2008年11月23日

数学ガール 上

MFコミックス
数学ガール 上
結城浩 原作
日坂水柯 作画
ISBN978-4-8401-2292-4
メディアファクトリー 2008.11

 数学が好きな高校生を描いた学園ラブコメ。色んな本があるものだと関心した。

 素数、虚数、因数、行列といった言葉が並び、数式、論考や解説が誌面の大半を占めるという風変わりな作品。久しぶりに高校数学に触れた。もともと数学は嫌いではなく、というより好きな科目だったので、懐かしくもあり、多少ぼけた頭が活性されたような気もする。

 本作は、原作者結城氏のサイトThe Essence of Programmingから始まり、書籍化を経てコミック化されたものとのこと。Web版を同サイトからを読むことができる。

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2008年8月 8日

(書評)モノから見た海域アジア史

九大アジア叢書 11
モノから見た海域アジア史
モンゴル〜宋元時代のアジアと日本の交流
四日市康博 編著
ISBN978-4-87378-966-8
九州大学出版会 2008.4

 本書は、文部科学省特定領域研究のひとつ、東アジア海域交流の中の海域比較研究の成果の一部として纏められたものとのこと。目次は、上記書名リンク先を参照されたい。目次にあるように、石材、木材、陶磁器、貴金属を素材として交易や交流を説き起こした5つの章と、各地の考古学者を中心とした8人と編者によるQ&A形式の対談を集録した第6章よりなる。Quiet NahooAbita QurMarginal Notes & Marginaliaやまやまの日々雑記の各ブログで紹介されたのを見て、面白そうと思い読んでみた。

 1から5章について、簡単には以下のような内容。第1章は、木材と組み合わせて使われた碇用の石材、碇石について。遺物として残る碇石の形やその広がりから、それを用いた船を想定してその交流の広がりを考察したもの。第2章は、仏教上の交流によって日本から宋へ送られた木材とそれに関わって交わされた文献に関わるもの。第3章は、貿易に関わった陶磁器の中でも交易品そのものとしてよりも、物を入れるために使ったとして著者が言うところのコンテナ陶磁について、その遺物の広がりや産地について考察したもの。第4章は、交易品としての陶磁器の中でも中国龍泉窯の青磁について、砧青磁と呼ばれる花瓶を中心にその盛衰を追ったもの。第5章は、モンゴル時代について中国から中近東に至る銀錠や銅銭の流れについての考察となっている。


 1から5章は、各30頁前後で本書が新書版ということもあり、さほど多い頁数ではない。しかしながら、特定の物に絞ることで、交流の状況を具体的かつ簡潔に纏めている。物としての範囲は狭いものの語られる地域としては日本各地から中国、東南アジア、中近東という広がりを持ちスケールは決して小さくない。自分の興味的にはどちらかというと二の次ということもあり、文化経済な領域は概念的抽象的に過ぎるとなかなか捉えきれないということが多い。本書は、その絞り方と読み易い文章で自分にも把握し易い内容になっている。その上に、碇石とか砧青磁とかどれもさほど馴染みのない物ばかりなので、思いのほか興味深く読むことができた。

 第6章は、上に書いたように対談形式で各4頁程度。やや短く物足りないと言えなくもないが、絞ったテーマについてわりと先端的な考古学の話題が上手く纏められているように思う。こちらは、国内の考古学中心の話だが、硫黄、夜光貝、十三湊と7つきりのテーマながら興味深いものを並べている。


 本書は、文科省関係のプロジェクトものではあるが、論文集的な報告書ではなく、どちらかというと一般向けを意識した入門書という内容。タイトル通りで、特定のモノから海域を通した交流を見て行こうというもの。自分には、その物が具体的にあることでその交流の流れが想像し易い内容だった。考古学的な話が中心なので、波乱も盛り上がりもない話ではあるが、プロジェクトに意図されているような内容を伝えるための入門書として、十分に面白い一冊だった。

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2008年3月24日

歴史読本 5月号

歴史読本 5月号
織田・豊臣の城を歩く
雑誌09617-5
新人物往来社 2008.5

 特集が織豊期の城ということで、迷わずに買ってきた。北は岩手県の福岡城から、南は高知県の中村城、熊本県の宇土城、西は韓国の順天倭城までを範囲として70余りを紹介している。平城、平山城も対象としているが、山城歩きの資料として有り難く利用させて頂く。

