第91巻 第2号
ISBN978-4-490-30644-6
史学研究会 2008.3
内容な以下のとおり

論説
仁寿殿観音供と二間御本尊---天皇の私的仏事の変貌---/斎藤涼子
シャマン=デュポンテスの政治思想と敬神博愛教の成立---フランス革命期における融和的「市民宗教」の誕生---/山中聡
関東州阿片制度の制定と中国商人---関東州の統治を巡る一考察---/桂川光正

研究ノート
東胡考/吉本道雅
「シルクロード史観」再考---森安孝夫氏の批判に関連して---/間野英二

書評
池本今日子著『ロシア皇帝アレクサンドル1世の外交政策---ヨーロッパ構想と憲法---』/梶さやか
高橋秀直著『幕末維新の政治と天皇』/井上勝生

 一番の注目は、間野英二氏の一文。これについては、さとうさんが博客 金烏工房で紹介している。詳しくはそちらを参照して頂きたいが、これは森安氏がシルクロードと唐帝国の中で展開した間野氏批判への反論である。間野氏の一文では、どこまでが是でどこまでが非で、分からないことは分からないと書く柔軟な内容となっており、氏を支持したいと思わせる内容だった。森安氏には、是非一般の目に触れるところでのコメントを期待したい。

 吉本氏の「東胡考」は、匈奴に滅ぼされたという東胡とは何かというもので、史書の検討を中心に考古学的な部分にも言及している。氏も文中でコメントされているが、まだ仮説を構築中という感じではあるが、中国の歴史の中で遊牧民の勢力がどこまで遡れるのかなど興味深い一論だった。

 

史學雜誌 第117編 第3号
ISSN 0018-2478
史學會 2008.3
内容はこちらを参照

 まんじゅさんが綿貫哲郎'S tere inenggiで紹介されていた一冊。佐々木史郎氏が清朝のアムール政策と少数民族について書評を書かれており大変参考になった。

 

大航海 2008 No.66
特集 中国 歴史と現在
新書館 2008.4

 これも、さとうさんが博客 金烏工房で紹介されていた一冊。時宜的な一冊とも思えるのだが、さとうさんによれば餃子もチベット騒動も出てこないとのこと。目次を見るとわりと刺激的な題目も並んでいるので、近々ひと通り読んでみる予定。

| | コメント (4) | トラックバック (0)

より以前の記事一覧