 さらに織豊系城郭 見どころ辞典のタイトルでポケット版の附録がある。こちらには、本誌と重ならない90あまりを集録。本誌掲載分には、ほとんどに平面図がつくが附録はまちまち。織豊城企画で韓国まで紹介するのは珍しいだろうか。今日、以下のようなニュースを見かけた。

 朝鮮半島「倭城」の石垣本格復元(佐賀新聞)

 順天倭城の石垣復元に名護屋城博物館の高瀬哲郎氏が関わっているとのこと。同記事と歴史読本には、ともに天守台の石垣の写真が載っている。角度は違うように見えるが、歴史読本が改修前、ニュースが改修後。

 韓国は、隣国でありながら今だ未訪の国。本場の冷麺を食べに一度行きたいという思いもあるのだが、南部の倭城、西南部の古墳巡りというのも面白そうだ。


 膏肓記桐野作人さん連載の信長---狂乱と冷徹の軍事カリスマ。今月は、兄信広、弟信勝など親族との興亡を解説した「兄弟間抗争に勝ち抜く」。

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2008年3月 9日

朽木谷

 いよいよ春到来を思わせる晴天の一日、泰巖宗安記で紹介されていた講演会戦国時代のお城は面白いを聴くため、まだ行ったことの無かった朽木谷へと出かけた。朽木の中心部へ京都から直接行くために、京阪電車の終点出町柳駅前を朝8時前に出るバスに乗る。最近では鯖街道の名で知られた道、織田信長が越前朝倉攻めの失敗から撤退に使ったルートを逆に辿る。大原を抜け、峠を2つ越えて朽木まで1時間と少し。日差しは春なのに景色はまだかなり白かった。


 谷を南から北へと貫いて琵琶湖へと流れ出る安曇川。日差しの強さと雪景色が同時に収まった、珍しく撮った時のイメージそのままの一枚。


 講演会は午後からなので、その前にあちこちと散策。江戸時代に朽木を治めた朽木氏の陣屋跡には、郷土資料館が建ち、陣屋や山城のジオラマ展示のほか山城の資料が手に入る。


 朽木中心部の北に聳える西山。この山頂にある西山城跡に登るのが一番の目的だったのだが・・・。地図によれば山の標高は343m、麓との標高差は170mほど。資料館の方の説明によれば、近年案内板の整備が行われ、城跡まで40分ほどの道のりとのこと。


 ところが、いざ登城道に取り付いてみたところご覧のとおり。30cmほどの積雪が残り、場所によっては50cm以上に吹き溜まっていた。雪山を歩く装備などあるわけもなく、後日のリベンジを期して征服を断念した。


 講演会は基調講演が2つで、奈良大学の千田氏による「戦国の城は面白い」と、朽木村史編さん室の石田氏による「織田信長の朽木越と城館ネット」。

 千田氏は、戦国時代の城に関わる話をいろいろとされたが、最初の話題が「城跡から桶狭間の戦いを再評価する---愛知県桑下城の調査」というもの。桑下城発掘調査の写真を見ながら、桶狭間の戦いの直前に信長が桑下城を奪還したことの意味を説かれていた。桑下城は、愛知県瀬戸市にあったという城。桶狭間関係で瀬戸市の城というと、品野城を挙げたものは見たことがあったが、桑下城はその品野城と川を挟んで向かい合う位置にあるらしい。

 石田氏の方は、朽木周辺の城館の紹介の次に、信長、秀吉、家康の撤退路をそれぞれ紹介されていた。一度実体験のため、敦賀からの撤退路を歩いてみるというのも面白そうだが、朽木までで56km。ちょっと遠いかな。


<戦利品>
第12回全国山城サミット記録集
高島の山城と北陸道
---城下の景観---
高島市教育委員会 編
ISBN978-4-88325-299-2
サンライズ出版 2006.3

 2005年10月に高島市で開催された全国山城サミットの記録。2つの基調講演「戦国期清水山城・城下の景観」、「戦国時代の山城と城下がもつ多様な機能 〜越前を中心に」と、フォーラム「高島の山城と北陸道 ---城下の景観」を集録。

 

朽木村の城館探訪
石田敏 著
朽木村教育委員会 1995.3

 旧朽木村の城館史と村内11の城館を紹介した冊子。イラスト、写真、地図、図面つき。

 

朽木村歴史年表
朽木村教育委員会 1992.3

 奈良時代から現代までの旧朽木村の年表を載せた冊子。

 

高島歴史探訪ガイドマップ1
高島の城と城下
〜城・道・港〜

 ホチキス綴じの手作り冊子ながら、全28頁に城跡の図面を多数集録。資料価値十分。


<国土地理院 地図閲覧サービス>
朽木谷中心部西山城跡周辺

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2008年2月22日

2月の購入書籍

 2月も下旬となり、少し春めいて来たような気配がした。そんな陽気とはもちろん関係ないが、ここのところ興味を惹かれる新刊が相次いで本屋に並んだ。全部というわけにはいかないので、それなりに厳選はしたつもりなのだが。必ずしも中身を全て見て買ったわけではないので、当たり外れは読んでみてのお楽しみ。

 それにしても既にある分も含めて未読本の山がまた高くなった。ということで、これからしばらくを未読本退治強化月間とする。

 5冊並べてみるとジャンルや時代は全くばらばら、随分と趣味悪といえなくもないな。


地球研究叢書
黄河断流
---中国巨大河川をめぐる環境問題
福嶌義宏 著
ISBN978-4-8122-0775-8
昭和堂 2008.1

 歴史ものではないが、興味深いテーマだったので取り寄せてみた。

 

スラブ・ユーラシア叢書
国境・誰がこの線を引いたのか
---日本とユーラシア
岩下明裕 編著
ISBN978-4-8329-6661-1
北海道大学出版会 2006.6

 新刊ではないのだが、モンゴル帝国と長いその後(講談社)で紹介されていたのを見て買ってみた。テーマ的にも惹かれたが、昨年読んだ岩下明裕の中・ロ国境の旅が面白かったというのもある。そういえば、中・ロ国境4000キロ(角川)も未読だ。

 

歴史文化ライブラリー 251
古代インド文明の謎
堀晄 著
ISBN978-4-642-05651-9
吉川弘文館 2008.3

 これは、タイトルではなくて目次を見て買った。1章がインド・アーリヤ人征服説の誕生、2章がインド・アーリヤ人征服説とは何か、3章がインド・アーリヤ人の起源。ここら辺の民族起源問題にはかなり興味がある。ちょっと過大に期待している。

 

学研新書 021
秀吉の接待
---毛利輝元上洛日記を読み解く
二木謙一 著
ISBN978-4-05-403468-6
学習研究社 2008.2

 あと2冊は日本史もの。毛利と秀吉という組み合わせも面白そうだが、輝元の日記を読み解くというのに釣られた。

 

歴史文化ライブラリー 249
飛鳥の宮と藤原京
よみがえる古代王宮
林部均 著
ISBN978-4-642-05649-6
吉川弘文館 2008.2

 そういえば古文書をベースにした古代日本史ものは最近ほとんど読んでいないように思う。タイトルを見ると怪しそうに見え、読んだ時間が無駄になるのが怖くて避けて通っている。本書は考古学ベースらしいので買ってみた。

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2008年1月23日

別冊歴史読本と歴史群像シリーズ

別冊歴史読本93号
事典にのらない戦国武将の居城と暮らし
ISBN978-4-404-03393-2
新人物往来社 2008.1

 戦国武将とあるが、扱っているのは戦国時代後半から江戸初期にかけての全国の武将70余人。彼らに関わりの深い城を一人に一城設定した属地的なコラム集。2ページから6ページと文字量はそれぞれ。築城や籠城にまつわる話もあれば、もう少し人物寄りの話もある。40人ほどの著者が執筆していて、オムニバス的な内容。

 巻頭に、「信長・秀吉・家康 洛中の居館と宿所」という企画があり、三者の寄宿した寺や屋敷について簡単に解説されている。

 豊泉堂雑記の河合さんが、小早川秀秋、福島正則、加藤嘉明を執筆されている。
 

 

歴史群像シリーズ
【決定版】図説 薩摩の群像
---鎌倉武士から幕末・維新まで 時代をかけ抜けた男たち
原口泉 監修
ISBN978-4-05-604834-6
学習研究社 2008.2

 開祖とされる島津忠久からの島津氏の歴史と西南戦争までの鹿児島の歴史を解説したもの。写真や図版、イラストが多く、タイトルに図説とあるとおり。全5章よりなるが、幕末を扱った第4章「動乱の時代」3分の1強を占めるが、第1章「関が原以前」は20ページ余しかない。江戸時代の薩摩、とくに重豪あたりは知らないことだらけなのでちょっと勉強を。

 膏肓記の桐野さん、橋場の日次記の橋場さんが寄稿されている。

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2008年1月14日

海路 第5号

海路 第5号
「海路」編集委員会 発行
ISBN978-4-87415-659-9
海鳥社 2007.11

 巻頭特集が面白そうなので、海路という雑誌を初めて買ってみた。編集後記によれば、当5号より、昨年7月に発足した「九州学」研究会の機関誌という位置づけになったとのこと。2004年創刊の不定期刊行誌のようだ。3号以降は海鳥社からの出版だが、1、2号は石風社より出ている。

 巻頭特集は、「九州の城郭と城下町[中世編]」というもので、特集のみ目次を書き出すと以下のとおり。

 16世紀のBungoと大友宗麟の館 鹿毛敏夫
 筑前国秋月氏の城郭 中村修身
  ---巨大規模城郭とそれを支えた組織
 戦国期北部九州の政治動向と筑紫氏・勝尾城 堀本一繋
 大津山関城と鷹ノ原城をめぐる若干の問題 丸山雍成
 シラス台地の広大な城 三木靖
  ---南九州における有力領主層の本城
 中世城郭の終焉 宮武正登
  ---豊臣秀吉による名護屋城築城の意味

 秋月氏や筑紫氏について山城の話を絡めながら紹介されているのが興味深い。山城の話が多く、以下の各城の縄張り図が添えられている。

 筑前国秋月氏の城郭
  荒平城郭群、古処山城郭群、益富城塞群

 大津山関城と鷹ノ原城をめぐる若干の問題
  藟嶽城、鷹ノ原城

 シラス台地の広大な城
  伊作城、清色城、市来鶴丸城、伊集院城、穎娃城、志布志城、高山城

 中世城郭の終焉
  名護屋城、人吉城

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2008年1月 9日

歴史群像 2月号

歴史群像 2008年2月号 No.87
雑誌 09677-02
学習研究社 2008.2

 橋場の日次記の橋場さんの一文が掲載されていたので購入してきた。特集のタイトル「再考 桶狭間合戦---浮上する“迂回奇襲”の可能性」。信長好きの自分にはとても気になる特集。従来とは異なる新しい迂回奇襲説を提起されている。

 巻頭には別企画で「“奇襲”を演出した野戦築城 尾張 桶狭間付城群」がある。桶狭間周辺の鳥瞰図のほか、付城群のイラストも付く。じつはまだ桶狭間周辺は歩いたことがない。今年はひとつ尾張遠征を企画しようか。

 この他に、スペインで見つかったという秀吉所縁の甲冑の話、大河ドラマに被る島津斉彬久光兄弟の話が載っている。

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2007年10月 7日

真田三代

新・歴史群像シリーズ 10
真田三代
戦乱を“生き抜いた”不世出の一族
ISBN978-4-05-604832-2
学習研究社 2007.10

 真田三代とは、真田幸綱、昌幸、信之、信繁。今年の大河ドラマでは、随所で真田幸綱(幸隆)が活躍しているが、大河ドラマの感想を書かれている各ブログを拝見していると、真田関係の話には突っ込み所が多いようだ。ただ、その話にはあまりついていけないので、各ブログの主も筆者に名を連ねている本書にてちょっと勉強を。

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2007年10月 5日

戦国の山城

歴史群像シリーズ戦国の山城
山城の歴史と縄張を徹底ガイド
全国山城サミット連絡協議会 編
ISBN978-4-05-604899-5
学研 2007.11

 歴史群像シリーズの新刊、山城ということで買ってきた。「全国山城サミット連絡協議会 編」とあるとおり協議会とのタイアップ本というところ。

 簡単な山城の歴史解説が最初にあるが、中心は各山城のガイドページ。北は山形県の左沢楯山城から南は沖縄県の浦添城まで、協議会関係の城90弱を掲載。各城1ページまたは見開きで、図面や写真に解説が添えられている。

 協議会に加盟している市町村が偏っているので、掲載されている城も偏り、静岡県と滋賀県が多くを占めて、あと北関東、北陸、兵庫県あたりも多い。協議会関係ということで、著名な山城かどうかは関係ない。

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